檜和琴 ― 2025年04月11日 00:51
檜和琴(ひのきのわごん, Japanese cypress Wakoto)は正倉院に収蔵されている木製の日本固有の六絃の琴である。
概要
和琴は「大和琴」(やまとごと)、「東琴」(あずまごと)「倭琴」(やまとこと)とも言われる。神社で使用される和琴は弥生時代から檜、杉、高野槙等を使用していたとされる。和琴は六弦の小型の琴である。琴の弦は失われているため音色は不明である。側面や両端に螺鈿が施され、装飾性に溢れる。万葉集では「日本琴」とも書く。弥生中期の琴が出土する。祭礼などで使用したとみられる。
由来
神楽や雅楽などで用いられ楽器であったという。古墳時代の埴輪の弾琴像や埴輪に描かれる琴は、四絃または五絃で、六絃のものは見られない。近畿地方から出土した埴輪の琴も五絃である。和琴がいつから六弦になったかは不明である。
古事記の琴
古事記に「爾握其神之髮、其室毎椽結著而、五百引石取塞其室戸、負其妻須世理毘賣、?取持其大神之生大刀與生弓矢及其天詔琴而、逃出之時、其天詔琴、拂樹而地動鳴。」 (大意)其の妻の須世理毘賣(スセリビメ)を背負うとすぐに、取持其大神の生大刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)と其の天の詔琴(のりごと) を取って、逃げ出す時、其の天の詔琴が樹に触れて、地が鳴動鳴した。 (意訳)大穴牟遅は須佐之男の髪を束ねて部屋の太い柱に結びつけ、巨大な岩で部屋の入口を封鎖し、妻の須勢理毘売を背負い、神宝の大刀・弓矢・天の詔琴を手にして逃げ出そうとしたところ、詔琴が樹に触れ、大地が揺れ動ごき轟音が響いた。須佐之男は気づいて起き出した。 神代の三種の神器は、太刀・弓・琴だったようだ。このような忙しい場面で琴を持ち出そうとしている。
構成
槽に檜材を使用し、上面は金銀泥で麒麟、鹿、尾長鳥、草花などを描く。周縁には金泥・銀泥で模様を描いた玳瑁を張り、竜頭・竜尾にも玳瑁を張る。緑地の玳瑁は後補である。竜頭・竜尾の玳瑁は、予め型を作りはめ込んでいる。側面は彩画を施した玳瑁と金箔を裏から押した玳瑁を交互に貼り付ける。彩画のものは直接、朱・緑などで文様を描く(参考文献1)。
類例
時代は下るが、彦根城博物館の和琴は六弦である(参考文献2)。
材料
槽・磯は檜材である。
展示歴
- 1949年 - 東京国立博物館、御物特別展
- 1952年 - 第6回
- 1967年 - 第20回
- 1984年 - 第35回
- 1997年 - 第49回
- 2013年 - 第65回
管理
- 名称 :檜和琴
- 倉番 :南倉 98
- 用途 :楽器・楽具
- 技法 :木竹工
- 寸法 :全長156.0cm,頭部幅17.0cm,尾部幅13.5cm(注:参考文献1では全長156.0cm,厚さ4cm,尾部幅17cmとなっている。
- 材質:槽・磯は檜 裏板は環孔材 栢形・櫛形は紫檀貼 金銀泥絵 金箔 玳瑁 金銀細線 螺鈿木画(黄楊木・紫檀・黒檀) 象牙
参考文献
- 内田至(1991)「正倉院宝物の海ガメ摂収集調査報告」正倉院紀要13号
- 松本重行作「和琴 銘葵」南北朝時代 永徳元年(1381),井伊家伝来資料
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