歩揺 ― 2025年07月05日 00:10
歩揺(ほよう)は衣服や冠に取り付けて歩行する度に揺れる視覚的効果を狙った装身具である。
概要
鴨稲荷山古墳では金銅製冠と金銅製飾履が同時に出土している。同時に亀甲文様を刻んで、歩揺などの装飾を施した半筒形の金属器2点が石棺に納められていた。 金銅製冠の魚形歩揺は冠などにもぶら下げて、「ゆらゆら揺れる」ことを目的にした仕組みとされる。宝冠に、魚形の歩揺や円形の歩揺が付けられ、帯部に菊綴飾と亀甲文の彫込金銅製飾履がつけられていた。原品は東京国立博物館と京都大学が収蔵するが、壊れやすいので展示できないとされる。復元品は高島歴史民俗資料館が展示する。 金銅製飾履は儀式のときに足が付かないほどの高い椅子に着座して履き、足をぶらぶらさせて歩揺をきらめかせたという説もある。
考察
歩揺が揺れると、金属同士があたりチャリfチャリと音が出たにちがいない。視覚効果と音響効果で威厳と荘厳さを演出したのではなかろうか。とすると王の出現と歩揺は関係があるに違いない。豪華な金銅冠や金銅製飾履を持つ被葬者は、朝鮮半島にルーツを持ち、倭国では大王やその周囲につながる人物が想定される。 馬は古墳時代に導入されたとみられるので、弥生時代に馬に取り付けた歩揺はないはずである。
出土例
- 金製歩揺 新沢千塚126号墳、奈良県橿原市、古墳時代5世紀、東京国立博物館
- 魚形歩揺 鴨稲荷山古墳出土、滋賀県高島市、古墳時代、高島歴史民俗資料館
- 銀製魚形歩揺 天王塚古墳、古墳時代・6世紀前半、和歌山県立紀伊風土記の丘
- 金銅製歩揺付飾金具 藤ノ木古墳出土、奈良県斑鳩町、古墳時代後期
参考文献
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