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網代2026年03月08日 00:29

網代(あじろ)は木や竹、蔓(つる)などの植物素材を薄く割き、縦横または斜めに交差させて編んだ編組製品の総称である。敷物・容器・建築材など多用途に用いられ、日本列島では縄文時代にまで遡る技術とされる。

1. 縄文時代の網代と網代圧痕

縄文時代の網代そのものは有機質であるため遺存例が限られるが、土器底面や器面に残る「網代圧痕」によってその存在が確認されている。

網代圧痕は、土器成形時に網代編みの敷物や支持具の上で製作・乾燥が行われた結果、編目が器面に転写されたものと理解されている。こうした圧痕資料は、当時の編組技術や素材利用を復元する重要な考古資料である。

縄文時代前期後半の例としては、

  • 茨城県の野中貝塚
  • 宮城県の大木貝塚

などで確認されており、花積下層式土器や大木1式・2式土器に網代圧痕が認められる。

網代圧痕は前期後半以降、中期から後期にかけてより顕著になる傾向が指摘されているが、地域差や時期差については検討の余地がある。

2. 編組技術と素材

國井秀紀(2013)によれば、編組技法と素材の組み合わせには一定の傾向がある。

  • 網代編み:ヤマブドウやクルミなどの比較的柔軟な素材が全面的に使用される例が多い。
  • ござ目編み:マタタビやネマガリダケなどの硬質素材が胴部に用いられ、アケビなどの蔓性植物が全体に使用される例もある。

ただし、素材選択は地域環境や用途によって変化するため、一律に区分できるものではない。

3. 出土事例

  • 神奈川県 平沢道明遺跡
    • 平沢道明遺跡からは 縄文時代中期の網代製品が出土している。

編み方の変化

網代は一般に縦条と横条による平編みが基本であるが、縄文時代後期には三方向から交差させる三方編みの例も確認されている。

三方編みの例:

  • 千歳遺跡
  • 雲穣野遺跡

4. 完形出土例 ― 三内丸山遺跡

青森県の三内丸山遺跡では、ヒノキ科樹皮を素材とする網代編みの袋状製品(いわゆる「縄文ポシェット」)が出土している。縄文時代の編組製品として極めて保存状態が良好な例であり、完形に近い資料として特筆される。

5弥生時代の網代編み

弥生時代には、縄文時代以来の編組技術が継承されるとともに、水田農耕の開始に伴う生活様式の変化の中で用途が拡大した。木の実や穀物の採取・収納用のかご、脚付きの編みかご、蓋などの生活用具が使用されたと考えられる。

奈良県の唐古・鍵遺跡では、編組製品の出土例が確認されており、弥生時代の高度な編組技術を示す資料とされる。

網代編みでは、縄文時代の単純な交差構造に加え、「2本1単位」で組む技法が一般化したと指摘される。下宅部遺跡の40 号編組製品は「2本1単位」の網代は「1本1単位」の四つ目、飛びござ目、六目と併存している(佐々木由香・小林和貴(2014))。 ただし、地域差や用途差があるため、一律に技術進化と断定するのではなく、弥生期において多様な編組法が併存していたと理解するのが適切である。

瀬田遺跡の事例

奈良県の瀬田遺跡では、脚付きの編みかごが出土している。保存例が限られる弥生時代の編組製品の中でも注目される資料の一つである(浦蓉子(2017))。

このかごは網代編みで制作され、植物素材が機能に応じて使い分けられている点が特徴である。報告によれば、

  • タテ材・ヨコ材:タケ亜科の稈
  • 親骨:ヒサカキの枝
  • 親骨の巻き付け材および脚の留め紐:ツヅラフジの蔓

が用いられている。40 号編組製品は,隙間をなくすため幅が狭く,薄い素材が必要となり、タテ材とヨコ材の間隔あけず密に編める網代編みが選択されたとみられる。

このような素材選択は、植物の弾力性・強度・可撓性を理解した上での技術的判断を示すものと評価されている。

技術的発展

弥生時代の籠では、網代編みのほかにヨコ添えもじり編みなどの技法も確認されており、用途に応じた構造的工夫が進んだと考えられる。

ただし、「縄文から現代まで続く日本の伝統技術」といった連続性を強調することは文化史的評価としては妥当であるものの、直接的系譜を実証することは難しいため、「長期にわたり継承されてきた編組技術の一系統とみなされる」といった表現がより適切である。

参考文献

  1. 國井秀紀(2013)『縄文土器底部に見られる網代圧痕の素材検討』福島県文化財センター白河館研究紀要
  2. 加藤晋平・小林達雄(1983)『縄文文化の研究』雄山閣出版
  3. 真邉彩(2014)「下宅部遺跡における縄文土器の敷物圧痕分析」国立歴史民俗博物館研究報告 第187集
  4. 佐々木由香・小林和貴(2014)「下宅部遺跡の編組製品および素材束の素材からみた縄文時代の植物利用」国立歴史民俗博物館研究報告 第187集
  5. 浦蓉子(2017)『「四方転びの箱」の用途について』奈良文化財研究所紀要 pp.44-45

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