小山田古墳 ― 2025年10月04日 08:50
小山田古墳(こやまだこふん)は奈良県高市郡明日香村にある飛鳥時代の方墳である。
概要
小山田古墳の墳丘の上部構造はほぼ削平されている。従来は飛鳥時代で最大とされていた千葉県の岩屋古墳(約78m)を上回る飛鳥時代最大の方墳である。北辺は約72mで、南辺は約80mとなり、台形をしている。室生安山岩などの石材が大量に出土し、西側斜面は北側と同じく石材で覆われている。横穴式石室の羨道長は計8.7メートル以上あり、石舞台古墳(11.7m)に並ぶ大型の石室であった。巨石を抜き取った穴が左右4カ所ずつ、計8カ所確認されている。羨道は石舞台古墳と同じ幅の約2.6メートルで、中央に排錐溝が⾒つかっている。貼石、敷石および板石積みで構成される掘り割りを検出している。飛鳥付近の石英閃緑岩を用いており、基底部には40㎝大の石を使う。上部にいくにつれて徐々に石材が小さくなる。これは古墳の葺石の特長である。貼石にともなう造成土から6世紀後半代の土器類、掘り割り埋没時に北側から流入した堆積土の上層からは7世紀後半代の土器が出土する。 器が出土する。板石積みに用いられた室生安山岩や結晶片岩は、7世紀中頃の寺院や古墳に 多用されているため、築造年代は7世紀中頃と見られる。ちょうど乙巳の変の頃である。前園教授は「遺構を建設した時期は、七世紀前半から中頃で、その機能を終えたのは、比較的早い七世紀後半」であるとする。
調査
2014年、養護学校の校舎建て替えに伴い、橿原考古学研究所が発掘調査し、想定外の巨大な石張りの掘割が出土した。2016年度の第8次調査で墳丘盛土と横穴式石室の羨道部の痕跡が検出されそれまで小山田遺跡といわれていたものが古墳である事が確定した。2017年度の第9次調査で石室の一部に羨道跡が新たに確認された。幅は2.6m、長さ8.7mである。2018年度の第10次調査でそれまでの調査で約70mと推定されていた墳丘の東西幅は、80mを超える事が判明した。
被葬者像
研究者の間では、舒明の初葬墓とする説(今尾説)と、乙巳の変で滅ぼされた豪族‧蘇我蝦夷の墓とする説(前園説)の二説がある。白石太⼀郎は小山田古墳は榛原石とよばれる板石を積み上げて墳丘を化粧していた。この形状は舒明天皇陵と考えられている段ノ塚古墳に使用されている板石と共通している。当時は土師氏と呼ばれる墳墓の造営集団が古墳を作っていた。同じ集団なので、技法や同石材と思われるとする。段ノ塚古墳は日本で最初に作られた八角墳であり、小山田古墳とは形状がことなる。白石太⼀郎は改葬したあと時間を置かずに、大王の墓の石室を壊して濠を埋める徹底的な破壊を行うのは当時の常識から考えられないとして、舒明の初葬墓ではあり得ないとした。『日本書紀』巻第廿四皇極元年十一月条に「生前に双墓を今来につくり、大陵を蝦夷の墓とし、小陵を入鹿の墓とした」(「預造雙墓於今來。一曰大陵、爲大臣墓。一曰小陵、爲入鹿臣墓」)と書かれる。大陵を小山田古墳にあて、小陵を付近の菖蒲池古墳とできるなら、辻褄があう。前園教授は「菖蒲池古墳 と小山田遺跡の規模は一辺で一対二の割合になり、大陵と小陵の記述にも合致する」と指摘する。小澤毅は「蘇我系の(陵)墓域と、非蘇我系を中心とする天皇・皇族の陵墓域は基本的に分離」されているとし、「大野岡(甘樫岡)周辺は明らかに蘇我氏の勢力圏」であるから、「小山田古墳の被葬者は、近隣に邸宅を構えた蘇我氏の有力者と考えるのがもっとも自然」とする。
規模
- 形状 方墳
埴輪
遺構
遺物
築造時期
展示
考察
蘇我蝦夷の墓と考えるのが最も合理的である。その理由は①蘇我氏の墓はすべて方墳であること、②場所は蘇我氏の領域であった、③早い段階で徹底的に破壊されていること、④『日本書紀』の記述と一致すること、などである。③についてであるが、小山田古墳は(孝徳政権の)蘇我氏への敵意から、当時は徹底的に破壊しなければならない対象であった。おそらく、蘇我氏を認めることは、自らの政権の正当性を失わせるものであったのであろう。石舞台古墳を破壊したと同じ理由である。
指定
アクセス等
- 名称 :小山田古墳
- 所在地 :奈良県高市郡明日香村川原410
- 交 通 :近鉄 岡寺駅 徒歩約25分(1.7km)/近鉄吉野線飛鳥駅「橿原神宮前駅東口」行きのバスに乗り、野口バス停で下車。
参考文献
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