柳本天神山古墳 ― 2024年12月05日 00:25
柳本天神山古墳(やなぎもとてんじんやまこふん)は奈良県天理市にある4世紀後半の前方後円墳である。別名は「大和天神山古墳」「奈良天神山古」である。
概要
行燈山古墳の西側である。東側の半分は国道169号線の建設時に破壊され、西側のみが残存する。周濠の有無は判明していない。埴輪は出土しない。葺石はない。段築や周濠は不明瞭である。 山麓に立地し、前方部が南向きである。人物の埋葬は無く、遺物のみを葬った古墳としては最大規模である。大和盆地東辺に立地する柳本古墳群の中の1つ。天神山古墳は遺体を埋納した形跡がなく、すぐ東に行燈山古墳(崇神天皇陵)があり、同陵の遺物のみを埋納した陪塚とも考えられている。天神山古墳の築造年代は4世紀後半頃とされる。
調査
1960年に国道の敷設に伴い、奈良県立橿原考古学研究所により竪穴式石室の調査が行われた。竪穴式石室は全長6.1mで、石室内部には合掌式石室である。棺台は粘土を用いており、棺はコウヤマキ製の「木櫃」(木製の上蓋つきの棺)が安置されている。銅鏡23面や鉄製品の副葬品が多量に出土した。木棺中央に41kgに及ぶ朱が置かれており、周囲に銅鏡が置かれていた。銅鏡は、後円部中央の竪穴式石室の中の木櫃の内から20面がみつかり、棺外から3面が発見された。鏡は木櫃の周縁に沿って北から右廻りに20面を一周させ、櫃外の北側に2面、南側に1面が配されていた。剣は木製の柄装具に直弧文が描かれる。遺体を埋葬した形跡がないため、「木櫃」には遺体がなかった可能性が指摘されている。銅鏡には典型的な三角縁神獣鏡が含まれず、方格規矩鏡や内行花文鏡など中国・後漢時代の鏡(三角縁神獣鏡よりもやや古い)が主体であった。
規模
- 形状 前方後円墳
- 築成 前方部:なし、後円部:なし
- 墳長 113m
- 後円部 径55m 高7m
- 前方部 幅50m 長43m 高さ4m
- 主体部
- 室・槨 竪穴式石槨
遺構
後円部のほぼ中央に長さ6.1mの竪穴式石室を検出。
出土遺物
- 内行花文鏡4
- 方格規矩鏡6
- ボウ製:人物鳥獣文鏡1
- 変形神獣鏡2、
- 画文帯神獣鏡4
- 獣形鏡3
- 画像鏡2・
- 獣帯鏡1
- 鉄剣:4
- 鉄刀:1
- 鉄鏃
- 刀子。
- 鎌
- 板状鉄斧。
- 水銀朱(41kg)。
展示
- 奈良国立博物館
- 流雲文縁方格規矩鏡(奈良県天神山古墳出土)727-1
- 画文帯神獣鏡(奈良県天神山古墳出土)
- 内行花文鏡(奈良県天神山古墳出土)
- 内行花文鏡(奈良県天神山古墳出土)
- 三角縁変形神獣鏡(奈良県天神山古墳出土)
- 画文帯神獣鏡(奈良県天神山古墳出土)
- 獣形鏡(奈良県天神山古墳出土)
- 流雲文縁方格規矩鏡(奈良県天神山古墳出土)727-8
- 流雲文縁方格規矩鏡(奈良県天神山古墳出土)727-9
- 画像鏡(奈良県天神山古墳出土)727-10
- 画像鏡(奈良県天神山古墳出土)727-11
- 画文帯神獣鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-12
- 獣形鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-13
- 画文帯神獣鏡(奈良県天神山古墳出土)727-14
- 三角縁変形神獣鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-15
- 波文縁方格規矩鏡(奈良県天神山古墳出土)727-16
- 内行花文鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-17
- 獣形鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-18
- 波文縁方格規矩鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-19
- 内行花文鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-20
- 流雲文縁方格規矩鏡(奈良県天神山古墳出土)727-21
- 半三角縁人物鳥獣文鏡(奈良県天神山古墳出土)727-22
- 獣帯鏡(奈良県天神山古墳出土) 727-23
- 朱(天神山古墳出土) 727-29
指定
- 2002年(平成14年)6月26日 重要文化財(考古資料)出土品 一括(考古資料)
- 2008年(平成20年) 木棺は県の有形文化財に指定
- 2009年(平成21年)奈良県指定史跡
アクセス
- 名称:柳本天神山古墳
- 所在地: 〒632-0052 奈良県天理市柳本町
- 交通:JR柳本駅徒歩14分/940m
参考文献
- 大塚初重(1996)『古墳事典』東京堂出版
- 伊達宗泰・森浩一(1963)『大和天神山古墳』奈良県教育委員会
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