鳥毛立女屏風 ― 2023年06月11日 19:09
鳥毛立女屏風(とりげりゅうじょのびょうぶ,Screen Panel with Woman under Trees)は正倉院に伝わる六扇の屏風である。
概要
鳥毛立女屏風は『国家珍宝帳』に記載されているため、正倉院開設時から保管されていた屏風であると分かる。他の屏風は貸し出されたりして行方不明の者が多いが、鳥毛立女屏風は一度も持ち出されたことはない。そのため1畳6扇がすべて残っている。江戸時代には鴨の毛と考えられており「鴨毛屏風」と呼ばれていた。
構成
墨で描いた人物絵の輪郭に山鳥の羽毛を貼っている。羽毛は殆ど剥落しており、残っていない。羽毛は日本固有の山鳥と日本産の雉の羽とされる。顔や手に施された彩色がかすかに残る。樹木の下に唐風の美人が立っているため、「樹下美人図」とも呼ばれている。盛唐の風俗を反映したふくよかな天平美人が描かれている。彩色箇所以外は下絵の墨線がみえる。
製作場所
第五扇の下貼紙に「天平勝宝四年」の年号の記載があり、行政文書の再利用とみられ、またわずかに残存する羽毛は日本産の山鳥のものであることなどから、日本で製作されたものというのが定説である。
出展歴
1988年以降は1畳6扇をまとめて展示する傾向がある。
第1扇
- 1956年
- 1979年
- 1988年
- 1999年
- 2014年 - 日本国宝展(東京国立博物館)
- 2019年
第2扇
- 1956年 -
- 1966年
- 1988年
- 1990年 - 『日本美術名品展』(東京国立博物館)
- 1999年 -
- 2014年 -
- 2019年 -
第3扇
- 1949年 - 東博
- 1956年 -
- 1964年
- 1977年
- 1988年
- 1990年 - 『日本美術名品展』(東京国立博物館)
- 1999年 –
- 2014年 - 日本国宝展(東京国立博物館)
- 2019年 –
第4扇
- 1948年 –
- 1956年 –
- 1959年 - 正倉院宝物展(東京国立博物館)
- 1988年
- 1990年 - 『日本美術名品展』(東京国立博物館)
- 1999年 –
- 2014年 - 日本国宝展(東京国立博物館)
- 2019年
第5扇
- 1956年 –
- 1966年 –
- 1988年
- 1990年 - 『日本美術名品展』(東京国立博物館)
- 1999年 –
- 2014年 - 日本国宝展(東京国立博物館)
- 2019年 –
第6扇
- 1956年 –
- 1988年
- 1999年 –
- 2014年
- 2019年
管理
第1扇
- 倉番 : 北倉 44
- 用途 : 調度
- 技法 : 紙
- 寸法 : 長135.9cm,幅56.2cm
- 材質・技法 :紙本 白色地彩色 ヤマドリ羽毛痕跡 仮表装
第2扇
- 倉番 : 北倉 44
- 用途 : 調度
- 技法 : 紙
- 寸法 : 長136.2cm,幅56.2cm
- 材質・技法 :紙本 白色地彩色 ヤマドリ羽毛痕跡 仮表装
第3扇
倉番 : 北倉 44
- 用途 : 調度
- 技法 : 紙
- 寸法 : 長135.8cm, 幅56.0cm
- 材質・技法 :紙本 白色地彩色 ヤマドリ羽毛痕跡 仮表装
第4扇
倉番 : 北倉 44
- 用途 : 調度
- 技法 : 紙
- 寸法 : 長136.2 幅56.2
- 材質・技法 :紙本 白色地彩色 ヤマドリ羽毛痕跡 仮表装
第5扇
倉番 : 北倉 44
- 用途 : 調度
- 技法 : 紙
- 寸法 : 長136.2cm,幅56.5cm
- 材質・技法 :紙本 白色地彩色 ヤマドリ羽毛痕跡 仮表装
第6扇
倉番 : 北倉 44
- 用途 : 調度
- 技法 : 紙
- 寸法 : 長136.1cm,幅56.4cm
- 材質・技法 :紙本 白色地彩色 ヤマドリ羽毛痕跡 仮表装
正倉院の屏風
『国家珍宝帳』には100畳、596扇の屏風が記載されている。屏風は書屏風、絵屏風、鳥毛屏風、夾纈・臈纈屏風に分類される。書屏風は21畳、鳥毛屏風は3畳、絵屏風は1畳、夾纈は65畳、臈纈は10畳が記載されている(参考文献1)。このうち書屏風には王義之、王陽詢の書や藤原不比等の屏風があるが、持ち出されてすでに失われている。絵屏風は貸し出されて返還されなかったものが多い。鳥毛屏風と夾纈・臈纈屏風は貸し出されなかったため、現存している。
参考文献
- 米田雄介「『国家珍宝帳』に見える屏風の成立について」正倉院紀要第35号,pp.117-140
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