納所遺跡 ― 2023年05月19日 23:11
納所遺跡(のうそいせき)は、三重県津市納所町にある縄文時代晩期から古墳時代を中心とする伊勢湾沿岸の拠点集落遺跡である。
概要
安濃川が津市北西郊で蛇行して東に流れるところ,左岸一帯の標高5mから6mの自然堤防上に位置する。遺跡の範囲は東西1200m、南北600mに及ぶ。
調査
1923年、大正時代に郷土史家の鈴木敏雄によって発見された。1936年吉田富夫が櫛目式土器の出土遺跡として紹介した。昭和46年(1971年)冬、圃場整備の工事に伴い中学生たちが土器等を採集し、さらに、その遺跡の上に津市街と近畿自動車道の津インターを結ぶ道路が建設されるということで、昭和48年から3か年にわたり、本格的な発掘調査が実施された。 1973年から1975年にかけて,県道バイパス建設に先立ち1万2500m2の発掘調査を実施した結果,弥生時代前期から古墳時代前期に至る一大集落跡と判明した。 果実、種子、花粉分析により各時代の遺跡の変遷が明らかにされた。 出土品は三重県埋蔵文化財センターに保管されている。
遺構
遺物
弥生時代前期
- 農具 - 広鋤、狭鋤、泥除、一木鋤
- 鍬
- スコップ状木器
- 工具 - 斧直柄、加工斧膝柄
- 容器/食事具 - 鉢、高坏、槽、匙、縦杓子、横杓子
- 紡織具
- 精製品 – 堅櫛、琴形、鐸形
- 朱塗堅櫛 - 弥生前期
- 琴形木製品
- 鐸形木製品
弥生時代中期
- 広口壺
- 直口壺
- 細頚壺
- 短頚壺
- 無頚壺
弥生時代後期
- 広口壺
- 直口壺
- 短頚壺
- 長頚壺
- 内湾口縁壺
古墳時代
- 広口壺
- 瓢壺
- 小型器台
- 木製農工具 -各時代
- 甕
- 高坏
- 小型丸底壺
- 小型鉢
- えぶり
- 杓子
- 弓
弥生時代の琴
弥生時代の琴は、三重県内では津市の納所遺跡からのみ発掘されている。調査の結果、多量の弥生土器や鍬・鋤などに混ざって、ほかでは見られない扁平な板状のものが二点みつかりました。一つは長さが53センチの台形のもので、左右には三角形の孔がくり抜かれ、そのうちの二か所には樹皮が巻きついていた。弦又は弦をとめるものと考えられ、琴ではないかということになった。音楽史の専門家たちは、6本の弦を持つ琴と推定した。一枚板の台形琴としては、納所遺跡の琴のほかには類例がない。あと一点は細長い三角形の板琴で、長さは35センチ、尖端に小さな孔が一つ、その対辺には二つの突起があった。4本の弦が装着されていたと推定され、琴を奏でるときに擦った痕跡も見られる。この細長い三角形の琴は、静岡県登呂遺跡で発見された木の板が琴と判明して以後、数多くの出土例が確認された。
指定
アクセス
- 名称:納所遺跡
- 所在地:〒514-0051 三重県津市納所町
- 交 通:津駅から徒歩10分
参考文献
- 三重県埋蔵文化財センター(2012)『納所遺跡Ⅰ 遺構・土器・木製品編』 三重県埋蔵文化財センター
- 三重県教育委員会(1980)『納所遺跡 遺構と遺物』 三重県教育委員会
- 伊藤久嗣(1989)「弥生の琴と櫛」『三重県風土記』旺文社
- 「津市納所遺跡から弥生時代の琴>https」三重県、 県史あれこれ
- 大塚初重(1995)『日本古代遺跡辞典』吉川弘文館
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