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黄幢2024年01月10日 00:05

黄幢(こうどう)は黄色い旗指物の軍旗である。

概要

「幢」は旗指物であり軍事権を象徴する旗である。魏志倭人伝によれば、倭の女王卑弥呼が派遣した難升米に魏の皇帝が授けた黄色の軍旗である。 「黄」は魏が五行思想による土徳の王朝であるため黄色を旗印としたとの説がある。 「幢」は中空の釣鐘形の布であり、漢代の画像石にみえる吹き流し状の旗と考えられている。 蛮夷の外臣に「幢」を授けた例は非常に少ないため、魏が倭国を重視していたことの現れである。

黄幢授与の趣旨

黄幢を授けたのは、狗奴国と戦う邪馬台国への支援とする説と、朝鮮半島への軍事的な支援を倭国に求めたためという説、倭の大夫を率善中郎将に任じたので、その中郎将の旗として与えたとする説とがある。なお遼陽壁画(北薗壁画墓)に黄幢とみられる旗が描かれているとの説があるが、貴人の日除けに用いる翳(さしば)に似ており、軍旗にはみえない。

後世の幢旗

『延喜式』では大極殿に向かい烏形幢、日像幢、朱雀幢・青龍幢、月像幢、白虎幢、玄武幢と合計7本の幢旗を立てるとされる。時代は下るものの院政期の儀式を描いた「文安御即位調度図」に幢旗が描かれている。高さは約「三丈」(9m)であり、旗を取り付ける中央の長い柱にそれを支える2本の短い脇柱があり、平城京の発掘結果と一致する。しかし魏の黄幢と同じとは限らない。

魏志倭人伝 原文

  • 其六年 詔賜倭難升米黄幢 付郡假授
    • (訳)正始六年(245年)、皇帝は詔して、倭の難升米に黄色の軍旗を賜い、帯方郡に付託してそれを仮に授けた。
  • 倭女王卑彌呼與狗奴國男王卑彌弓呼素 不和 遣倭載斯烏越等 詣郡 説相攻撃状   遣塞曹掾史張政等 因齎詔書黄幢 拝假難升米 為檄告喩之
    • (訳)倭女王の卑弥呼は狗奴国の男王である卑弥弓呼素と和せず、倭の載斯烏越等を帯方郡に派遣して、互いに攻撃しあう状態を説明した。皇帝は塞曹掾史の張政等を派遣した。それにより詔書と黄幢を難升米に授け、檄を告げて諭した。

参考文献

  1. 佐伯有清(2000)『魏志倭人伝を読む』吉川弘文館
  2. 大庭脩(2001)『親魏倭王』学生社
  3. 高橋賢一(1996)『旗指物』新人物往来社
  4. 大澤正吾(2019)「平城宮第一次大極殿院の幢旗遺構」奈文研ニュースNo74
  5. 斎藤忠(2003)『幢竿支柱の研究』第一書房