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圧痕2023年06月03日 18:16

圧痕(あっこん, Indentation)は土器などの表面や内部に残る穀物や昆虫の形跡である。

概要

手や物体に押されて土器などの表面がくぼんだ状態、または土器内に穀物の種子や昆虫などが残存し、その形状が残ることを圧痕という。形成には必ずしも圧力を必要としない。 空洞になった個所を型どりし種子や昆虫の種類を確認できる。

英国での圧痕穀物

英国では穀物の土器圧痕は20世紀初頭から注目されていた。 Jessen K.and Helveak.H(1844) は圧痕穀物のある土器の時期からイングランドにおける農耕開始時期を決定した。穀物圧痕は手作り土器の場合にのみ見られ、専業的な陶器生産になると圧痕は見られなくなるとした。粘土の生地に紛れ込んだものが、偶然に土器表面に表れ、内部の炭化物が落ちて、表出圧痕となることを発見した。すなわち圧痕の形成時期は土器の製作と同時期であると主張した。圧痕は粘土生地に混入した穀物や種実によって形成されるものであり、土器成形後または成形中に外部から押し当てられたものではないとした。

日本の圧痕穀物

「レプリカ・セム法」を用いると土器の表面の凹みに多くの情報が隠されていることが分かった。「レプリカ・セム法」は土器の表面に残る凹みにシリコン樹脂を注入して型取りを行い、このレ プ リ カ を 走 査 型 電 子 顕 微 鏡で観察・分析する方法である。 目で見るより多くの土器器壁内に隠れた圧痕(潜在圧痕)が存在することをレントゲン検査とX線CTスキャナーによる調査によって中山誠二(2008)が証明した。小畑(2023)は突帯文土器期に多数の大陸系穀物潜在圧痕を発見した。土器の製作技術や製作に関わる季節、環境の解明などが行われた。中部高地において紀元前 8000年紀以降に出現するダイズ属の種子は,紀元前 4000年紀後半以降に一挙に大型化し,紀元前 2000紀にはさらに大型化したことが判明した。

圧痕から分かること

縄文時代の生活の中で身近にあった昆虫や植物が分かることで、自然環境、生活環境が分かる。2007年に山梨県立考古博物館で、土器が欠けたとき、内部に大きな穴があることを発見した。圧痕レプリカ法で調べると、野生種の2倍のサイズの大豆であった。縄文時代の農耕を示唆する発見であった(文化庁(2021))。縄文農耕論を支持する発見であった。

参考文献

  1. Jessen K. and Helveak.H(1844)”Cereals in Great Britain and Ireland in prehistoric and early historic time”KOBENHAVN
  2. 中山誠二(2008)「縄文土器に残る圧痕から栽培植物の起源を探る」化学と教育66 巻 8 号
  3. 中山誠二(2010)『植物考古学と日本の農耕の起源』同成社
  4. 小畑弘己(2023)「圧痕法の歴史・成果」熊本大学大学院小畑研究室
  5. 文化庁(2021)『発掘された日本列島 調査研究最前線2021調査研究の目』共同通信

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