虎塚古墳 ― 2024年06月24日 00:01
虎塚古墳(とらづかこふん)は茨城県ひたちなか市中根にある前方後円墳である。 日本百名墳に選ばれている。東日本を代表する装飾古墳である。
概要
茨城県の北部を流れる那珂川の下流の北側中根台地上に築かれた7世紀初めに造られた全長約55mの前方後円墳である。葺石、埴輪はない。東日本で発見された装飾古墳のうち、その装飾文様の種類と構成は類例の少ない優れたものである。古墳の周囲は史跡公園になっている。
発掘調査
1973年(昭和48年)8月16日、明治大学考古学教室(団長は大塚初重教授)により発掘が開始された。9月12日に石室扉が開かれ、凝灰岩の切石の上で白土下地にベンガラで描かれた彩色壁面が発見された。当時、大きな話題を呼んだ。7世紀中葉の古墳と推定された。
壁画
内部主体は、後円部の基底部近くに設けられた凝灰岩切石を組み合わせた横穴式石室である。玄室は天井3枚、東側壁1枚、西側壁2枚、奥壁1枚の切石で築かれ、内法長さ3.07m、幅1.4m、高さ1.5mである。また羨道はその南に設けられている。 玄室内壁の凝灰岩に床面上を含め全面に白土を下塗りし、天井・床面に顔料のベンガラ(酸化鉄)で描かれた彩色壁画を描く。壁画は、奥壁と東・西壁に描かれている。連続三角文・ 環状文・円文・渦文文様などの幾何学文様、大刀・槍・靱・楯などの武器、武具類などの絵画が白地に赤色で描かれる。屋壁中央に描かれたドーナツ状の2つの円は太陽や生命力を表すなどの諸説がある。
保存技術
未盗掘の石室であったが、壁画の存在は誰も予想していなかった。 石室の閉塞石を開ける前に石室内の温度や湿度など環境調査を実施していた。奈良県明日香村の高松塚古墳を保存する目的で実施しており、本来であれば高松塚古墳の保存に活用されるものであった。結果的に虎塚古墳の壁画を保存するための貴重なデータとなった。
規模
- 形状 前方後円墳
- 墳長 55m
- 後円部 径27m 高5.7m
- 前方部 幅30m 高5.2m
主体部
- 横穴式石室
外表施設
遺構
遺物
石室内
- 人骨 1体 - 成人男性。
- 小大刀 1口 - 推定長38cm
- 刀子 1口
- 毛抜形鉄器 1点
- 鉄鏃 1点
- 鉇1点
- 鉄釘2
- 透かしのある鉄片 1点
石室外
- 鉄鉾 1点
- 【装身具】鉄釧2
- 【武器】
- 鉄刀1・
- 鉄鉾・
- 【土器】<土師器>
- 杯形土器・
- 甕形土器
- 【その他】
- 鉄製環・
- 不明鉄板・
- 笠鋲状鉄器2
築造時期
- 7世紀初め
被葬者
展示
- ひたちなか市埋蔵文化財調査センター
指定
- 1974年(昭和49年)1月23日 国指定史跡
アクセス等
- 名称 :虎塚古墳
- 所在地 :茨城県ひたちなか市中根3494-1
- 交 通 :JR勝田駅から中根駅下車 徒歩30分(1.8km)
- 公開 :春(4月上旬)と秋(11月)に一般公開
- 古墳石室公開:春・9:00~16:30、秋・9:00~16:00
- 料金 :大人160円(団体130円)
参考文献
- 大塚初重(1982)『古墳辞典』東京堂
- 江本義理、門倉武夫、見城敏子、新井英夫(1983)「史跡虎塚古墳彩色壁画保存に関する調査研究受託研究報告第 51 号」保存科学 (22),pp.121-146
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