ニサンザイ古墳 ― 2023年05月24日 23:56
ニサンザイ古墳(にさんざいこふん)は大阪府堺市に所在する前方後円墳である。 世界文化遺産 百舌鳥・古市古墳群(古代日本の墳墓群) の構成資産の一部として登録されている。反正天皇陵とする民間伝承もある。 「土師ニサンザイ古墳」ともいう。
概要
墳丘は陵墓参考地として宮内庁が管理する。周濠部分は大阪府堺市が管理する。ニサンザイ古墳は百舌鳥古墳群の中の東南部端に位置する。 前方部を西に向けた墳丘長290メートルの大型前方後円墳である。墳丘は水の浸食で崩されており、築造時の規模は300mを超す可能性があるとされる。 両端のくびれ部に造出しがある。堤の上から全景が見える古墳は渋谷向山古墳・河内大塚山古墳など少数である。現在は一重の盾形周濠がめぐっているが、1976年(昭和51年)の周囲の発掘調査で外濠はもともと二重になっていたことが判明した。円筒埴輪は円筒Ⅳ式である。葺石がある。
調査
宮内庁の調査では、墳丘最下段で築造時に並べられた円筒埴輪などが出土した。築造年代が古墳群の巨大古墳では最も新しい。平成24年に行った濠の調査で、濠にかけられた木橋の一部が見つかり、古墳の外構施設や葬送祭祀を考える上で大変重要な発見となった。後円部の斜面から堀の堤にかけて最大7列に等間隔で並ぶ柱穴29個が見つかっている。古墳築造時か完成直後に架けられ、短期間で撤去されたと見られている。
1975年調査
前方部北部の発掘調査は1箇所だけであった。
2012年から2015年の調査
堺市では、2012年(平成24年)から2015年(平成27年)まで内濠の墳丘側を中心にして発掘調査を行った。2012年(平成24年)は宮内庁と同時に調査を実施した。 墳丘裾が波浪による浸食によりえぐられる状態となっているため、護岸整備工事を行うため、工法を決定するために4次にわたり、宮内庁と堺市により墳丘と内濠で同時調査が行われた。2012年11月30日、宮内庁は発掘現場を15学協会代表39名に公開した。また12月1日と2日に一般公開された。ただし墳丘には上がらず、濠の中に設置された通路から後円部を半周するだけであった。トレンチは第一段テラスと造り出しに19か所で行われた。すべての地点で円筒埴輪列が確認された。造り出し部からは須恵器の大甕が据えられた状態で出土した。調査の結果、次のことが判明した。
- 墳長は300.3mであることが判明した。
- 築造時期は5世紀中葉。
- 墳丘第一斜面の葺石は敷かれていないか、または極めてまばらである。
- 内濠内から、埴輪の外、蓋形の立ち飾り、翳(さしば)形木製品、笠形木製品、鋤、槽など多くの木製品がみつかった。木製品を使った祭祀が行われていた。
- 内濠で7列の列柱がみつかり、内濠に木橋が架けられていたことが判明した。堺市が平成25年2月21日に発表した。木橋は古墳の中軸線上にあり、推定幅12m、長さ55mに達する。濠底からの高さは堤側で約5m、墳丘側で約6mになる。短期間で意図的に撤去されている。古墳内の葬送儀礼で使用され、舞台装置として使われたとみられる。なお「被葬者の棺を運ぶために造られた橋との意見もある。儀礼修了後に撤去された。古墳時代の木橋としては当時において国内最大であった。多くの柱穴は柱が抜き取られていると考えられる事、柱意外に橋の部材が見つからないことから、架橋後は短期間で撤去されたものと考えられる。橋の材質はクヌギ材(直径約20センチ)又はアベマキである。底部には鋭利な刃物で切断された痕跡がある。
世界文化遺産登録
令和元年7月、「百舌鳥・古市古墳群(大阪府)」として、ユネスコの世界文化遺産に登録された。
規模
- 形状 前方後円墳
- 墳長 290m
- 後円部 径156m 高24.6m
- 前方部 幅226m 高22.3m
- 外表施設 円筒埴輪 円筒Ⅳ式
- 葺石 あり
遺構
遺物
- 円筒埴輪
- 形象埴輪 - 鶏、水鳥、馬
- 木製品 - 笠形木製品、立ち飾り
- 須恵器
被葬者
- 被葬者は不明であるが、百舌鳥古墳群の中では最後の大王墓と考えられている。百舌鳥古墳群の中では最も新しく位置付けられており、同時期の古墳としては最大規模である。
築造時期
- 5世紀中葉
アクセス等
- 名称:ニサンザイ古墳
- 形式:前方後円墳
- 入場料: 前方部側の御陵山公園と濠沿いの周遊路から見学できる。
- 所在地:〒591-8033 大阪府堺市北区百舌鳥西之町3-420
- 交通: 南海高野線「中百舌鳥駅」下車/ JR阪和線「百舌鳥駅」より徒歩5分
参考文献
- 大塚初重(2019)『巨大古墳の歩き方』宝島社
- 久世仁士(2014)「百舌鳥古墳群を歩く」創元社
- 文化庁(2020)『発掘された日本列島2020』共同通信社
- 「ニサンザイ古墳(堺市) 1500年前の木製品 朽ちずに出土」東京新聞, 2020年7月8日
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