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炭化物集中2025年03月21日 00:20

炭化物集中(たんかぶつしゅうちゅう)は旧石器時代、縄文時代などで数ミリ程度の細かな炭化物が集まった場所である。クッキー状炭化物、パン状炭化物、団子状炭化物、餅状炭化物などとも呼ばれる。

概要

熱をうけて炭になった遺物を炭化物という。炭化物が含まれる土を洗うと木材やクルミの殻、植物の種などが含まれていることがある。炭化物集中はクッキー状炭化物になっている場合がある。皮をむく以上の調理を行った跡である。 中野(1989) は押出遺跡で発掘されたクッキー状炭化物に対し、残留脂肪酸分析、X線解析を行い、①炭水化物(植物質食料) を主体とするクッキー型と、②タンパク質(肉)が主体のハンバーグ型に大別されることが示された。栄養分は炭水化物、脂質、タンパク質であり、ハンバーグ型はタンパク質の割合が高い。谷(1983) は曽利遺跡出土のパン状炭化物を走査電顕で観察し、エゴマ、シソが含まれていることを報告している。

出土例

  • 炭化物集中 白保竿根田原洞穴遺跡、沖縄県石垣市、旧石器時代
  • 炭化物集中 中溝遺跡、山梨県都留市、旧石器時代
  • 炭化物集中 高畠町押出遺跡、山形県東置賜郡高畠町、縄文時代

参考文献

  1. 中野益男(1989)「残留脂肪酸による古代復元」『新しい研究方法は考古学になにをもたらしたか』クパプ、pp.114-131
  2. 渡辺誠(1984)『増補 縄文時代の植物食』雄山閣出版

局部磨製石斧2025年03月20日 11:00

局部磨製石斧(きょくぶませいせきふ)は素材の石を打ち欠いた打製石斧の刃先部分のみを人手で磨いた石器である。

概要

局部磨製石斧は後期旧石器時代に登場した。旧石器時代前半期(38~29Ka)を特徴づける遺物とされる。縄文時代にも出土例がある。旧日石器時代から縄文時代にかけての移行期に現れる神子柴型の石斧(局部磨製石斧)は大型である。大平山元I遺跡、湯ノ沢遺跡では刃部端が膨らみ基部が円くなる。東京都内では下高井戸戸塚山遺跡で局部磨製石斧の出土例があり、これは武蔵野台地で最古の遺物である。縄文時代の出土例としては、大平山元遺跡、垣谷遺跡などがある。

石材

鏑川本流から約480m標高の山中にある金剛萱遺跡から出土した局部磨製石斧の石材は緑灰色の緑色岩であり,長さ136.9㎜,幅21.1㎜,厚さ32.0㎜で重量は92.6gである。岩宿遺跡の局部磨製石斧は後期旧石器時代前半期の初頭に特徴的なホルンフェルス製の石器である。

用途

用途は木の伐採説(稲田孝司・長崎潤一・佐藤宏之ら)、加工道具説、骨の打ち割り具説、皮の加工道具説(麻柄一志・春成秀爾ら)、大型動物解体具説などがある。 旧石器時代前半期は日本列島からナウマンゾウが絶滅した頃であるから、これらの旧石器時代石斧は木の伐採用ではなく,大型動物の狩猟用だったという仮説が出されている(谷和隆(1995))。

出土例

  • 局部磨製石斧 金剛萱遺跡、群馬県下仁田町、旧石器時代
  • 局部磨製石斧 宮ノ入遺跡、長野市松代町大室、旧石器時代
  • 局部磨製石斧 岩宿遺跡、群馬県みどり市、旧石器時代
  • 局部磨製石 東早淵遺跡、東京都練馬区、旧石器時代のローム層より出土
  • 局部磨製石 大平山元遺跡、青森県東津軽郡外ヶ浜町、縄文時代
  • 局部磨製石斧 垣谷遺跡、和歌山県西牟婁郡白浜町、縄文前期および晩期

参考文献

  1. 中村由克、保科裕(2016)「金剛萱遺跡の局部磨製石斧の石材とその意義」下仁田町自然史館研究報告、下仁田町自然史館研究報告編集委員会編 (1),pp.21-24
  2. 谷和隆(1995)野尻湖遺跡群と石斧、考古学ジャーナル、385,pp.22-28.

貫ノ木遺跡2025年03月17日 00:13

貫ノ木遺跡(かんのきいせき)は長野県にある後期旧石器時代から縄文時代の遺跡である。

概要

貫ノ木遺跡は野尻湖の西側約lkmの丘陵上に位置する。旧石器時代の集落と縄文時代の散布地である。標高700mから 730mの貫ノ木には野尻ローム層の露頭がある。 第3地点では環状ブロックが検出され、刃部磨製石器、ペン先形ナイフ形石器、台形石器など旧石器時代後期初頭の石器が出土した。石器組成は日向林B遺跡に類似する。後期後半では瀬戸内系石器群、杉久保形ナイフ形石器、両面調整尖頭器、有樋尖頭器などがある。

調査

最初の調査は1985年であり、旧石器時代の6つの文化層から遺物が出土した。1985年から1999年まで10地点で発掘調査が行われ、約5万点の遺物が出土した。 1991年から1992年には信濃町教育委員会によって研修所建設に伴う事前調査が行われたが、報告書は刊行されていない。1993年から1996年にかけて上信越自動車道と信濃町インターチェンジ建設に伴う発掘調査、及び、インターチェンジに接続する国道18号線野尻バイパス建設に伴う発掘調査が貫ノ木遺跡で行われ、、膨大な数の旧石器時代の遺物が出土した。 1997年(平成9年)4月18日から同年6月25日に帝石パイプライン建設に伴う発掘調査が行われ、682点の遺物が出土した。内訳は、石器604点(剥片石器596点)、礫76点、炭1点、土師器1点であった。1997年(平成9年)6月26日から同年8月26日には上信越自動車道信濃町インターチェンジヘ接続するための道路改良に伴う貫ノ木遺跡(97道路改良地点)の発掘調査が行われた。出土遺物の総点数は630点で、内訳は旧石器時代の石器433 点、礫161点、縄文土器31点、縄文時代の石器2点、珠洲焼片1点(中世)、炭1点、木片1点であった。剥片石器426点は無斑品質安山岩(An)が60%、黒曜石(Ob)が1割である。礫は161点出土した。二側縁加工のナイフ形石器を特徴にもつ石器で、石器組成はナイフ形石器、彫器、台形様石器に類似する二次加工のある剥片であった。剥離技術では打面調整はほとんどおこなわれていない。縄文時代の土坑2基は平面形と逆茂木痕から陥穴と考えられた。 縄文土器は31点出土し、押型文の山形文1点、押型文の楕円文9点、押型文の平行文 5点、撚糸文10点、縄文1点、無文5点であった。 土器の内面についていた「おこげ」と思われる炭化物の放射性炭素14年代測定を実施したところ、約15,500年前(較正年代)と推定された。

遺構

  • 環状ブロック

遺物

  • ナイフ形石器
  • ペン先形ナイフ形石器
  • 杉久保形ナイフ形石器
  • 台形石器
  • ナイフ形石器
  • 刃部磨製石器
  • 両面調整尖頭器
  • 有樋尖頭器
  • 剥片石器

指定

展示

考察

アクセス

  • 名称:貫ノ木遺跡
  • 所在地:長野県上水内郡信濃町大字野尻滝沢7
  • 交 通:

参考文献

  1. 長野県埋蔵文化財センター(2004)「貫ノ木遺跡」
  2. 信濃町教育委員会(2010)「貫ノ本遺跡・星光山荘A遺跡」

ホルンフェルス2025年03月13日 00:43

ホルンフェルス(ほるんふぇるす)は頁岩や砂岩がマグマの熱を受けて変成が生じた変成岩である。旧石器時代の石材として用いられた。

概要

大きな剥片を得やすく、硬くて緻密な岩石であるため、大型のナイフ形石器や剥片尖頭器などに使われた。産地は須佐ホルンフェルス(山口県萩市須佐高山)、菫青石ホルンフェルス(京都府京都市大文字山)、群馬県みどり市、薭田野の菫青石仮晶(京都府亀岡市)、神奈川県産ホルンフェルスなどが知られる。神奈川県産ホルンフェルスは足柄上郡山北町中川ザレの沢付近から檜洞丸、丹沢山、鍋割山にかけての丹沢山地稜線部でみつかる。丹沢山地のものは、黒から深緑色で、岩の貫入にともなう熱により丹沢層群中の火山砕屑岩が変成したものである。

出土例

  • ホルンフェルス 井出丸山遺跡、静岡県沼津市、旧石器時代
  • ホルンフェルス 吉岡遺跡群、旧石器時代、旧石器時代

参考文献

  1. 八ケ岳旧石器研究グループ(2003)「シンポジウム日本の細石刃文化」

細石刃2025年03月09日 01:08

細石刃(さいせきじん)は極小の石刃で細石器の一種である。

概要

旧石器時代後期を代表する石器である。幅は1cm以下で、長さが幅の2倍以上の縦長剥片をもつ石刃である。長さ1cmから数cm、幅は数mmから1cm、厚さは1mmから2mm前後である。 細石刃の素材には黒曜石が使われた。長いものや湾曲のある石材は折り取って使用されることが多い。 ナイフ形石器と比べて使いやすく耐久性がある道具であった。当時の人々が効率よく狩りをできるかは死活問題であり、道具の改良はそのまま生活の安定につながった。

用途

骨、木、角、牙などで作られた軸の先端部に溝を彫り、数個の細石刃を溝にはめて取り付けて槍として使用したものである。槍が破損したり、刃こぼれした際には、別の刃に取り替えて使う。

範囲

  • 東アジア、シベリア、アラスカなどに広く展開する。

出土例

  • 細石刃 堂ヶ谷戸遺跡、東京都世田谷区、堂ヶ谷戸遺跡
  • 細石刃 矢出川遺跡、長野県南佐久郡南牧村、後期旧石器時代後半期
  • 細石刃 加治屋園遺跡、鹿児島市川上町加治屋園、旧石器時代

参考文献

吉岡遺跡群2025年03月08日 00:20

吉岡遺跡群(よしおかいせきぐん)は神奈川県綾瀬市にある旧石器時代の遺跡である。

概要

後期旧石器時代から縄文時代にかけての多文化層遺跡である。吉岡遺跡では石器集中が、2~3ヶ所の密集部から構成されている。吉岡の石器集中は径約10mの広がりが見られ、石器に用いられた石材の種類は硬質細粒凝灰岩が多く、ホルンフェルス、珪質岩などである。地元での採取が比較的困難なチャート、珪質頁岩や遠方から採取された碧玉(黄玉石)・硬質頁岩・黒曜石も見られる。

接合

吉岡遺跡の23,000年前に遡る地層から出土した石器が藤沢市の用田鳥居前遺跡から出土した石器と接合した。遺跡間の石器接合は両遺跡間の距離が約2kmに及ぶが、当時の人々の移動生活の様子が分かる貴重な資料である。高座丘陵西端の目久尻川左岸で発見されました。石器がまとまって出土した標高は、吉岡遺跡群B区で約36m、用田鳥居前遺跡で約24mである。石器の接合は全ての石材で確認されている。

調査

遺構

  • 石器集中
  • 礫群

遺物

  • 打製石斧、
  • 局部磨製石斧
  • 槍先形尖頭器 - 大型

指定

  • 平成16年2月10日 神奈川県指定重要文化財

展示

考察

アクセス

  • 名称:吉岡遺跡群
  • 所在地:神奈川県綾瀬市吉岡887/神奈川県綾瀬市吉岡字蟹ケ谷843
  • 交 通:

参考文献

  1. かながわ考古学財団(1999)『かながわ考古学財団調査報告49:吉岡遺跡群』かながわ考古学財団

彫器2025年03月07日 00:26

彫器(ちょうき)は狩りに使う槍などを作るための石器製の工具をいう。 「彫刻刀形石器」「彫刻刀」ともいう。

概要

旧石器時代後期から中石器時代に使われた石器である。石器の縁辺または末端に樋状剥離(ひじょうはくり)が見られるものをいう。カミソリの刃のような石刃で、木や骨を削る道具である。彫器に使われる石材は頁岩である。彫器の認定は研究者により分かれる場合がある。 当時の「(石)槍」は骨や角で作られた槍先の側面に溝を彫り、石器を埋め込む植刃槍である。彫器は槍の先端をとがらせたり、柄の部分を加工するために使用する。

再生利用

刃先が使用により鈍くなると、刃先を更新し繰り返し使用した。なまった刃の部分を薄くはぐと、新たにエッジの鋭い刃として再生できる。

分類

彫器には神山型彫器や荒屋型彫器がある。

  1. 彫刀面と彫刀面打面の形状の違いによる分類
  2. 形態による大別分類
  3. 素材石刃および加工部位による細分

出土例

  • 彫器 荒屋遺跡、新潟県長岡市、旧石器時代(後期)・前16000年、東京国立博物館
  • 彫器 神山遺跡、新潟県津南町 、旧石器時代(後期)・前24000年、東京国立博物館

参考文献

  1. 八ケ岳旧石器研究グループ(2003)「シンポジウム日本の細石刃文化」