富雄丸山古墳の蛇行剣と保存科学 ― 2024年12月04日 00:13
富雄丸山古墳の蛇行剣と保存科学(しょくとちょうりのこうこがく)は2014年11月23日に開催された古代史と保存科学に関する講演会のタイトルである。
概要
- イベント名 第14回奈良県立橿原考古学研究所 東京講演会
- タイトル 「富雄丸山古墳の蛇行剣と保存科学」
- 主催 奈良県立橿原考古学研究所、由良大和古代文化研究協会、朝日新聞社
- 会場 有楽町朝日ホール
- 日時 2024年11月23日(土曜日)13時00分から15時55分
要旨
保存科学の歴史と富雄丸山古墳の蛇行剣に適用された保存科学を解説する。
講演1「富雄丸山古墳と保存科学」
奥山誠義氏 橿原考古学研究所 総括研究員
保存科学は文化財の医者である。保存科学の役割は、今の文化財の姿を後世に残すことである。1989年に橿原考古学研究所保存科学研究室ができた。1992年に保存科学棟ができた。 研究員は現在4名である。2022年に国内最大の蛇行剣が発掘された。下にある銅板(当時の認識、距離も不明であった)や遺構を傷つけないように取り上げる必要があった。アクリル樹脂を塗布し土と剣を補強し、ガーゼを当てて竹串で周囲の土を掘り下げ、10人かかりで取り上げた。研究所に搬入後は透過X線撮影を行い、三次元形状計測を行った。当初は剣が1本か2本か分からなかったが、最終的に1本と確認した。木材の痕跡が見つかり、鞘はホオノキ製と判明した。中央部に織物の痕跡があった。慎重に剣のクリーニングを行って公開にこぎ着けた。
講演2「蛇行剣-富雄丸山古墳出土品の理解に寄せて-」
北山峰生氏 橿原考古学研究所 調査第1係長
蛇行剣は全国で約80本出土しており、茶すり山古墳(兵庫県)、宇陀北原古墳、花の木古墳群、豊中大塚古墳(大阪府)、フネ古墳(長野)、七観古墳(大阪府)などがある。韓国でも金城里古墳など数例がある。蛇行剣の年代はまだ確定しない。鉄生産は5世紀に大型利ができ、長い剣の国産化が出きている。蛇行剣は5世紀に登場し、Aタイプ、Bタイプ、Cタイプに分かれる。蛇行剣以外の剣は何度も折り返して鍛錬するが、蛇行剣はブロック状の素材がついているだけで鍛えられていない。武器としては実用では無く、儀礼用の剣ではないか。
講演3「保存科学と考古学」
今津節生氏 奈良大学学長
1989年に橿原考古学研究所入所した。藤ノ木古墳では玄室内の泥のように見えた塊が、持ち帰って分析すると実は布の塊であることが分かった。1996年の下池山古墳では地下2mの空洞から鏡と織物を発見した。繊維を剥ぎ取り、毛織物を顕微鏡で調べると兎の毛であることが分かった。鏡袋の存在を明らかにできた。目に見えない有機物の残片から様々なことが分かるようになった。出土繊維の調査が全国で行われることを期待する。
考察
考古学の発掘現場には保存科学が必須であることがよく分かった。見逃しがちなゴミに見える塊が実は、貴重な研究素材を提供する。今回はだ龍鏡の分析は未完了のため蛇行剣に焦点が当たった。
参考文献
- 第14回奈良県立橿原考古学研究所 東京講演会 資料
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