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炭素14スパイク2024年03月29日 19:42

炭素14スパイク(たんそじゅうよんすぱいく)は奈良時代の西暦775年に大気中の放射性炭素14の濃度が世界的に急増したことをいう。

概要

自然界には、重さの違う3種の炭素同位体(12C,13C,14C)が存在する。 12Cは存在比98.93%で、陽子6、中性子6、質量数12である。13Cは存在比1.07%で、陽子6、中性子7、質量数13、14Cは存在比微量で、陽子6、中性子8、質量数14である。 大気中の放射性炭素14(14C)は、地球外から飛来する宇宙線が大気と反応して生じた中性子により窒素原子が変化して作られる。14Cは放射性同位体と呼ばれ、地球上に絶え間なく降り注ぐ宇宙線が大気中で原子核反応で作られる。エネルギー的に不安定であり、半減期5730年で放射壊変により次第に減少していく。 西暦775年の炭素14の急増量は通常の太陽活動の変動より20倍大きく、過去3,000年間で最大規模の宇宙線の飛来であった。歴史上では紀元前600年前後、西暦780年前後、西暦1800年頃と3回あった。 名古屋大学の研究チームは樹齢1,900年の屋久杉の年輪ごとの炭素14を測定し、西暦774年から775年の1年間で12パーミル増加していることが判明した。 南極のアイスコアから得られた宇宙線生成核種のベリリウム10の30年値でも同様な増加が見られるため、全地球規模の現象とみられる。この急増は発見者にちなみ「三宅イベント(Miyake Event)」または炭素14スパイクといわれる。標準年輪曲線に1年の狂いもないことが証明された。

'炭素14スパイクの応用

標準年輪曲銭が整備されていない、地域や樹種でも炭素14スパイクを見つければ、誤差0年の年代決定が行えることになる。白頭山の10世紀の巨大噴火の年代決定に適用された。 国際研究チームは白頭山火口周辺からみつかった埋没木に炭素14スパイク法を適用した。 775年14C急増が再現され、樹皮までの年輪数をカウントしたところ、2つの木が西暦946年であった。西暦946年頃に火口周辺の木が火砕流に巻き込まれて死んだことが判明した。

参考文献

  1. 澤田恵美、木村勝彦(2018)「白頭山北麓10世紀噴火のラハール堆積物の14Cウィグルマッチング年代」福岡大学理学集報 48 (2),pp.43-48
  2. F Miyake, K Nagaya, K Masuda(2012)"A signature of cosmic-ray increase in ad 774-775 from tree rings in Japan""Nature 486 (7402),pp.240-242
  3. 箱﨑 真隆(2023)「14C-スパイクマッチ法による年代決定」箱﨑 真隆 月刊考古学ジャーナル (779),pp.15-18