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層位学2024年01月08日 00:12

層位学(そういがく、Stratigraphy)は同一の地点における遺物を包含する複数の地層の上下関係により遺物の年代を決定する方法である。「層序学」ともいう。

概要

地層が重なる順序を層序という。層位学を確立したのは地質学であり、層序には、断層による地層の逆転や攪乱がなければ、古いものが下、新しいものが上に重なるという地層累重の法則を利用する。その地層が包含する遺物の新旧が推定できるとする。それだけでは土層に含まれる遺物各個体の新旧の関係が分かるだけである。編年作業では層位が形式に優先するという考え方もあるが、いずれかだけの推定では仮説の域にとどまり、絶対年代が確定する訳ではない。 古いものが下、新しいものが上という層位学の原則が逆転する場合がある。城の台貝塚(千葉)では崖や台地の上から古い地層が落下し、下の地層が上の地層の上になっていた。さらに津雲遺跡(岡山)では、斜面の上半に古い土器(縄文後期)を含む層があり、下半に新しい層(縄文晩期)がある。 遺跡では層位の逆転が見られることがある。層位逆転を理解することは、地下構造の解釈、地質史の再構築、石油やガスの貯留層などの資源の評価に影響を与える可能性があるため、地質研究において極めて重要である。 層位逆転は複雑なプロセスであり、地域の地質学的歴史には、長期間にわたるさまざまな地殻変動の組み合わせが含まれることがある。特に造山過程で起こる褶曲は層序の逆転を引き起こす可能性がある。岩石層の褶曲中に、古い地層が若い地層の上に押し付けられ、元の層序の順序が逆転することがある。また層序逆転の一般的な原因の1つは衝上断層である。衝上断層は、岩石が圧縮力を受けて発生し、岩石の1つのブロックが押し上げられ、隣接するブロックを超える。この動きは、元の層序の順序の逆転につながり、古い岩石が若い岩石の上に重なる可能性がある。 層位学では同一の地層に含まれる遺物は同じ時代と見なすことが前提となる。モンテリウスは同じ土層に包含される複数の遺物が確実に同時代と判定する為には、同じような共伴の事例が30以上が必要であるとする。 複数の遺跡の層序の関係を明らかにするには、短期間も堆積し、広域に分布する火山灰の層が有効である。複数の遺跡の層で火山灰の層が確認できれば、火山灰層は同時期に形成した物と判定できる。すなわち火山灰編年法である。

日本の層位学

日本での層位学はスコットランド出身のイギリスの医師、考古学者、人類学者であるマンローによる神奈川三ツ沢貝塚の発掘であった。マンローは1904年に東京大学医学部のベルツと一緒に横浜の競馬場付近貝塚を発掘した。1905年に行われた三ツ沢貝塚(横浜市神奈川区)の発掘は、当時としてはきわめて大規模かつ先進的な調査であったとされている。三ツ沢貝塚の調査では縄文土器に年代差があることを初めて確認した。下層の土器は縄文後期の堀之内式土器であり、上層の土器は縄文後期の勝坂・加曽利E式土器であった。しかし、層位学による研究ではその晃洋を強調せず。さらに英文発表であったことから、日本の学会では注目を集めることはなかった。1918年と1919年の松本彦太郎(東北大学)の調査では貝浜貝塚(宮城)では、貝層を層位ごとに発掘する層位学の方法を実践し、貝層の位置関係から、土層に含まれる土器の形式・形態・文様・土器の厚さなどの変化を示した。山内清男や八幡一郎が評価し、それを継承した。

層位学の課題

  • (1)相関と年代測定 層序学の主な課題の1つとして、さまざまな土層を正確に相関させ、年代を測定することである。さまざまな地層の相対年齢を確立し、放射年代測定などの方法で絶対年齢を決定することは、包括的な地質の編年表を構築するために不可欠である。
  • (2)地殻変動と環境変化 層位学では、地層が地殻変動や時間の経過に伴う環境変化によってどのような影響を受けたかを理解する必要がある。地質学的、気候的、環境的要因の間の複雑な相互作用を解明することは困難な場合がある。
  • (3)不完全な記録 地質学的記録は、侵食、風化、その他の自然現象により不完全な場合がある。 層序記録にギャップがあれば、連続した歴史をつなぎ合わせることが困難になる可能性があり、研究者は欠落または不完全な情報に対処する必要がある。
  • (4)技術と方法論の進歩 技術が進歩するにつれて、層位学の研究に新しい方法やツールが利用できるようになる。これらの進歩を層位学に取り入れ、確立された方法との互換性を維持しながら最新のテクノロジーが適切に使用されるようにする必要がある。
  • (5)学際的な考察 層位学では多くの場合、古生物学者、化学者、地球物理学者(古地磁気)、歴史学、考古学その他の専門家との協力を伴う学際的なアプローチが必要となることがある。多様なデータと視点を統合すれば、地層史の包括的な理解を達成しなければならない。

参考文献

  1. 江藤哲人(1986)「三浦半島葉山層群の層位学的研究」
  2. 田中琢・佐原信(2011)『日本考古学事典』三省堂
  3. Belyaevski(1961)「層位学的研究の方向と課題について」Sovetskaya Geologiya、4巻10号、pp.20-31
  4. エドワード ハリス,小沢一雅訳(1995)『考古学における層位学入門』雄山閣出版
  5. モンテリウス・浜田耕作訳(1984)『考古学研究法』雄山閣
  6. 林謙作(1973)「層序区分--その現状と問題点」『物質文化』21号、物質文化研究会
  7. 麻生優(1985)「層位論」『岩波講座 日本考古学』研究の方法、岩波書店
  8. 小林達雄(1975)「層位論」『日本の旧石器文化』1、雄山閣

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