東平第1号墳 ― 2024年08月26日 00:20
東平第1号墳(ひがしだいらだいいちごうふん)は静岡県富士市伝法にある直径約13mの小規模円墳である。
概要
富士市を流れる一級河川・伝法沢川東岸の扇状地上に広がる伝法古墳群の中の1基である。埋葬施設は全長約5.1m、幅約1.5mの無袖形の横穴式石室である。河原石や溶岩を3回に渡り敷き詰める。横穴式石室内及び周溝内から、丁字形利器1点、象嵌装大刀2点を含む大刀3点、鉄鏃30点以上、弓飾金具1点、金銅装馬具を含む馬具2組、刀子4点、用途不明金銅製品1点、用途不明鉄製品2点、須恵器22点、土師器1点など多種の遺物が出土した。 銀装象眼太刀は長さ99cm、鍔の周囲に銀象眼を施す。
丁字形利器
丁字形利器は、朝鮮半島の高句麗の枘穴鉄斧、(斧鉞(ふえつ))が源流と言われる。、軍事権を象徴する遺物とされ、古墳の被葬者の朝鮮半島とのつながりを示すものである。全国で5例しか出土していない。静岡県沼津市宮原2号墳、宮城県の多賀城跡、兵庫県美方郡香美町の月岡下古墳などである。
調査
発掘調査は1989年(平成元年)11月15日から開始し、同年12月29日に終了した。調査終了後、東平第1号墳は消滅し、周囲の竪穴建物跡などは現地に保存された。今回の調査で石室が確認されるまで、その存在を知られなかった新発見の古墳であった。墳丘盛土は耕作に伴う掘削によりすでに失われていたため、石室の基底石しか残存していない。周溝南側の4分の1ほどを欠いているが、外縁は正円に近い形であった。周溝から須恵器蓋・坏、壺、𤭯・瓶、甕が出土した。
被葬者像
古墳時代終末期(7世紀)の駿河東部を代表する有力者と想定される。
規模
- 形状 円墳
- 直径 11m
遺構
- 横穴式石室
遺物
- 丁字形利器1点、
- 銀装象眼太刀
- 鉄鏃30点以上、
- 弓飾金具1点、
- 金銅装馬具 - 馬具2組、
- 刀子4点、
- 用途不明金銅製品1点、
- 用途不明鉄製品2点、
- 須恵器22点、
- 土師器1点
- 壺鐙
- 棘付花弁形杏葉
築造時期
- 7世紀中頃
被葬者
展示
- 富士市立博物館(富士山かぐや姫ミュージアム) - 一部展示
指定
考察
AD660年に百済、AD668年に高句麗が滅亡して、倭国に多くの避難民・一部の王族が逃れてきた。716年には、東国に移住していた高句麗人1799人が武蔵国へ移され、高麗郡が設置された。高句麗の遺物が静岡にあるということは、これらの遺民が東平第1号墳の付近に滞在し、丁字形利器た馬具を伝えたのではないか。古墳は7世紀中頃とされるので、時期的としては符合する。
アクセス等
- 名称 :東平1号墳
- 所在地 :静岡県富士市伝法字東平2329 番1 外
- 交 通 :JR新富士駅から富士急静岡バスで「伝法二丁目」下車、徒歩3分
参考文献
- 富士市教育委員会(2018)『伝法東平第1号墳』富士市埋蔵文化財調査報告 第64 集
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