盤龍鏡 ― 2024年05月15日 11:15
盤龍鏡(ばんりゅうきょう)は鏡の中心の鈕を龍の胴体に見立て、その周りから頭や足を出した龍がとぐろを巻いている図柄を表した後漢鏡である。
概要
盤龍とはとぐろを巻いた龍という意味である。盤龍鏡は竜文を鏡の内区に施す。 主文の獣が角のある龍や角のない虎からなることから、「龍虎鏡」とも呼ばれることがある。銘文からすれば、辟邪・天禄と呼ばれる天獣である。 日本では、弥生Ⅴ期の遺跡や、前期古墳時代の古墳から出土する。
中国
古代中国では華北から東北地方にかけて分布が集中する。1世紀後半に登場し、2世紀まで存続する。
銘文
周縁は厚い平縁から断面三角形状の斜縁に変化し、並行して銘文は5句前後から次第に減少し直径は10cm以下に小型化する。銘文は「某氏作」「青盖昨」で始まるものが多い。
分類方法
上野祥史(2003)は盤竜鏡の系列に広域型と狭域型があり、広域型は龍氏系、西方青盖系、東方盖系、三羊系、尚方系があり、狭域型に三輔系、西域系があるとする。 富岡謙蔵は盤龍鏡を4タイプに分ける。
- 流雲紋盤龍鏡
- 細紋式盤龍鏡
- 青蓋盤龍鏡
- 神獣盤龍鏡 後藤守一は内区を中心とし、龍が4体あるものを4頭式盤龍鏡、2体あるものを2頭式盤龍鏡とした。
命名
富岡謙蔵は『古鏡の研究』で中国・北周庚信の詩の「盤竜明鏡」から命名し、それが定着した。
図像
龍形と虎形の区別の明瞭なものは図像表現が精緻であり、区別の不明確なものは粗雑な表現となる傾向がある。
出土例
- 盤龍鏡 - 亀甲塚古墳、山梨県笛吹市御坂町成田、古墳時代
- 景初四年銘盤龍鏡 - 京都府広峯15号墳出土、4世紀後半、重要文化財、
- 兵庫県西宮市辰馬考古資料館蔵鏡と同型
- 三角縁盤竜鏡 - 宮ノ洲古墳、山口県下松市、古墳時代・3世紀、重要文化財
- 盤龍鏡 - 諏訪台48号墳、千葉県市原市村上・西広、古墳時代
- 直径約12cmの円形の青銅鏡で、3世紀の前半ころ中国で造られ、日本にもたらされた。
- 辰馬景初四年銘盤龍鏡 -持田古墳群、宮崎県児湯郡高鍋町、辰馬考古資料館
参考文献
- 上野祥史(2003)「盤龍鏡の諸系列」国立歴史民俗博物館研究報告 第100集
- 林巳奈夫(1989)『漢代の神神』臨川書店
- 岡村秀典(1993)「後漢鏡の編年」国立歴史民俗博物館研究報告 第55集
- 市原市教育委員会(2015)『天神台遺跡・市原市諏訪台古墳群』上総国分寺台遺跡調査報告XXVI
- 富岡謙蔵(1974)『古鏡の研究』臨川書店
- 後藤守一(1973)『漢式鏡』雄山閣
- 福宿孝夫(1991)『日本出土「魏紀年」四鏡の銘文と字体』書学書道史研究 1991 (1),pp.16-29
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