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クリブラ・オルビタリア ― 2026年09月08日 00:05

クリブラ・オルビタリア(くりぶらおるびたりあ)は「眼窩上壁(眼窩の天井部分)に小孔や網目状の変化がみられる骨病変」であり、眼窩(目の奥のくぼみ)の上壁に網目状の小孔ができる骨病変である。 原因は成長期の貧血や栄養・感染などとの関連が指摘されてきたが、原因は単一ではなく、現在も議論がある。成長期に受けた生理的ストレスを検討する際の指標の一つとして利用されている。人骨集団における出現頻度を比較することで、過去の集団の健康状態や生活環境を考える手がかりとなる。

概要

クリブラ・オルビタリア(cribra orbitalia)は人類学や古病理学で「ストレス・マーカー」として使われている。特に子ども時代の慢性的な貧血や栄養不良が原因とされている。 縄文人の健康状態や食生活、生活環境を読み解く手がかりになるとされている。

縄文時代と弥生時代との比較

水田稲作(米作り)が始まり食料生産が安定する一方、、人口の集中や衛生環境の変化、偏った食生活による新たな健康ストレスが生じたとされる。弥生時代には水田稲作の普及など生活環境が大きく変化したが、クリブラ・オルビタリアの出現率は一様に増加したわけではなく、地域・集団による差が大きい。

Hirata(1990)は縄文時代から現代までの出現頻度を明らかにし、江戸庶民が最も高頻度であったと明らかにした。古賀英也(2003)は縄文時代から現代までの682個の頭蓋骨を調査した。成人で比較すると、縄文時代では出現率15.8%、弥生時代では10.5%(古浦、島根県松江市)から28.6%(広田遺跡、鹿児島県)、古墳時代では11.7%(横穴墓)から28.6%(墳丘墓)、中世人で10.5%(吉母浜遺跡、山口県下関市)、近世人で2.4%(天福寺遺跡、福岡県福岡市)から17.8%(原田遺跡、福岡県嘉麻市)、現代人で35.4%であった。 ばらつきはあるが、縄文人や弥生人の栄養状態が現代人より低いわけではないことが示された。少なくともクリブラ・オルビタリアの出現頻度だけから、縄文人の栄養状態が現代人より悪かったとは判断できない。

南西諸島の場合

土肥直美(2007)は石垣島出土人骨の骨考古学的調査を行い、中近世の人骨では、クリブラ・オルビタリアの出現率が47.1%(17例中8例)と比較的高い結果を得た。南西諸島は小さな島のため、自然条件の変化に対応する事が難しく、凶作が多かったためと想定されている。

江戸時代の比較

江戸市中の一橋高校遺跡では成人頭蓋 102体中37体(36.3%)にクリブラ・オルビタリアが観察されており,高い人口密度による衛生状態の劣悪さが要因として報告されている(Hirata K.(1988))。江戸や地方の都市・村落から出土する人骨の調査から、当時の子どもたちは厳しい生育環境にあったことが示されている。

参考文献

  1. 古賀英也(2003)「西南日本古代人のストレスマーカー(2)クリブラ・オルビタリアとエナメル質減形成,及びハリス線を含めた三種のストレスマーカーの関連性」Anthropological Science(Japanese Series)111(1),pp.51-67
  2. 土肥直美(2007)「南西諸島出土人骨の骨考古学的調査」学研究費補助金研究成果報告書
  3. Hirata K.(1988) A contribution to the paleopathology of Cribra orbitalia in Japanese. 1. Cribra orbitalia in Edo Japanese. TheSt. Marianna Medical Journal, 16:pp.6-24.
  4. Hirata K.(1990)Secular trend and age distribution of cribra orbitalia in Japanese,Human Evolution5,pp.375-385
  5. Hirata K. (1995) Regional differences on environmental circumstances in Edo period from palaeopathological point of view. Anthropological Science, Vol.103, p.205.

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