鼉龍鏡 ― 2024年06月12日 00:10

鼉龍鏡(だりゅうきょう)は中国製の画文帯環状乳神獣鏡をまね、棒状の巨を口にくわえ後ろに反り返る姿勢を取る胴長の獣とその上に乗る神像を合体して一つの頭部とした図像をもつ4世紀の仿製鏡である。
概要
神像と蟠龍が頭を共有しているのが特徴である。幡龍とも見られる首の長い獣と神像を組み合わせて半肉掘で表す。大型品は内区外周に半円方形帯を巡らし、外区に画文帯や菱雲文帯を巡らせる。中型は内区の主文様が簡略化される傾向がある。柳井茶臼山古墳出土のものは外区に菱形と雲を組み合せた菱雲文を配す。画文帯神獣鏡を模したものという見解がある。中国鏡に彫られる世界観を理解していないため、神像と獣像の表現が崩れ、神獣と獣像が融合してしまった。
出土範囲
古墳時代前半期の西日本に現れる。比較的に大形鏡が多い。富雄丸山古墳の鼉龍鏡は特に大形である。富雄丸山古墳の国産の鼉龍鏡2枚を配置しており、鼉龍文盾形銅鏡と名付けられている。
中国文献の鼉龍
鼉龍は『山海経』などに記述される、川や湖に棲んでいると考えられている怪物を表している。 後漢『説文解字』によれば、「水蟲なり。蜥蜴に似たり。長さ丈ばかり」と書かれる。鼉龍鏡の図像とは関係がない。 『陸璣雲』には、蜥蜴に似たて、長さ丈ばかりその甲は鎧のごとし、皮は固く厚い(鼉似蜥蜴,長丈餘,其甲如鎧,皮堅厚,可冒鼓)。また「鼉龍」は揚子江鰐の別称とする。
出土例
- 鼉龍鏡 - 富雄丸山古墳、奈良県奈良市、古墳時代
- 鼉龍鏡 - 出土地不明、古墳時代、東京国立博物館、
- 鼉龍鏡 - 柳井茶臼山古墳、山口県柳井市、古墳時代・4世紀
- 半円方形帯四乳鼉龍鏡 - 北和城南古墳出土、奈良県北部、古墳時代 4世紀
- 鼉龍鏡 - 石奈坂1号墳、千葉県市原市、古墳時代中期
- ?龍鏡(変形神獣鏡) - 大塚陵墓参考地、奈良県北葛城郡広陵町、古墳時代、宮内庁
参考文献
- 田中琢・佐原信(2011)『日本考古学事典』三省堂
- 車崎正彦(1993)「鼉龍鏡考」『翔古論聚』久保哲三先生追悼論文集刊行会、真陽社
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://ancient-history.asablo.jp/blog/2024/01/04/9648382/tb
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。