青田遺跡(新潟県) ― 2026年10月19日 00:05
青田遺跡(新潟県)(あおたいせき)は新潟県新発田市に所在する縄文時代の遺跡である。
1.概要
紫雲寺潟は江戸時代に干拓されるまでは水深3m、面積2,000haを有していたとされている。東西長(縦)約6km、南北長(横)約4kmの潟とされている(日本史広辞典編集委員会(2016))。 青田遺跡は、1733年(享保18年)に干拓された紫雲寺潟の底から1998年に発見された。発掘調査は1999年から2001年にかけて行われた。 当時の木材が残り掘立柱や木の実や漆製品などの有機質遺物が検出された。
2.発掘調査
新潟県教育委員会が発掘調査主体となり、財団法人新潟県埋蔵文化財調査事業団(以下、埋文事業団)に調査を委託し、1998年(平成10年)に確認調査、1999年(平成11年度)から2001年度(平成13 年度)に本発掘調査を行った。発掘調査対象面積は14,160 ㎡であり、複数層で行った調査面積は延べ48,260 ㎡である。
3.縄文時代の集落
縄文時代晩期終末の大規模な集落遺跡である。低湿地という環境条件により、当時の生活面が良好に保存されていた。木柱が残る掘立柱建物や丸木舟をはじめ、多くの木製品が出土し、河川沿いに暮らした縄文時代の人々の生活を具体的に知ることができる。 縄文時代の集落は河川の両側210mに渡り広がっていた。
4.大規模な掘立柱建物と高度な建築技術の解明
掘立柱建物58棟が検出され、このうち42棟では柱根が残存していた。大型建物の柱の材質は栗のみであった。径6cmの桁材に沿って、径2cmの横材を等間隔に並べ、それらと直交する縦桟を組み合わせていた。柱の材質は栗、クヌギ、コナラ、ヤマグワなどであった。 柱根の残存状態から、建物の柱位置、配置や柱の太さ、規模、構造を具体的に分析検討することができた。 これらを分析することで、建物の平面形や規模、柱の配置を復元し、上部構造を具体的に検討することができた。その結果、縄文時代晩期の建築構造や、低湿地における高度な建築技術を明らかにするうえで重要な成果が得られた。
さらに土坑79基、杭列2個所、埋設11基、火を焚いた後と見られる炭化物集中は269個所が検出された。貯蔵穴からはクルミが出土した。
5.簾状編み物
簾状編み物は竹笹類を樹皮でもじり網で作成されており、寸法は長さ27.3cm、幅348cmである(新潟県教育委員会(2004))簾状編物の類例は神奈川県池子遺跡(山本・谷口(1999))において認められるとされた。
6.簀子状材
簀子状材を壁体として用いた例が確認された。2004年刊行の発掘調査報告書では、奈良県纏向遺跡の例[橋詰1988]、岡山県津島遺跡の例[宮本2003]が弥生時代に属することを挙げ、青田遺跡の例をその最古例としている。
7.出土遺物(時代別整理)
- 土器は下層で鳥屋2a式土器、上層で鳥屋2b式土器、大洞式土器が出土した。
- 石器は打製石斧、磨製石斧、礫器、石錐、石匙、石鏃、石皿、磨製石斧未製品が出土した。
- 土偶は下層からのみ出土した。
- 鉄器・鍛冶関連遺物→ 弥生後期からの社会階層化が継続した可能性がある。
- 赤と黒の漆塗り水差し、装飾された木製容器が出土した。
- 赤漆塗りの糸は漆を塗って乾燥した後に結んだり、丸く糸玉にしていた。
8.年代測定
新潟県新発田市で見つかった縄文時代晩期の青田遺跡で出土した集落の建物の柱約280本に刻まれた年輪について、年単位の正確さで測定したと新潟県立歴史博物館などが2009年3月12日に発表した(嵜大真、小林謙一、坂本稔(2007)、四国新聞社(2009))。「S5 層の鳥屋 2a式古期は紀元前700年頃以降の時期 で550 年より以前までとされた。その次のS4から3層の鳥屋 2a式新期は前550年頃を含みそれより古い年代の可能性」(新潟県教育委員会(2004))があるとされた。木村勝彦(2013)はBC477年前後とBC530年前後の2回に渡り、それぞれ短期間(集中的タイミング)で10棟以上の建物が造営されたことを実年代で解明した。
年輪年代分析により、青田遺跡では紀元前530年前後と紀元前477年前後の2時期に、それぞれ10棟以上の建物が短期間に集中的に造営されたことが明らかにされた(木村勝彦 (2013))。この年代分析の結果は、放射性炭素年代測定による年代とも矛盾せず、土器型式による相対編年を実年代に結びつけ、集落形成の時間的な推移を具体的に検討するうえで重要な成果となった。
さらに現生の森林での実験を加えた詳細な花粉分析により、青田遺跡集落の数十m近傍でクリ林が存在しており、人為的な維持管理がなされていたことが解明された。
9.青田遺跡の意義
低湿地による有機質遺物の「タイムカプセル」化
- 紫雲寺潟の底(低湿地)に埋もれていたため、水分が豊富で酸素に触れないため、木製品や植物質などの有機物が腐敗せずにそのまま残っている。
大規模な掘立柱建物と高度な土木技術の確認
- 掘立柱建物58棟が検出され、そのうち42棟では柱根が残存していた。木柱の位置や太さなどを確認できたことから、建物の平面形や規模、柱の配置を具体的に復元するための重要な資料が得られた。軟弱な低湿地に建物を建てるための土台作りなど、縄文人の優れた土木技術が確認された。
- 出土したクリの木の年輪研究から、当時のクリが現代よりも非常に早いスピードで成長していることがわかり、クリの管理・栽培(または半栽培)が行われていた証拠となった。 クリ材の成長速度とクヌギ節・コナラ節材の成長速度には違いがあることが判明した。年輪年代分析により成長の速いクリは20 年ほどで柱材に使用できる太さになっている。 出土したクリ材の年輪分析では、現代のクリと比較しても速い成長が認められている。これは、縄文時代の人々がクリを単に採集するだけでなく、生育環境を人為的に管理し、栽培していた可能性を示す重要な証拠であり、縄文時代の植物資源管理を考えるうえで注目される。
新潟県内初の縄文時代丸木舟と大型の櫂(かい)の出土
- 丸木舟はトチノキ製で、長さ5.47m、幅75cm、深さ24cm(埋文にいがたNo33では深さ16cmとし、荒川隆史(2025)は深さ14.5cmとする)のものが出土した(荒川隆史(2026))。舟底外面中央に川底との接触による摩耗が確認されている(荒川隆史(2025))。櫂は6点出土した。長さ220cmのクリ製、長さ124cmの杉製などがある(荒川隆史(2026))。 荒川隆史(2025)は内水面用と海面用の丸木舟の特徴が異なることを明らかにした。 出土した丸木舟は、新潟県立歴史博物館で展示されている。 これらの資料は、縄文時代の水上交通や物資の運搬、水域の利用を考えるうえで重要である。
豊かな植物利用と生業の解明
- オニグルミの貯蔵穴とみられる川岸の土坑や、各種の木製品(弓、籠、漆製品など)が多量に出土し、川辺に暮らす縄文人の生業が見えてきた。
10.展示・保管
- 新潟県立歴史博物館(長岡市):青田遺跡で出土した木製品(丸木舟や木柱など)や縄文土器などを研究・展示する。
- 新潟県埋蔵文化財センター: 青田遺跡で出土した掘立柱建物の柱や木柱、木工品、アスファルトが付着した石鏃を保管する。
11.指定
- 2009年(平成21年)3月24日 新潟県指定有形文化財(考古資料)
- 指定名称:青田遺跡出土品
- 員数:2,076点
- 附指定:柱根8点、草壁材1点、アスファルト塊2点、赤色顔料塊1点、堅果集積土坑2基
12.所在地等
- 名称:青田遺跡
- 所在地:新潟県新発田市金塚字青田(旧:北蒲原郡加治川村大字金塚字青田)
- 交通:JR「長岡駅」からバス、発掘調査後に埋め戻されたため、現地遺跡自体は見学できない。
13. 参考文献
- 赤塚亮(2000)「青田遺跡」埋文にいがたNo33
- 荒川隆史(2014)「新発田市青田遺跡の掘立柱建物と復元図の訂正」埋文にいがたNo89
- 荒川隆史(2025)「縄文時代における丸木舟の形態と利用_ 新潟県青田遺跡を中心に」國學院大學大学院紀要巻 56,pp.83-108
- 荒川隆史(2026)「青田遺跡の調査が残したもの」講演資料(新潟県埋蔵文化財センター)
- 木村勝彦(2013)「縄文集落の集落形成と森林利用に関する考古学・年輪年代学・民俗学的研究」、科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書、pp.1-5
- 嵜大真、小林謙一、坂本稔(2007)「炭素 14年代法による新潟県青田遺跡の年代研究」名古屋大学加速器質量分析計業績報告書 18,pp.182-186
- 新潟県教育委員会(2004)「青田遺跡―日本海沿岸東北自動車道関係発掘調査報告書5」新潟県埋蔵文化財調査報告書 第133 集
- 「速報 新潟県指定文化財 青田遺跡出土品」埋文にいがたNo68,2009年
- 「丸木舟 -青田遺跡からのメッセージ-・調査中の遺跡の位置」埋文にいがたNo68,2003
- 「縄文時代における漆利用システムの検討-青田遺跡・野地遺跡の漆製品・漆用具を中心に」研究紀要第10号,2009
- 「新潟・青田遺跡、年輪測定に成功」四国新聞社、2009/3/12
- 「正保越後国絵図(元禄年間写)」原図:正保2年(1645年)頃、写本:元禄年間、新発田市立歴史図書館蔵。
- 日本史広辞典編集委員会(2016)『山川 日本史小辞典』山川出版社
- 山本・谷口(1999)『池子遺跡群9』(かながわ考古学財団調査報告 第45巻
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