宮ノ台遺跡 ― 2025年08月31日 01:13
宮ノ台遺跡(みやのだいいせき)は千葉県茂原市にある弥生時代の遺跡である、 「宮ノ台式土器」で知られる。「上総宮ノ台遺跡」とも言われる。
概要
千葉県茂原市南部の綱島地区の宮ノ台という独立丘陵に宮ノ台遺跡は所在する。当遺跡が学界に知られるようになったのは、1892年(明治25年)の鳥居竜蔵による報告である。
調査
1935年(昭和10年)、1940年(昭和15年)の2回に渡り、台地上の西側及び南側斜面部の一部が、明治大学の杉原荘介により発掘調査された。発掘調査の結果、弥生土器とともに、この時代の特徴的な石器である柱状片刃石斧、大型蛤刃石斧などの磨製石斧や碧玉製の管玉などが出土した。調査は一部にとどまったが、遺跡の範囲は独立した台地上全域に拡がっているため、弥生時代中期後半の大規模な集落の存在が推定されている。
編年研究
弥生時代中期・後期の編年の大枠を作ったのは杉原荘介であった。小田原式、宮ノ台式、久ヶ原式、弥生町式、前野町式などである。しかし犬木努(1992)は杉原の単系的な編年では複雑な土器の様相を整理しきれないと指摘する。文化伝搬論を前提とした議論は遺物に即した議論になっていないと批判する。
縄文時代
宮ノ台遺跡から出土した土器は「宮ノ台式土器」と命名され、南関東における弥生時代中期後半の標式遺跡となっている。東海地方に出土する櫛目文土器の影響を強く受けた弥生時代中期後半の代表的土器群である。その後、各地で数多くの発掘調査が実施された結果、宮ノ台式土器は東京湾を囲む地域に広く分布していることが判明している。
遺構
- 集落
遺物
- 弥生土器(宮ノ台式)
- 大型蛤刃石斧
- 碧玉製管玉
- 磨製の太形石釜
- 石包丁
指定
- 昭和48年1月10日指定、出土した遺物は、茂原市指定有形文化財(考古資料)となっている。
- 昭和53年2月28日 千葉県指定史跡
アクセス等
- 名称:宮ノ台遺跡
- 所在地:千葉県茂原市綱島1192番地
- 交通:茂原駅から徒歩41分 3.2km
参考文献
- 杉原荘介(1935)「上総宮ノ台遺跡調査概報」『考古学』6-7
- 杉原荘介(1942)「上総宮ノ台遺跡調査概報 補遺」(『古代文化』13-7
- 水野 清一,小林行雄(1959)『図解考古学辞典』(「宮ノ台遺跡」) 東京創元社
- 犬木努(1992)「宮ノ台式土器基礎考」東京大学文学部考古学研究室研究紀要 11,pp,1-48
伊勢遺跡 (守山市) ― 2025年08月31日 01:14
伊勢遺跡 (守山市)(いせいせき)は滋賀県守山市にある弥生時代後期の大規模な遺跡である。
概要
伊勢遺跡はびわ湖に面した野洲川の下流域平野の守山市にある。守山市の南端から栗東市にまたがる遺跡で、野洲川の扇状地上に形成されている。弥生時代後期の約30ヘクタールに及ぶ大規模な遺跡である。大型建物が計13棟発見されている。弥生時代後期の建物跡には、竪穴住居と掘立柱建物の2種類の建物跡があり、竪穴住居の平面形には円形と方形そして五角形の3種類がある。直径220mの円周上に等間隔に配列された祭殿群、中心部に方形に配列された大型建物がならび、計画的に配置されており、それらは柵によって囲われている。建物の型式・配列から巨大な祭祀空間があったとみられる。魏志倭人伝に書かれる「宮室楼観城柵厳設」「卑弥呼の居処」と似た構成である。大型竪穴住居は、一辺約14mで屋内に棟持ち柱を持つ。床は粘土を叩きしめてから焼き固めている。このような焼床は他には例がなく、中国や朝鮮に類例が見られる。 弥生時代後期後葉には大型建物は廃絶されており、比較的短期間に役割を終えていたと見られる。伊勢遺跡からは日常用品の遺物はほとんど出土していない。下之郷遺跡の環濠では当時の人々の生活や環境が復元できる遺物があるのと対照的である。
発掘調査
伊勢遺跡は1979年(昭和54年)に発見されて以来2002年(平成14年)3月末までに76次に及ぶ発掘調査が行われた。1979年(昭和54年)、個人住宅の建築に先立つ試掘調査(第1次調査)によって発見された遺跡である。翌年1980年(昭和55年)、宅地造成に先立ち伊勢町旧集落の東側と北側で発掘調査を行い(第2次、第3次調査)、弥生時代後期の大規模な集落遺跡と判明した。第2、第3、第4次調査で五角形住居が発見された。1992年(平成4年)9月に、第21次調査で国内最大規模の掘立柱建物が発見された。梁行2間×桁行4間(7.8m×11.3m)、床面積は約88㎡で柱穴は長径2mである。 集落が営まれた時代は、縄文時代後期から室町時代と長いが、最も栄えた時代は弥生時代後期であった。方形区画が弥生時代に存在することが判明し、地域権力と首長の権限がすでに強化されていたことを証明する遺跡であった。1994年(平成6年)12月の24次調査では、方形区画の西側約80mの地点で独立棟持柱付き大型建物が検出されている。
遺構
- 方形周溝墓1
- 土坑
- ピット
- 溝
- 大溝
- 区画溝
- 河川
- 独立棟持柱付大型建物
- 大型建物
- 竪穴建物
- 溝
- 柱穴
遺物
- 弥生土器
- 高坏
- 広口壷
- 長頚壺
- 受口状口縁壺
- 器台
- 甕
展示
- 伊勢遺跡展示公園
所在地等
- 名称:伊勢遺跡
- 所在地:滋賀県守山市伊勢町大苗代東浦
- 交通:JR東海道本線 守山駅から徒歩20分(1.5km)
参考文献
- 滋賀県守山市教育委員会(2003)「伊勢遺跡確認調査報告書」
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