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古事記2023年06月03日 12:00

古事記(こじき)は、現存する中では日本最古の歴史書といわれている。全3巻。日本の建国の由来、歴史上の出来事や物語が語られる。続日本紀には全く古事記の完成に触れていない。正史の日本書記に対して、私的な歴史書と位置付けられている。

概要

現在しないものでは『帝紀』『旧辞』『国記』『天皇記』は古事記より成立が古いといわれる。 712年(和銅5年)、天武天皇の命により稗田阿礼が誦習した「帝紀」「旧辞」を元明天皇の命により712年(和銅5年)に太安麻呂が撰録し、献上したと序文に記載される。

構成

上巻は神代の物語、中巻は第一代神武天皇から応神天皇まで、下巻は仁徳天皇から推古天皇までを記載する。上巻の初めに序(上表文)がつく。記述法は、本文の散文は和文的漢文体、韻文は和文体とする。編年体、紀伝体のいずれの形式ではなく、神代以外は天皇の代ごとに事跡をまとめる。

刊行本

  • 黒板勝美(1998)『国史大系 古事記・先代旧事本紀・神道五部書』吉川弘文館
  • 久松潜一(1994)『古事記大成』平凡社
  • 中村 啓信(2009)『新版 古事記 現代語訳付き』角川文庫
  • 倉野 憲司(1963)『古事記』岩波文庫、ISBN-10:4003000110
  • 倉野 憲司 , 武田 祐吉(1993)『古事記 祝詞』岩波書店
  • 青木和夫,石母田正 (1982)『日本思想大系 1 古事記』岩波書店

写本

『古事記』の原本は現存しない。伊勢系諸本と卜部系諸本の2種類がある。

  • 真福寺本系
    • 国宝、愛知県宝生院(大須観音)蔵
    • 最も古く確かな写本として、古事記研究の底本となる。
  • 道果本(重要文化財、奈良県天理図書館蔵)
    • 上巻の前半部分しか現存しない。
  • 道祥本(伊勢本ともいう。東京都静嘉堂文庫蔵)
  • 春瑜本(重要文化財。伊勢神宮蔵。伊勢一本、御巫本とも云う。)
  • 兼永筆本(京都府・鈴鹿勝蔵、兼永本、鈴鹿登本ともいう。)
  • 近衛本(陽明文庫本、京都府陽明文庫蔵)系
  • 梵舜本(ぼんしゅんぼん:東京都國學院大學蔵)系
  • 山田本(やまだぼん:東京都静嘉堂文庫蔵)系
  • 猪熊本(香川県猪熊家蔵)系
  • 三浦本(戸川本、兵庫県戸川家蔵)系
  • 九條本(奈良県天理図書館蔵)系
  • 隠顕蔵本(奈良県天理図書館蔵)系
  • 祐範本(ゆうはんぼん:前田本、東京都前田育徳会尊経閣文庫蔵)系
  • 国立国会図書館蔵(1644年、寛永21年)、前川茂右衛門)

真福寺本

「真福寺本古事記」に記載されている崩年干支は紀年論に重要な役割を果たしている。

参考文献

倉野 憲司<校注>(1963)『古事記』岩波書店

風土記2023年06月03日 12:02

風土記(ふどき)は奈良時代に編纂された地名、特産物、土地の良し悪し、地名の由来、地域に伝わる伝承、伝説などを収録した郷土誌である。

概要

和銅六年(713年)5月2日、元明天皇は全国に向けて風土記を撰進するよう官命を発した。

ほぼ完全なもの

『出雲国風土記』はほぼ完全な形であるが、『常陸国風土記』『播磨国風土記』『肥前国風土記』『豊後国風土記』は一部が欠ける。これら以外は逸文だけが残る。

一部だけ残るもの

『山城国風土記』・『摂津国風土記』・『伊勢国風土記』・『尾張国風土記』・『陸奥国風土記』・『越後国風土記』・『丹後国風土記』・『伯耆国風土記』・『備中国風土記』・『備後国風土記』・『阿波国風土記』・『伊予国風土記』・『筑前国風土記』・『筑後国風土記』・『豊前国風土記』・『肥後国風土記』・『日向国風土記』・『大隅国風土記』・『壱岐国風土記』

官命の内容

  • (原文) 畿内七道諸國郡郷名著好字。其郡内所生、銀銅彩色草木禽獸魚䖝等物、具録色目。
  • 及土地沃塉、山川原野名号所由、又古老相傳舊聞異事、載于史籍言上。
  • (大意)郡内に生ずる所の銀銅彩色草木禽獣魚虫等ノ物、具さに色目に録し、及び土地の沃塉、山川原野の名号の所由、又古老相伝ふる旧聞異事は、史籍に載せて言上せよ

参考文献

日本書紀2023年06月03日 12:03

日本書紀(にほんしょき)は日本で最初の勅撰国史(天皇の命で編修された国の歴史)である。

概要

全30巻。神代紀から持統天皇の代までを漢文により編年体で記している。『続日本紀』養老4年(720)5月癸酉(21日)条に「先是、一品舎人親王奉勅修日本紀。至是功成奏上。紀卅巻、系図一巻」と書かれる。編纂総裁は天武天皇皇子の舎人親王である。帝紀、旧辞、その他諸家の家記、官の記録、個人の日記・手記、寺院の縁起類、朝鮮側史料、中国史書など多方面にわたる資料を参照している。異説を強いて統一せず、「一書」として併記したり、注として付記し、後人の勘校に俟つ旨を記す学問的態度をとる。

写本

紅葉山文庫旧蔵版は、1513年(永正10年)頃、歌人で和漢の学に通じていた公卿の三条西実隆が作成した写本を、慶長年間(1596―1615)に転写したものである。。30巻揃った『日本書紀』として現存最古のもの。

六国史

官撰の6種の国史をいう。8世紀から10世紀の初頭にかけて、律令国家としての体制を整備した日本は歴史書の整備を進めて、古代日本の律令国家が編纂した正史である。

  • 『日本書紀』
  • 『続日本紀』
  • 『日本後紀』
  • 『続日本後紀』
  • 『日本文徳天皇実録』
  • 『日本三代実録』

参考文献

  1. 倉西裕子(2003)『日本書紀の真実』講談社
  2. 坂本太郎, 井上光貞,家永三郎,大野晋 (1994)『日本書紀〈1〉』岩波書店
  3. 坂本太郎, 井上光貞,家永三郎,大野晋 (1994)『日本書紀〈2〉』岩波書店
  4. 坂本太郎, 井上光貞,家永三郎,大野晋 (1994)『日本書紀〈3〉』岩波書店
  5. 坂本太郎, 井上光貞,家永三郎,大野晋 (1995)『日本書紀〈4〉』岩波書店
  6. 坂本太郎, 井上光貞,家永三郎,大野晋 (1995)『日本書紀〈5〉』岩波書店
  7. 井上光貞 ,川副武胤,佐伯有清(2020)『日本書紀(上)』中央公論新社
  8. 井上光貞 ,川副武胤,佐伯有清(2020)『日本書紀(下)』中央公論新社
  9. 高城修三(2000)『紀年を解読する 古事記・日本書紀の真実』ミネルヴァ書房

上宮聖徳法王帝説2023年06月03日 12:04

上宮聖徳法王帝説(じょうぐうしょうとくほうおうていせつ)は厩戸皇子の現存最古の伝記である。

概要

成立年代は不明である。一巻。現在知恩院蔵の写本(国宝)が、現存する最古のものである。本書でのみ知られる内容があり、史料的価値は高い。江戸時代までは法隆寺に伝わった。撰者未詳であるが、古い資料をもとに法隆寺の僧がまとめたと考えられている。

構成

皇室系譜は七世紀の古い記述法である。他の部分を付加し現在の姿になったのは平安中期とされる。裏書に山田寺の創建に関する記事がある。全体は五部構成である。 ①聖徳太子を中心とする皇室系譜、 ②太子の事跡:8世紀頃 ③法隆寺金堂薬師像後背銘・同釈迦像後背銘・天寿国繡帳と注釈、 ④太子の事跡の再録・追補(物部守屋討伐、戊午年の仏教伝来と廃仏、仏教興隆、冠位制、十七条憲法、山背大兄王事件、蘇我氏の滅亡):8世紀頃 ⑤欽明天皇より推古天皇に至る五天皇の在位年数・崩年・陵名、太子の生没年・墓所

参考文献

  1. 東野治之(2013)『上宮聖徳法皇帝説』岩波書店

古語拾遺2023年06月03日 12:05

古語拾遺(こごじゅうい)は平安時代初期の貴族の斎部広成が取りまとめた歴史書である。

概要

宮中祭祀を担当していた斎部氏が、正史に漏れている伝承を書き記したものである。平城天皇から朝儀に関する召問があり、それに応えるために作成された。神代では『古事記』や『日本書紀』などの史書から漏れた斎部氏に伝わる伝承を記載する。津田左右吉は史書としての価値は低いと評価したが、近年では再評価されつつある。

構成

構成は以下の通りである。

  • 本文
    • 神代の古伝承  天地開闢、日神、素神、大己貴神、天孫
    • 神武天皇以降、天武天皇までの古伝承
    • 古伝承から漏れた十一条
    • 御歳神祭祀の古伝承

成立

807年(大同2年)2月13日に作成されたとされている。写本によっては、806年(大同1年)とするものがある。

参考文献

  1. 斎部広成・西宮一民(校注)(1985)「古語拾遺」岩波書店

先代旧事本紀2023年06月03日 12:06

先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)は平安初期に編纂されたと考えられる歴史書である。

概要

全10巻、神代から推古大王に至る歴史を記す。著者は不明であるが、「天孫本紀」に尾張氏および物部氏の系譜を詳細に記している。ほかに物部氏関係の事績が多くみられるので、本書の著者は物部氏の一族と推定されている。序文は後の時代の偽作とされる。 江戸時代に多田義俊『旧事紀偽撰考』、伊勢貞丈『旧事紀剥偽』などにより偽書として排斥され、明治以降にも継承された。 しかし『古事記』『日本書紀』等に見られない独自に書かれている部分として、特に「國造本紀」、「天孫本紀」がある。近年では古代史の史料として重要となっている。「國造本紀」では化改新以前の百四十四ヵ国の国造定賜時期、その初代を記す。「天孫本紀」には現存しない物部文献からの引用があるという意見もある。 『先代旧事本紀大成経』とは別書である。

構成

  1. 巻第1 神代本紀 陰陽本紀
  2. 巻第2 神祇本紀
  3. 巻第3 天神本紀
  4. 巻第4 地祇本紀
  5. 巻第5 天孫本紀
  6. 巻第6 皇孫本紀
  7. 巻第7 天皇本紀
  8. 巻第8 神皇本紀
  9. 巻第9 帝皇本紀
  10. 巻第10 國造本紀
  11. 語句索引

写本

天理大学本は完本として現存の最古本であり、古代史研究上に貴重である。 天理大学本は、ト部兼永が大永元年から同二年にかけて書写したものとされる。 写本は重要文化財となっている。

参考文献

  1. 坂本太郎, 井上光貞,家永三郎,大野晋 (1994)『日本書紀』岩波書店
  2. 工藤浩・松本直樹・松本弘毅校注・訳(2022)『先代旧事本紀注釈』花鳥社

隅田八幡鏡2023年06月03日 12:49

国立国会図書館デジタルコレクション、紀伊國名所圖會 [初]・2編6巻, 3編6巻. 三編(二之巻)

隅田八幡鏡(すだはちまんきょう)は和歌山県の隅田八幡神社が所蔵する古代の銅鏡である。「隅田八幡神社人物画像鏡」ともいう。

概要

国宝である。古代の日本語を知るための重要な資料とされている。断片的ではあるが、同時代資料として当時の政治や社会の様相を探る上で重要な史料である。現物は東京国立博物館に寄託されている。

原文

  • (原文)癸未年八月日十大王与(年)男弟王、在意柴沙加宮時、斯麻念長寿(奉)、遣開中費直・穢人今州利二人等、取白上同二百旱、作此竟
  • (銘文大意) 癸未年八月に日十大王は男弟王が意柴沙加宮にあるとき、斯麻は長寿を念じて開中費直(かわちのあたい)、穢人(漢人)今州利の二人らを遣わし、白上同(真新しい上質の銅)二百旱をもってこの鏡を作る。

年号

癸未年は鏡を製作した年とみられる。443年説と503年説とがある。どちらも倭の五王時代となる。考古学的年代観から503年説が有力との説があるが、443年を押す説もある。

  • 443年は古墳時代中期で、宋から「安東将軍倭国王」を正式に任命された年となる。倭王は「済」である。
  • 503年は倭王武が「征東大将軍」の称号を得た翌年である。武寧王の在位年代にはまるのは503年であろう。
  • 坂本太郎・井上光貞他(1994)は癸未年を443年とする説が有力であるとする。

「開中費直」とは

日本書紀が引く百済本紀中に登場する「加不至費直(河内直)」と同一人物との見解がある。「開中」は、(参考文献1) カフチ説、(参考文献2) 「開中」は百済地名で、『日本書紀』の「辟中」などであろうとする説がある。費直はもともと百済で使用されていた呼称であり、郡の長で王に仕えるリーダーであったとされる。

斯麻

斯麻は武寧王陵の発掘の墓誌銘に「寧東大将軍百済斯麻王、年六十二歳、癸兎年五月丙戊朔七日壬辰崩」と書かれている。)癸未年は523年である。『日本書紀』武烈四年、この年に嶋王が即位し、武寧王といったとの記事がある。百済新撰にも武寧王を斯麻王というと書かれる。したがって斯麻は武寧王と考えても矛盾はない。開中費直と今州利は武寧王が派遣した人物とみることができる。

男弟王

男弟王を笹山晴生他(2020)は503年の解釈であれば、即位前の継体大王と解釈している。しかし坂本太郎・井上光貞他(1994)は男弟王を継体に充てるのは音韻学から、無理があるとする。すなわち男弟は「Wöötö」(またはwötö)の発音と推定されるので、男大迹の読み「wöfödö」とは異なるとする。503年としても、即位前の継体が忍坂宮にいたとする記録はない。癸未年を443年とすると、継体大王とは結びつかない。

意柴沙加宮

笹山晴生・五味文彦(2020)は「忍坂宮」とする。『日本書紀』・『古事記』に忍坂が現れるのは、忍坂大中姬命だけである。坂本太郎・井上光貞他(1994)は允恭の妃の忍坂大中姬命の宮とする説が有力であるとする。刑部(忍坂部)は,この宮の経営のための費用を貢進する部民であった。

王号

天皇ではなく、大王と称している。この時代の表現として適切である。天皇号の成立は天武朝と考えられている。

日十大王

篠川賢(2010)はどの大王かは特定できないが、継体の1代前の大王であろうとする。 坂本(1991)は原文を「癸未年八月日十大王年」を「癸未年8月10日大王の年」と解釈している。笹山晴生・五味文彦(2020)もこの解釈である。

参考文献

  1. 篠川賢(2010)「隅田八幡宮人物画像鏡銘小考」日本常民文化紀要 28,pp.127-150
  2. 石和田幸(1996)「隅田八幡神社人物画像鏡における 「開中」 字考」同志社国文学 45,pp. 63-72
  3. 石和田幸(2001)「上代表記史より見た隅田八幡神社人物画象鏡銘_「男弟王」と「斯麻」は誰か」同志社国文学54,pp.1-8
  4. 坂本義種(1991)「隅田八幡人物画像鏡」『古代日本金石文の謎』学生社
  5. 笹山晴生・五味文彦(2020)『日本史史料集』山川出版
  6. 坂本太郎・井上光貞・家永三郎他・大野晋(1994)「日本書紀(三)」岩波書店