中尾遺跡(鳥取) ― 2024年07月05日 00:08
中尾遺跡(鳥取)(なかおいせき)は鳥取県倉吉市にある弥生時代中期の遺跡である。
概要
中尾遺跡は鳥取県の日本海沿岸から7km南の低丘陵上にある。立地は標高39m~37mの丘陵頂部平坦部である。周辺には沢ベリ遺跡や西前遺跡、東前遺跡などの弥生時代中期の遺跡がある。東前遺跡では弥生時代中期の玉作工房を確認する。 弥生時代において鉄器の出土は北部九州の有力者の墓から見つかる事が多いが、鳥取県の竪穴建物で鉄戈や鉄斧が見つかることは国内での事例はない。鉄器が出土した竪穴建物は弥生時代中期後葉の集落の西端であった。直径7.5mの円形であり屋根を支える柱穴が6基あった。竪穴建物は火災で焼け落ちたとみられ、炭化した骨組みと屋根材が残っていた。*調査 工業団地の造成に伴い、平成3年度に第一次、平成26年から28年にかけて第二次発掘調査を行った。旧石器時代の石器や縄文時代の落とし穴159基、竪穴建物25棟、掘立柱建物21棟、古墳時代後期の古墳2基が見つかった。第3次調査は令和元年度から3年度にかけて実施された。弥生時代中期から古墳時代前期の竪穴建物11棟、古墳時代中期から後期の古墳25基を発見した。
国内最大の鉄戈
第3次調査で見つかった完全な形の鉄戈は前長54.3cmで、弥生時代のものとしては国内最大の鉄矛である。鉄矛はそれまで国内最大であった東入部遺跡(福岡市)の長さ43センチを上回っている。室内の柱穴の土に突き立てられていたとみられる。 朝鮮半島から持ち込まれたとみられる。韓国・茶土里遺跡の鉄戈59.0cmと類似である。 長大であるが身が薄いため、実用品ではない。 弥生時代の鉄器の流通や祭祀を考えるうえで重要な資料である。
板状鉄斧
板状鉄斧は国内最大級の全長27.5cmである。鋳造鉄斧は中国製と見られ、全長は11.0cmである。韓国・茶土里遺跡や勒島遺跡の出土に類似する。鋳造鉄斧は柱穴から50cm離れた位置でみつかった。出土状況から火災当時に鉄器3点(鉄戈、鋳造鉄斧、板状鉄斧)は室内にあったと見られる。鉄器3点は梁、垂木、屋根材の下にあった。
遺構
- 竪穴建物
- 落とし穴
- 掘立柱建物
- 柵列4
- 貯蔵穴6
- 土坑8
- 木棺墓1
- 竪穴建物状遺構2
遺物
- 鉄戈、
- 鋳造鉄斧、
- 板状鉄斧
- 弥生土器
- 分銅形土製品
- 鉄製品
- 碧玉製管玉未製品
- 石器
- 人骨
- 炭化種子
指定
展示
考察
当時において鉄戈、鋳造鉄斧、板状鉄斧は貴重品であるから、失火なら確かに室外に持ち出したと考えられる。しかし、祭祀のために家ごと焼くことは納得しがたい。とすれば弥生時代の戦乱がここまで及び、敵に襲われて火を付けられ、持ち出す余裕もなかったということではなかろうか。
アクセス
- 名 称:中尾遺跡
- 所在地:鳥取県倉吉市大谷字中尾
- 交 通:JR倉吉駅から徒歩1時間31分、6.5km。
参考文献
- 「倉吉市の中尾遺跡 鉄器出土 弥生時代で国内最大の鉄矛」朝日新聞、2020年11月13日
- 安来市教育委員(2011)「中尾遺跡」
- 倉吉市教育委員会(2020)「令和2年度中尾遺跡第3次発掘調査現地説明会資料」
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