象鼻山古墳群 ― 2024年12月28日 00:50
象鼻山古墳群(ぞうびざんこふんぐん)は岐阜県養老郡養老町にある象鼻山(標高140m)の山頂から山麓にかけて分布する約70基の墳墓群の総称である。
概要
南宮山の東南端に位置する標高142mの象鼻山の山頂にある象鼻山1号墳は全長約42.8mの前方後方墳であり、古墳群で最大規模である。墳丘の形態は本格的であり、後方部が二段築成であり平坦面が広く、前方部は短く開く形をとるなど初期の本格的な前方後方墳の特徴を良く備えている。山頂からは東に濃尾平野、南に旧伊勢湾を見下ろせる。木棺の方向については、墳丘主軸と角度をつけ、ほぼ南北方位に設置されていた。
発掘調査
象鼻山1号墳
1996年から1998年にかけて発掘調査が行われた。箱式木棺から双鳳紋鏡や琴柱形石製品、鉄刀2点、鉄剣6点、鉄鏃53点などが見つかった。ほかに水銀朱を入れた二重口縁壺、S字甕、小形器台がある。土器の特徴から廻間Ⅲ式前半期出あることが分かった。ここから3世紀中頃をやや下る時期であることが分かる。双鳳紋鏡は、西暦2世紀後半に中国華北で製作され、約100年から150年後に本古墳で破砕して副葬されたと想定されている。琴柱形石製品は、緑色凝灰岩製であり丁寧に加工されている。象鼻山1号墳は、前方部が祭の場として定型化した前方後方墳であるとされた。編年案では西暦260年から270年が想定されている。
象鼻山3号墳
象鼻山3号墳は、南北70mの方形壇の中心に、直径17mの円丘を配置した上円下方壇である。円丘は上半分が土、下半分が石で造られている。象鼻山3号墳は東・南・西の平野への眺望が開けている。3号墳の周囲には広い平坦面が存在する。宇野教授は象鼻山3号墳は背後(北)に丘陵を背負い、前面(南)に水(牧田川)が流れて、中国のもう一つの重要な思想である風水思想にかなう場所を選んだと考えている。象鼻山3号墳は象鼻山古墳群中で最古の古墳時代最古期の築造であり、上円下方壇の形をもつことが判明した。編年案では西暦150年前後を想定している。上円部における埋葬施設の有無は未確認である。
調査
第1号墳
- 形状 前方後方墳
- 築成 後方部:2段
- 墳長 42.8m
- 後円部 径23.8×26.6m 高3.8m
- 前方部 幅14.4m 長16.63m 高2.75m
第3号墳
- 形状 上円下方壇
- 上円部1段目直径 17.5m
- 上円部2段目直径 14.4 m
- 上円部3段目直径 10.1 m
- 方形壇東西幅 (86.4 m)
- 北壕幅 3.3 m 深さ 0.9m
- 南壕幅 3.0 m 深さ 1.0m
- 最高点と最低点比高 10.7 m 方形壇西側
- 方形区画 東西86.4 m、南北70.0 m
遺構
- 木棺直葬(箱形木棺の可能性あり)
遺物
1号墳
- 双鳳紋鏡1
- 琴柱形石製品3(うち1点は木棺上)
- 鉄剣 6
- 鉄刀 1
- 鉄鏃 53(木棺上)
- 土師器 二重口縁壺(棺内、朱入り)
- 二重口縁壺1(後方部西側平坦面出土)
- 二重口縁壺
- 壺
- S字甕
- 高坏小形器台(以上墓壙内)
3号墳
- 土器92 片(うち古代14 片)、
- ミニチュア土器、
- 小型丸底壺 松河戸Ⅰ式
- 瓷器系陶器1片、
- 石器256 点、
- 石器石材の原石27 点、
- 自然石32 点
- 石片86 点
- 鉄片24 片
築造時期
- 3世紀中頃(西暦260年から270年)
被葬者
- 3世紀中頃に邪馬台国と対立関係にあった狗奴国の国王、またはその王族
展示
指定
- 養老町指定文化財
アクセス等
- 名称:象鼻山古墳群
- 所在地:岐阜県養老郡養老町橋爪字岡山
- 交通:
参考文献
- 養老町教育委員会(1997)「象鼻山1号古墳 第1次発掘調査の成果」養老町埋蔵文化財調査報告第1冊
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