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年輪年代法2023年05月27日 00:08

年輪年代法(ねんりんねんだいほう,Dendrochronology)は木材の年代を決定する方法である。

概要

木の年代をはかるための自然科学的な方法である。木材の年輪は、年単位の季節変動をあらわしている。十分な水分と長い成長期では広い輪をもたらすが、干ばつの年では非常に狭い輪となる。樹種、樹齢、立地、気象、結実、病害虫などの影響により年ごとの成長は影響を受ける。しかし檜と杉の様に樹種が異なっても、生育環境が同じ場所では類似する成長パターンを示すことが判明している。 樹木の年輪幅の広さ狭さを手掛かりにして、木材の伐採年代や枯死年代を誤差なくして、暦年で正確に決めることが出来る方法である。木が枯死した正確な年代を得るには、端までの完全な年輪サンプルが必要である。放射性炭素年代を校正するための検証としても使われる。

使われ方

欧米を中心として世界40ヵ国以上で考古学、美術、地理学、などで使われる。20世紀初頭にアメリカで開発された。アメリカの天文学者E.ダグラスが創始し、アリゾナ大学にツリーリング研究所を設立した。

日本での研究

奈良文化財研究所は1980年から実用化研究を開始した。3年間の基礎研究の結果、檜、杉、コウヤマキなどの年輪は年輪年代法に適していることが判明した。現在では針葉樹10種類、広葉樹2種類(ブナ、ミズナラ)の総数14種類が使えることが判明している。

標準年輪曲線(暦年標準パターン)

日本では暦年標準パターンが大分県から青森県まで各種の年代測定で多くの成果を上げている。 長期の暦年標準パターンを作成するためには、伐採年の判明している多数の現生木試料から樹木の年輪幅を10ミクロン単位で読み取り(年輪データ)収集し、総平均する。これにより個体差が消去される。次に古建築部材や遺跡出土材を多数収集し、計測して年輪パターンを得る。この年輪パターンとすでに作成した暦年標準パターンとを順次照合していく。そして重複した位置でつなげていくと、長期に渡る暦年標準パターンを作成できる。

測定対象試料

  • 長期の暦年標準パターンが作成されている樹種に限られる。
    • 現時点では檜、杉、コウヤマキ、ヒバの4種類に限られる。
  • 試料は約100層以上の年輪が必要である。
  • 試料には樹芯が含まれない方がよい。
  • 極端に年輪幅(0.2mm前後)で推移しているものは、年輪パターンの照合が成立しにくい。
  • 同心円状に形成された年輪ではなく、不特定の方向に広い年輪や狭い年輪は年輪パターンの照合が成立しにくい。

参考文献

  1. 独立行政法人 国立文化財機構 奈良文化財研究所(2015)『遺跡の年代を測るものさしと奈文研』クバプロ
  2. 埋蔵文化財研究会(2003)「考古学と暦年代」ミネルヴァ書房