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四神2025年07月31日 01:08

四神(ししん)は古代中国で宇宙の秩序を守ると信じられた想像上の動物である。 「四獣」、「四象」、「四霊」ともいう。

概要

四神とは青竜、白虎、朱雀、玄武をいう。四神は天の四方の方角を司り、青竜は東、白虎は西、朱雀は南、玄武は北を守護する。方角と動物との関係は、星座の形に由来するとされる。 四神を描く図像は当時の中国の宇宙観を反映した文様であり、魔除けの意味もあるとされる。四神の図像は銅鏡、墳墓の壁画、建築の装飾、巻物などの絵画、貨幣、印章などに使われた。 四神は中国の陰陽五行思想や天文思想とも関連する。四神の起源は中国の周代(紀元前11世紀以降)といわれているが、中国の戦国時代(前403年~前221年)に基本形が生まれたとされる。東潮(2000)は高句麗の四神像は「畏獣図像・四神図像は、神仙思想の表現」とする。日本の植民地期に2回にわたり写された「江西大墓」の模写図は韓国中央博物館に展示されている。 日本では『日本書紀』第25巻、孝徳文化5年(649年)3月条に「天皇、朱雀門に幸し」と書かれるとおり、四神の一つの朱雀が登場する。4世紀の倭鏡では四神の姿をまだ正確に描いていない。四神が図像として正確に表現されるのは高句麗と百済の古墳壁画では6世紀になってからであり、日本では7世紀末のキトラ古墳と高松塚古墳からである。

銅鏡

四神を描いた銅鏡は中国で漢代に多く作られ、朝鮮の古墳、日本の弥生時代の遺跡や初期の古墳からも出土する。四神を表す銅鏡として、鋸歯文帯四神鏡、方格規矩四神鏡、四神十二支紋鏡、三角縁四神二獣鏡、三角縁獣文帯四神四獣鏡などがある。

四神十二支紋鏡

四神の周囲に動物で示された十二支を巡らせる。

方格規矩四神鏡

円形の鏡の外形で「天」、方格で「地」を表す。その間に四神と瑞獣、仙人などを配置する。 方格規矩四神鏡は弥生時代の北部九州の墓から出土するが、古墳時代前期にも見られる鏡である。

鋸歯文帯四神鏡

内区に4体の四神と2体の獣形を描き、街区には二重の鋸歯文帯の間に複線の波文帯を配している。

銅鏡の出土例

  • 三角縁鋸歯文帯四神四獣鏡 - 赤塚古墳、宇佐市、古墳時代・3世紀
  • 三角縁波紋帯四神二獣鏡 - 鵜沼一輪山古墳、岐阜県各務原市、弥生時代後期 (3世紀)

墳墓の壁画

古墳や墳墓に四神を表す壁画が描かれる。「江西大墓」は四神図壁画の中でも最も優れた技量といわれる高句麗の壁画古墳である。「高松塚古墳」の南面には四神の壁画はない。楽浪郡遺跡の古墳壁画にも四神が描かれる。

壁画の出土例

  • 「永泰公主墓」(中国・西安近郊)陝西省乾県の乾陵の陪葬墓の一つ。
  • 「江西大墓」(北朝鮮)平安南道大安市にある高句麗後期の四神図壁画古墳の1つ。
  • 「角抵塚」(中国、吉林省集安県)
  • 「高松塚古墳」(奈良県)西面に白虎、東面に青龍、北面に玄武が描かれる。
  • 「薬師寺本尊の台座」(奈良県)に四神が描かれる。
  • 「新沢千塚126号墳出土漆盤」、奈良県橿原市、5世紀(古墳時代中期)
  • 「竹原古墳」壁画、福岡市、6世紀後半

建築の装飾

宮殿や寺院の装飾文様に四神が使われ、屋根瓦(瓦当)に四神が彫られる場合がある。

絵画

宗教的・儀式的な絵画に四神が描かれることがある。

8世紀以降の日本では,701年(大宝元年)年から元日朝賀などの宮廷儀式に際し、大極殿 院の前庭に四神図などの「幡(旗)」が立てられていた。

古代貨幣

五代十国や宋代には方位を象徴する動物が描かれたが四神ではない。

銅鳥居の四神

1821年(文政四年)に奉納された虎ノ門の金刀比羅宮には柱上部に四神(四方の守護神)の彫像が付けられている。

部隊名

幕末の会津藩では年齢の高い順に、玄武隊(50歳以上)、青龍隊(36歳から49歳)、朱雀隊(18歳から35歳)、白虎隊(16歳から17歳)の武士の4部隊を編成した。

平安京

土地選定の目安として四神を用いる思想は日本に輸入されている。平安京では「蒼龍」が賀茂川、「朱雀」は巨掠池、「白虎」が山陰道(または山陽)、「玄武」は舟岡山とされ、四神相応の地とされた。

参考文献

  • 坂本太郎, 井上光貞,家永三郎,大野晋 (1994)『日本書紀』岩波書店
  1. 基峰修(2018)「壁画四神図の比較分析」人間社会環境研究35(金沢大学)、pp.153-179
  2. 東潮(2000)「古代東アジアの鬼神と四神図像」国際シンポジウム(報告書) 第13集,pp.121-132