埋積浅谷 ― 2024年09月05日 00:30
埋積浅谷(まいせきせんこく)は深い谷が厚い堆積物によって埋め立てられて浅くなったものをいう。
概要
小野映介・海津正倫(2001)は堆積物の14C年代値の測定を行い、埋積浅谷の発達過程を調べた。濃尾平野北東部では浅谷が約3,000~2,400年前に形成され,約2,400~2,200年前に埋積されたことが明きらかになった。 小松市八日市地方遺跡の埋積浅谷では肩部に円形状に貝類の集中がみられた。貝類は、マシジミ、ヤマトシジミを主体とし、サザエ、オオタニシなどがみられる。埋積浅谷に接した箇所に木器の貯木に利用したと思われる隅丸長方形の土坑がみられる。埋積浅谷のくぼ地を 利用して貯木場を作っていた。遺跡の中央に最大幅40 mの埋積浅谷がみられる。環濠集落形成以前にあたる弥生時代前期では、埋積浅谷の水流は強く、砂層の堆積と侵食が繰り返し行われていた。環濠集落形成以後は、水流は強くなくなり、人々にとって利用しやすい環境 となっていた。 遠藤邦彦・牧野内猛(1995)は関東平野の中川低地において、海面が低下傾向に転ずる5300年前以後,浅谷の形成が始まったとし、こうした埋積浅谷の存在は平野の陸化、河成作用の卓越化などを示すものとして重要と指摘する。
考察
14C年代測定により埋積で谷が埋まるまでに800年前後を要することが判明した。埋積浅谷の周囲では、埋まるまでの間、水流があり遺跡が作られた。
参考文献
- 小野映介・海津正倫(2001)「濃尾平野北東部における埋積浅谷の発達と地形環境の変化」第四紀研究 40 (4),pp.345-352
- 遠藤邦彦・牧野内猛(1995)「沖積層の形成過程」土と基礎 43 (10),pp.8-12
- 川瀬久美子(1996)「矢作川下流低地における縄文海進期以降の陸化の進行」名古屋大学加速器質量分析計業績報告書 7 221-228
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