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最後の天皇陵古墳2024年07月09日 10:15

最後の天皇陵古墳(さいごのてんのうりょうこふん)は2024年7月6日に開催された「第45回かんだい明日香まほろば講座」のテーマである。

概要(講演概要と要旨)

  • タイトル:「最後の天皇陵古墳-火葬と改葬-」
  • 主催者:明日香村、関西大学
  • 後援:朝日新聞社、津田塾大学
  • 開催日:2024年7月6日(土) 13:00-16:00
  • 会 場:有楽町朝日ホール
  • 定 員:630名(申込多数の場合、抽選)

内容プログラム

  • 講演1「八角墳・中尾山古墳の構造的特徴」
    • 13:10~13:55 講演1(45分)
    • 講師:米田 文孝(関西大学 名誉教授)
  • 講演2「中尾山古墳ー古墳の終焉と火葬のはじまり-」
    • 3:55~14:40 講演2(45分)
    • 吉澤 悟 (奈良国立博物館 学芸部長)
  • パネルディスカッション(65分)
    • パネリスト1:米田 文孝
    • パネリスト2:吉澤 悟
    • パネリスト3:西光 慎治
      • 明日香村教育委員会文化財課 課長補佐/関西大学 非常勤講師
    • パネリスト4:・徳田 誠志(関西大学 客員教授)
    • <進 行> 今井 邦彦(朝日新聞専門記者)

講演要旨

講演1「八角墳・中尾山古墳の構造的特徴」

中尾山古墳は江戸時代に「中尾塚・中尾石塚」とも呼ばれ、文武天皇の檜隈安古岡上陵に比定する説があった。昭和49年の発掘調査により三段築成の墳丘と三重の外周石敷を有する八角墳と判明した。高さ7m、対辺長19.5mを測る。墳丘の一段目、二段目は基壇状の石積みであり、裾部に花崗岩の根石を並べ、その上に拳サイズから人頭大の石材を小口積みとし、上部に根石と同様の石材を垂直に積み上げる。三段目は版築の盛土のみで八角系に整形する。立て並べた石は整形された積み方であり、新羅王墓などにみられる外護石的な要素が見られる。墳丘本体とその周辺には推定約480トンの大量の川原石を敷き、きれいに装飾していた。八角墳は高御座の形を意識しており、藤原宮でも政治の中心である大極殿に高御座が置かれていた。古代中国の影響である。『文武をもって古墳は終わる』と言われるが、火葬骨をおさめる石槨の石は美しく磨かれ、精緻な造りである。

講演2「中尾山古墳ー古墳の終焉と火葬のはじまり-」

6世紀末で前方後円墳が消滅し、7世紀から方墳や八角墳となった。大規模な墳丘は姿を消し、副葬品も簡素になった。 新羅の文武王(681年没)は火葬陵を採用した。以後は新羅で火葬陵が主流となる。 日本では700年の道昭が火葬となった。仏教界の偉人である道昭の火葬は影響が大きかった。火葬は薄葬の理念にも合致している。古墳の消滅は薄葬令と火葬が挙げられているが、火葬が古墳を駆逐したとする説は正しいとは言えない。この時点ですでに古墳築造の理念は薄れており、葬送儀礼にも変化が生じている。持統天皇が火葬になったのは、道昭の火葬から3年後である。持統天皇は葬送儀礼は勤めて倹約せよと遺勅を発している。火葬の採用は持統天皇の指示であったであろう。持統天皇の豪胆な性格と道昭の火葬の影響、文武王の火葬の情報などから火葬に踏み切ったのであろう。

パネルディスカッション

  • 西光 慎治(明日香村教育委員会文化財課 課長補佐)
    • 飛鳥時代から王墓の「改葬」が行われるようになる。「古墳」は政治的であり地上に安置されて公的な要素がみられるが、「墓」は地下に埋葬され、私的な要素が強くなり、それぞれが特徴ある埋葬施設になる。同一埋葬施設に「改葬」または「合葬」される場合は、「天皇+天皇」「天皇+皇后・皇太后・太皇太后」が基本である。合葬は次の例がある。
  1. 安閑天皇+皇后春日山田皇女+神前皇女
  2. 宣下天皇+皇后橘皇女+孺子
  3. 斉明天皇+娘の間人皇女

改葬は次の例がある。

  1. 用明天皇 - 磐余池上陵 ⇒ 河内磯長陵
  2. 堅塩媛 -  ?⇒ 檜隈大陵

前方後円墳はヤマト王権の象徴であり。八角墳は大王家の象徴である。 墓の構造は王権の二重構造を表している。

  • 徳田 誠志(関西大学 客員教授)
    • 文武天皇の陵が檜隈安古岡上陵に比定されるにあたり、『阿不幾乃山陵記』が発見されて谷森善臣の説がクローズアップされた。谷森善臣は『山稜考』で文武天皇陵は檜隈安古岡上陵と主張した。

参考文献

  1. 第45回かんだい明日香まほろば講座(2024)『最後の天皇陵古墳』

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