日岡古墳 ― 2026年01月21日 00:02
日岡古墳(ひおかこふん)は福岡県うきは市にある古墳時代後期(6世紀後半)に築かれた前方後円墳である。若宮八幡宮の境内東側に位置し、九州を代表する装飾古墳の一つとして知られている。
概要
現在、前方部と後円部の上部は削られているが、墳丘の周囲には周濠がめぐっていたことが確認されている。後円部には単室構造の横穴式石室があり、奥壁には大きな石を立てた「鏡石」が据えられている。日岡古墳は、筑後川流域に勢力をもった有力者の墓とみられ、当時の社会や精神文化を知るうえで重要な遺跡である。
壁画
石室の内部には、赤・白・緑・青の顔料を用いた色彩豊かな壁画が描かれている。玄室の前壁・奥壁・左右の壁の全面に、大型の同心円文や連続三角文、蕨手文、X文といった幾何学文様のほか、靫(ゆぎ)・太刀・盾などの武具、船、馬、魚、獣などの図像が表されている。 これらの壁画は、被葬者の権威や信仰、死後の世界観を象徴するものと考えられている。 壁画系の装飾古墳では初期段階と見られる。
調査
1887年(明治20年)、坪井正五郎による発掘調査が行われ、石室内の装飾を発見した。
所感
装飾古墳の壁画は、カビの発生や温湿度管理、定期点検に要するコスト、見学者による損傷防止など、保存・管理上の課題が多い。多くの場合、自治体が管理主体となるため、継続的な予算措置が不可欠である。特に冬季には、外気と保存施設内部との温度差によって結露が生じやすく、この水分が石室内部の環境を悪化させ、カビ発生の要因となっている。
日岡古墳の壁画に描かれる同心円文は太陽を象徴すると解釈されることが多いが、複数描かれる理由については明確ではなく、霊的存在や権威表現などの諸説がある。連続三角文は鋸歯文と共通し、魔除けなどの呪術的意味をもつと考えられている。蕨手文はワラビの新芽を象徴し、再生や生命力を表す文様と解釈される。
また、靫・太刀・盾などの武具は被葬者の権威や武人的性格を示しており、船や馬は死後の世界への移動や他界観を象徴する図像と考えられている。これらの文様と図像が石室全面に描かれる日岡古墳の壁画は、古墳時代後期の死生観や精神文化を総合的に示す重要な資料である。
規模
- 形状 前方後円墳
- 築成 不明
- 墳長 74m
- 後円部径 径40m 高3.7m
- 前方部 幅35m 長35m 高3.8m(削平)
外表施設
円筒埴輪
- 円筒・朝顔形Ⅴ式
葺石
- あり
遺構
- 前方後円墳
- 横穴式石室
遺物
指定
- 昭和3年2月7日 国指定史跡
被葬者
- 筑後川流域に勢力をもつ有力
築造時期
- 古墳時代 後期中葉
展示
- 吉井歴史民俗資料館
アクセス等
- 名称:日岡古墳
- 所在地:福岡県うきは市吉井町若宮366-1
- 交通: JR「筑後吉井駅」から徒歩約20分
参考文献
- 犬塚将英・森井順之他(2015)「日岡古墳の保存施設内における温熱環境の調査」保存科学54,pp.27-35
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