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及川伊勢宮遺跡2026年04月02日 01:23

及川伊勢宮遺跡(おいがわいせみやいせき)は、神奈川県厚木市に所在する旧石器時代から平安時代に至る複合遺跡である。 遺跡は荻野川と中津川に挟まれた荻野台地上、標高約45m付近に立地する。

概要

2023年度(令和5年度)の調査により、遺跡内から古墳時代の前方後円墳(1号墳)が確認された。本古墳は、現時点において荻野川流域で確認された前方後円墳の一例であり、地域の古墳出現期を考える上で重要な資料である。

1号墳は墳丘全長約37m(周溝を含めた主軸長約45m)を測り、後円部径約21m、くびれ部幅約6m、前方部先端幅約15mである。主軸は北から西に約68度傾く。周溝は後円部側で幅約5m・深さ約1m、前方部側で幅約3.5m・深さ約50cmである。

周溝からは土師器の壺や高坏片が出土しており、葬送儀礼に伴う供献行為の痕跡と考えられる。これらの土器および隣接する方墳出土土器から、本古墳は古墳時代前期後半から中期初頭に築造されたと推定される。

なお、本遺跡では古墳に隣接して方墳も確認されており、墳墓群形成の可能性が指摘される。

発掘調査は厚木秦野道路建設に伴う事前調査として、令和6年(2024年)4月1日から令和7年(2025年)3月31日にかけて実施された。

旧石器時代の遺物としては、チャート製の大型木葉形尖頭器および中型柳葉形尖頭器が各1点出土しており、いずれも完形に近い良好な状態であった。これらは後期旧石器時代の活動を示す重要な資料である。

■ 相模川流域古墳との比較

―及川伊勢宮遺跡の位置づけ―

1. 前提:相模川流域古墳の基本構造

神奈川県内、とくに相模川流域では、古墳時代前期に以下の特徴が認められる。

  • ● 立地
    • 河岸段丘縁辺
    • 自然堤防・微高地
    • 水運・交通結節点
  • ● 古墳の特徴
    • 中規模前方後円墳(50〜100m級)
    • 首長層墓(地域支配者)

すなわち初期ヤマト政権との関係が想定される

  • ● 代表例
    • 勝坂遺跡周辺古墳群(相模原)
    • 海老名・厚木の相模川右岸古墳群
    • 平塚〜寒川周辺の古墳群
  • 特徴: 「河川交通を基盤とした首長墓の帯状分布」が見られる。

2. 及川伊勢宮遺跡の特異性

  • (1)立地の違い
    • 及川伊勢宮遺跡:
      • 支流域(荻野川・中津川)
      • 台地内部(標高約45m)
  • 相模川本流古墳との違い
    • 相模川本流の立地は段丘縁辺であるが、及川伊勢宮では台地中央寄りである。
      • 相模川本流の水系は本流であるが、及川伊勢宮では支流である。
      • 相模川本流の交通は広域交通であるが、及川伊勢宮では地域内交通である。
    • 及川伊勢宮遺跡の解釈は「中央的交通路から一段下がる地域首長層」である。
  • (2)規模の違い
    • 相模川流域:50〜100m級中心
    • 及川1号墳:約37m
  • 評価:としては明確に小型であり、中央首長ではなく「地方首長」である。
  • (3)墳墓構成
    • 及川伊勢宮では、「前方後円墳 + 方墳」の構成である。
    • 重要性としては、単独首長墓ではない、小規模墳墓群形成段階である。

一方、相模川流域では「単独大型墳 or 明確な階層差を持つ群集墳」である。

  • 違いは、「及川=初期的・未分化な墓制」である。
  • (4)出現時期
    • 及川:前期後半〜中期初頭
    • 相模川本流:前期中葉から展開
意味するところは及川伊勢宮ではワンテンポ遅れている

3. 構造的理解

以上を総合すると:

  • ● 相模川流域構造
    • 本流(中央首長)  ↓
    • 支流(地方首長)  ↓
    • 台地内部(末端層)
  • 及川伊勢宮遺跡の位置付けは「支流域の地方首長層」である。

4. 政治的背景(ヤマト政権との関係)

相模川流域は

  • 東国への進出ルート
  • 交通・物流の要衝
  • 本流古墳は「ヤマト政権との直接的関係」が見られる。
    • 一方、及川伊勢宮では、小規模であり、支流域であることから、やや遅れる出現となる。
  • 解釈としては「間接的支配圏」または「従属的首長」と見られる。

5. 学術的結論

及川伊勢宮遺跡は

  • 相模川本流古墳の「周縁的展開」
  • 地方首長層の成立段階
  • 墳墓群形成の初期形態

を示す。

■ 総括

  • 及川伊勢宮遺跡の意義は単なる「小古墳」ではなく:
  • 「相模川流域における権力構造の階層化を示す遺跡」である。
  • この遺跡は:
  • 中央(相模川本流)
  • 地方(荻野川流域)

の関係をつなぐ「中間首長層の可視化資料」である。

遺構

  • 前方後円墳
  • 周溝

遺物

  • 小型丸底壺
  • 高坏

築造年代

  • 古墳時代前期後半から中期初頭

展示

考察

指定

アクセス等 

  • 名称  :及川伊勢宮遺跡
  • 所在地 :神奈川県厚木市及川2丁目122番9
  • 交 通 :本厚木駅から北に3.9km

参考文献

  1. 公益財団法人かながわ考古学財団(2023)「及川伊勢宮遺跡第3地点」現地説明会資料