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船泊遺跡2025年04月09日 00:50

船泊遺跡(ふなどまりいせき)は北海道礼文島にある縄文時代の遺跡である。

概要

北海道の最北端に位置する礼文島には10カ所以上の縄文時代の遺跡がある。船泊遺跡は北海道礼文島の船泊湾と久種湖との間にある標高10m前後の砂丘上にある遺跡である。縄文時代後期前葉から中葉(約3,800~3,500年前)にかけて営まれた集落跡である。船泊遺跡では24基の墓が発掘されており、生まれたばかりの新生児の墓も多かった。船泊遺跡では、床に粘土を貼り中央部に炉を設けた住居が作られていた。この住居は直径5mである。集積遺構があり、石の間や下に黒い炭のある炉がある。海の獣から採った油を燃やした跡と見られる。

発掘

1998年(平成10年)に礼文町教育委員会が行った調査によれば、住居跡や作業場跡、 墓などの多数の遺構と、土器、石器、骨角器、貝製品、などの遺物ともに28体の人骨が発見された。 特に貴重な1,616点が2013年(平成25年)に一括して国の重要文化財に指定された。 船泊遺跡15号基では女性が埋葬されており、首と手首付近からビノスガイ製の平玉が大量に出土した。ネックレス・ブレスレットを装着した状態で埋葬されていたとみられる。頭を北にして顔を東に向きにして埋葬されていた。15号人骨は成人女性で首飾り・手首飾り・足首飾りなどの貝玉を数百個付けていた。23号人骨は口の付近にカンラン岩製大珠が出土した。ネックレスとして飾られていたと見られる。多量の貝製平玉がネックレス・ブレスレット・アンクレットに使われていた。成人男性の7号人骨は、ヒスイの大珠を副葬していた。これは新潟県糸魚川産である。

人骨のDNA解析

2009年に安達らは北海道礼文島の船泊遺跡から出土した縄文人のミトコンドリア DNA を分析し、良好なDNA の保存状態を確認した。最も保存状態の良かった23号女性および5号男性人骨の大臼歯から DNA の再抽出を行い,全ゲノム分析を行った。本州の縄文人と共通する形質を保持していたが、大曲洞窟人骨と同様に前頭部が扁平である。北方モンゴロイドの遺伝的影響を強く受けた結果と見られる。CPT1A遺伝子の変異が見られる。これは高脂肪食の代謝に有利で、北極圏に住む集団ではこの変異した遺伝子の頻度は70%を超えるが、現代日本人ではこの変異はほぼ存在していない。船泊遺跡の出土遺物の分析から、船泊縄文人の生業活動は狩猟・漁撈が中心であったことが示されている。 顔全体の寸が詰まっており、頬が横に張り、彫りの深い顔立ちである。身長は146cmである。虫歯により多くの歯が失われている。古代ゲノム情報から縄文人は10人程度の小さな集団で生活していたことが判明した。縄文人は、アメリカ先住民を含む東ユーラシア集団の中で最も古い時代に分岐し、ウルチ、韓国人、台湾先住民、オーストロネシア系フィリピン人と遺伝的に近いことが判明した。縄文人が大陸集団から別れたのは3万8千年?1万8千年前で、縄文時代以前であった。

遺構

  • 住居8
  • 作業場6
  • 墓壙24
  • 屋外炉87
  • 貝塚7

遺物

  • 縄文土器
  • 石器
  • 石製品
  • 骨角器
  • 貝製品
  • 動物遺存体
    • 石鏃付銛頭
    • イモガイ製垂飾
    • タカラガイ製装飾品
    • マクラガイ製装飾品
    • ビノスガイ製平玉(足首)
    • ビノスガイ製平玉(手首)
    • ヒスイ製垂飾

築造時期

指定

  • 平成16年7月29日 礼文町指定文化財 船泊遺跡出土品

展示

  • 礼文町郷土資料館

アクセス等 

  • 名 称:船泊遺跡 
  • 所在地 北海道礼文郡礼文町 大字船泊村字ウヱンナイホ204-1
  • 交 通:香深港フェリーターミナルから船泊方面へ路線バス40分

参考文献

  1. 古田彩(2024)「浮かび上がる縄文人の姿と祖先」日経サイエンス
  2. 国立科学博物館(2025)『特別展 古代DNA図録』
  3. 神澤秀明,Timothy A. Jinam他(2019)「Late Jomon male and female genome sequences from the Funadomarisite in Hokkaido, Japan」Anthropological Science Vol.127(2), pp.83-108

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