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翰苑2023年07月12日 23:10

翰苑(かんえん)は、中国唐代の顕慶5年(660年)に張楚金が撰して、雍公叡が注をつけた類書である。

概要

中国では早く散逸しており、中国では既に原文・写本共に失われている。現在残っているのは太宰府天満宮に巻卅蕃夷部1巻の抄本だけである。書体から平安初期に作られた写本である。匈奴・烏桓・鮮卑・倭国・西域などの15の項が立てられる。平安時代の写本であるが、引用した書物には現在伝わらないものが多い。現存最古の類書である隋の『北堂書鈔』と並んで、六朝の古い類書のスタイルを残している。 大正6年に黒板勝美博士により発見された。

評価

昭和29年3月20日、国宝に指定されている。「蕃夷部」には、高句麗の官等と政治状況、綿織物などの生産基盤、鴨緑江の起源、三韓の位置、百済の年代呼称など、現存する他の史書には見られない記録が多く書かれている。

刊行

1922年に京都大学から影印が出版された。1977年に菅原道真の1075年忌事業として釈文・訓読文を付して刊行した。 韓国の学界が日本に伝わる『翰苑』の漢文テキストを考証し、内容を韓国語で解説した訳注本が出版された。韓国研究者20人余が、約3年をかけて講読と比較研究を行ったものである。

史料の価値

巻第三十蕃夷部の残巻が太宰府天満宮西高辻家に残存しており,《三国志》東夷伝研究の重要史料となっている。誤字、脱字が多いが、後漢書、魏志等からある程度は修復可能である。魏志や後漢書に比べると史料としては劣るが、今は存在せず名前だけが残っている歴史書の『魏略』『高麗記』が引用されているところに価値がある。

体裁

幅27.6cm、 長さ1585.2cm、 全長28紙、 1紙22~23行、 1行16~17字詰め(割注は1行22~23字詰め)

注・参考文献

  1. 張楚金・雍公叡:注、竹内理三:釈文・訓読文(1977)『翰苑』太宰府天満宮文化研究所
  2. 張楚金・雍公叡・湯浅幸孫:校釈(1983)、『翰苑校釈』国書刊行会
  3. 張楚金・雍公叡(2019)『訳注 翰苑』東北亜歴史財団
  4. 张中澍・张建宇(2015)『翰苑·蕃夷部』校译 ,吉林文史出版社

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