堅田遺跡 (和歌山) ― 2025年06月23日 00:28
堅田遺跡 (和歌山)(かただいせき)は和歌山県御坊市にある弥生時代前期の環濠集落遺跡である。
概要
和歌山県御坊市湯川町財部にある日高川河口近くに、三重の環濠を持つ弥生時代前期の環濠集落である。弥生時代の遺構から、国内最古の青銅器の鋳型、青銅器の鋳造遺構、3重の環濠、朝鮮系無文土器、瀬戸内海西部から東海地方までの沿岸地域や四国南部からの搬入土器をもつ弥生時代前期の集落を検出した。環濠は集落の北側で2重、西側で3重、南側で2重に巡る。
調査
出土した竪穴住居17棟のうち4棟が松菊里型住居であった。ヤリガンナ鋳型は、砂岩製で縦6.5cm、横6.0cm、厚さ6.1cmの破片である。残存する鋳型面は縦の長さ約4.0cm、横幅約2.5cmである。断面V字の溝が縦方向に幅0.25cm、深さ0.2cmが一条彫り込まれる。ヤリガンナ鋳型の特徴である。彫り面は熱により黒変しているため実際に使用されたと考えられる。同時代出土のヤリガンナ鋳型と比較すると、幅・厚さが大きい、3条の環濠の内濠(環濠1)から、弥生時代前期新段階後半頃の特徴を示す弥生土器と共に出土した。鋳型のほか溶炉遺構や炉壁とみられる焼土塊、羽口と思われる破片等が出土した。溶炉遺構は銅を溶かした炉である。覆屋中央に堀り下げた1.80m×1.25mの楕円形の穴底に、土を敷き固めて基礎をつくり、その上にカマド状の炉を築いたもので炉底のみが残る。鋳造遺構の資料として重要である。
遺構
- 包含層
- 溝
- 環濠
- 竪穴建物
- 掘立柱建物
- 土坑
- 溶炉
- 河川
遺物
- 弥生土器
- 突帯文土器
- 石器
- 石鏃
- 剥片
- 石斧
- 砥石
- 石器
- 木製品
- 青銅器(ヤリガンナ)の鋳型
- 木製品
指定
- 平成23年3月15日 県指定有形文化財 堅田遺跡出土ヤリガンナ鋳型 附弥生土器
展示
考察
瀬戸内海西部から東海地方からの移住民がいたとみられるが、朝鮮系無文土器や松菊里型住居のあることから、一部は弥生系渡来人と想定される。出自の混在した住民だったのであろうか。
アクセス等
- 名称: 堅田遺跡
- 所在地:歌山県御坊市湯川町財部堅田632-1
- 交通:
参考文献
杵ガ森古墳 ― 2025年06月23日 23:16

杵ガ森古墳(きねがもりこふん)は福島県河沼郡会津坂下町にある古墳時代の前方後円墳である。
概要
福島県会津市坂下町の市街地西側、標高約178mにあり、東北地方最古級の前方後円墳である。1961 年(昭和36年)遺跡分布調査により「古墳」として登録され、南北28m、東西15m、高さ2m の卵形の円墳と思われていた。平成2年からの発掘調査により前方後円墳と判明した。出土した土師器からは古墳時代前期前半(4世紀)の築造と考えられている。古墳の周辺に10基の周溝墓と13軒の竪穴住居跡等を発見(稲荷塚遺跡)したことなどから、遺跡の重要性が注目された。遺跡の中心部分を公園「稲荷塚遺跡」として整備、保存することとなった。発掘調査直前まで墳頂部に稲荷神社が祭られていた。参道入口に木製の鳥居、旗竿、石製標柱が建てられていたことから、「稲荷塚遺跡」と称される。1996 年、福島県指定史跡に指定される。杵ガ森古墳の場所は「稲荷塚公園」として保存されている。
発掘調査
杵ガ森古墳は、墳丘の長さ45.6メートルの二段築成である。南北に主軸がある。1995 年の調査報告書では、墳丘直下や古墳周辺から竪穴建物跡5 軒、掘立柱建物跡3 棟、方形周溝墓10 基が確認された。神社の造営時に盛土したため古墳は変形しており、当初の状況は不明となっている。墳丘の高さは2メートル前後と推定されている。前方部がバチ型の墳形は、日本最古の前方後円墳である箸墓古墳(奈良県桜井市)の1/6 相似形であると論じられた。出土した土師器は3 世紀末~4 世紀初頭 であり、高坏形土器、器台形土器、壺型土器等葬送儀礼道具が確認された。ヤマト政権の政治的連合体を構築する時期の初期墳墓と見られる。
規模
- 形状 前方後円墳
- 築成 後円部:2段
- 墳長 45.6m
- 後円部 径径25m 高2m
- 前方部 幅推定18m 長21m
遺物
- 周濠内から土師器。
築造時期
- 3世紀末~4世紀初頭
被葬者
展示
指定
- 1996年(平成8年)3月22日 福島県指定史跡
アクセス等
- 名称 :杵ガ森古墳
- 所在地 :福島県河沼郡会津坂下町稲荷塚
- 交 通 :会津坂下駅から徒歩25分、1.8km。
参考文献
- 大塚初重(1982)『古墳辞典』東京堂
- 大塚初重(2002)『東国の古墳と大和政権』吉川弘文館2
- 福島県教育委員会(1989)「福島県の文化財-国指定文化財要録-」
- 会津坂下町教育委員会(1995)「会津坂下町杵ガ森古墳・稲荷塚遺跡発掘調査報告書」会津坂下町文化財調査報告書;第33集
- 福島県河沼郡会津坂下町教育委員会(1991)「杵ガ森古墳・稲荷塚遺跡 : 坂下西第一地区発掘調査概報」会津坂下町文化財調査報告書 ; 第22集
- 会津坂下町教育委員会(2023)講演会『北越からみた弥生時代後期 : 終末期の会津 : 史跡古津八幡山遺跡の調査成果から』
- 吉田博行(1995)「各地の前期古墳 福島県杵ガ森遺跡」『季刊考古学52号』(前期古墳とその時代)雄山閣
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