トリデロック遺跡 ― 2025年02月25日 00:08
トリデロック遺跡(とりでろっくいせき)は長野県佐久穂町にある旧石器時代の遺跡である。
概要
標高1700mの大石川上流部の溶岩台地に立地する池の平遺跡群の⼀つである。ユーラシア大陸でも見つかっている石器の「3点セット」が出土した。国内ではこれまで佐久市の香坂山遺跡しか出土例がなかつた。3点セットといわれる「尖頭形剥片」「石刃」「小石刃」は、日本のホモ・サピエンスの起源を解明する重要な手がかりとされている。トリデロックの名称は遺跡近くに溶岩が尖塔状に突出し、とりでのように見えたからと言われる。
調査
昭和46年に林道新設に伴い発見され、同年6月と9月に八千穂町教育委員会によって発掘調査が実施されている。報告書(八千穂町教育委員会1995『池の平遺跡群の調査-塩くれ場地点・トリデロック地点・湧水地点の調査報告-』)に「デカパミ(Yt-Pm4)ローム層の下部から大型石刃石器群が検出された」と記載されていた。デカパミ(Yt-Pm4)は当時13,000年前と考えられていたが、現在は34,000 ~ 35,000年前であることが判明している。これまで発見されていた大型石刃石器群は、八ヶ岳新規第4テフラより上位の石器群であることが層位的所見により確定された。2023年8月10日、奈良文化財研究所の国武貞克・主任研究員ら香坂山遺跡を調査した研究グループは3万5000年以上前の後期旧石器時代初頭の特徴を示す石器群が八ヶ岳新規第4テフラを含む層位での石器群の検出に成功した。 石器集中部では叩き石2点が並んで出土、その脇に珪質頁岩(関東山地)製の中型石刃があり、周辺では黒曜石の剥片・砕片と炭化物が出土した。香坂山遺跡とは異なる製作技術が観察された。また、香坂山遺跡では明確ではなかった特徴的な削器類が検出された。
放射性炭素年代測定
4点の木炭片を選別して放射性炭素年代測定を実施した。その結果は、香坂山遺跡年代値の36,800 cal BP(国武・國木田・佐藤2022「石刃石器群の起源からみた日本列島における後期旧石器時代文化の成立」『考古学研究』69-2)とほぼ同等な値となり、トリデロック遺跡の新発見石器群は香坂山遺跡とほぼ同時期の石器群である可能性が出てきた。
遺構
遺物
- ナイフ形石器
- 大型石刃
- 尖頭形剥片
- 中型石刃
- 叩き石
- 黒曜石の剥片
- 削器
指定
展示
考察
大陸からどのような経路で長野県の高原までたどり着いたか。中国⼭地を経由ルートと北海道・東北経由ルートが想定されているが、トリデロック遺跡と香坂山遺跡より古い遺跡は発見されていないので、今のところ謎である。
アクセス
- 名称:トリデロック遺跡
- 所在地:長野県南佐久郡佐久穂町八ヶ岳下
- 交 通:JR小海線八千穂駅よりタクシー30分で八千穂高原自然園、そこから徒歩33分/2.6km
参考文献
- 日本旧石器学会(2010)『日本列島の旧石器時代遺跡』
- 八千穂村教育委員会(1996)「池の平遺跡群Ⅱ」
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