三葉環頭大刀 ― 2024年09月28日 00:26
三葉環頭大刀(さんようかんとうだち)は環状に作られた把頭の内側に三つの忍冬草葉文様を作るものをいう。
概要
環頭大刀は把頭が環状に作られたものをいう。朝鮮半島や中国大陸に起源がある大刀の形式である。環の内側に様々な意匠の彫刻が付けられており、その意匠によって単龍・単鳳環頭、双龍文・単龍文、双鳳文、単鳳文、獅噛文、三葉文、三繋環文などに分けられる。三葉とは環の内側に三つの忍冬草葉文様を作るものを三葉環頭大刀という。 大刀によってさまざまな職掌や役割が付加され、その職掌や役割ごとに大刀が配布されたとする見解がある。出雲の有力な古墳には三葉環頭大刀や獅噛環頭大刀などが副葬されている。 川真之介(2004)は日本出土三葉環頭大刀の一部に見られる中葉が五角形あるいはつぼみ状の三葉紋が日本と百済にしか見られないこと、その型式に施される鱗状紋の特徴も百済系 であることから、その型式は百済系と指摘している。さらに「地方の地位が比較的高く武人的性格の強い被葬者の墓からも多く出土していることから、三葉環頭大刀は日本では畿内政権が有力者を軍事的に編成していくために一定の身分を表す標章として地方の有力者に配布されていたと推定できる」と指摘している。
出土例
- 三葉環頭大刀 - 皇南大塚古墳(新羅、慶州)
- 三葉環頭大刀 -12.6cm、上神増E2号、磐田市、古墳時代後期
- 三葉環頭大刀 - 85.4cm、心合寺山古墳、長さ約85cm、大阪府八尾市、5世紀頃
- 三葉環頭大刀 - 117cm、会津大塚山古墳、会津若松市、4世紀
- 三葉環頭大刀 - 84.2cm、下開発茶臼山古墳7号墳、石川県、朝鮮半島より
参考文献
- 大谷宏治(1969)「磐田市上神増E2号墳出土三葉環頭大刀について」静岡県埋蔵文化財センター研究紀要 第6号 6,pp.19-225
- 坂田邦洋(1984)「三葉環頭大刀の一例」別府大学紀要、別府大学紀要委員会 編 (25), pp.33-40
- 甲斐 貴充(2012)「宮崎県持田古墳群出土三葉環頭大刀について」宮崎県立西都原考古博物館研究紀要 8,pp.35-42
- 川真之介(2004)「日本出土の三葉環頭大刀について」金大考古 44 ,p.3
- 金宇大(2023)「古墳時代における鉄製環頭大刀把頭意匠の「復古」的採用の可能性」器物の「伝世・長期保有」「復古再生」の実証的研究と倭における王権の形成・維持 pp.91-108,
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