螺鈿 ― 2023年11月15日 16:16
螺鈿(らでん,mother-of-pearl inlay)は貝殻を研磨し、文様の形に切ったものを漆地や木地にはめ込んだり、貼り付けたりする装飾方法である。「螺」は巻き貝の意味で、「鈿」はかざるという意味が含まれる。
概要
貝殻の内側の真珠層という光沢を帯びた虹色の部分を文様にして切り出し、漆地や木地などに彫刻した面にはめ込む技法である。螺鈿には厚貝と薄貝とがある。厚貝は乳白色を基調とした真珠光沢の色調であるが、薄貝は膜層により青から赤までの変化がみられる。螺鈿では夜光貝などの美しい貝を使い、宝石のような美しさを出す。
技法
蒔貝法、割貝法、薄貝法、厚貝法、裏彩色など様々な技法がある。
- 埋込み式
- 押込み式
- 堀込み式
螺鈿材料
主として「夜光貝」「アワビ貝」「蝶貝」を使う、そのほか白蝶貝・黒蝶貝・珊瑚・象牙・玳瑁・金・銀・宝石類が使われる。貝の厚みは、厚貝は0.4mm~1mm 薄貝は0.09mm~0.3mmである。
- 夜光貝(沖縄方面)
- あわび貝(日本)
- 白蝶貝(アラフラ海、南洋方面)
- 黒蝶貝(アラフラ海、南洋方面)
- 珊瑚
- たいまい(海産の亀)
- 象牙
伝来
日本には9世紀ごろにつたわり、奈良時代・平安時代以降盛んに使用された。
螺鈿の使用例
- 紅牙撥縷撥 - 正倉院
- 螺鈿紫檀五絃琵琶 - 正倉院
- 八橋蒔絵螺鈿硯箱 - 江戸時代 18世紀
木画 ― 2023年11月15日 16:35
木画(もくが,Mokuga)とは、紫檀、黒檀、桑、花柳などの木地に色の異なる木、竹、牙などの細片を寄木細工風に組み合わせて象嵌し文様を描く技法である。
概要
木画技法は古代エジプトやササン朝ペルシャのモザイク技術が中国に伝えられ、隋から唐代にかけて発達した。その技法が日本に伝来したと考えられる。日本では奈良時代に盛んに用いられた木工技法である。
作例
- 木画経箱 - 国宝、東京国立博物館
- 木画紫檀碁局 - 正倉院
- 木画紫檀双六局 - 正倉院
- 紫檀木画挟軾 - 正倉院
- 紫檀木画箱 第17号 - 正倉院
- 桑木木画碁局 - 正倉院
- 紫檀木画槽琵琶 - 正倉院
花鳥文 ― 2023年11月15日 17:31
花鳥文(かちょうもん)とは、草花と鳥類を組み合わせた文様である。
概要
仏教の興隆とともに中国唐代で完成した。宝相華と鳳凰、梅と鶯、松と鶴、牡丹と孔雀、竹と雀、春草と雉子などの例が見られる。花や鳥の名前がはっきりわからない場合に花鳥文という説がある。
作例
- 平螺鈿背八角鏡 - 正倉院
- 玳瑁螺鈿八角箱 - 正倉院
- 鳥毛篆書屏風 - 正倉院
トルコ石 ― 2023年11月15日 18:16
トルコ石(とるこいし)は、グリーンまたは明るいブルーの不透明な鉱物である。
概要
世界で最古の宝石のひとつといわれ、古代から危険から体や心の健康を守ると信じられており、邪気や魔除けとして使われた。フランス語の「ピエール・トルキュース」、即ち「トルコの石」に由来する。13世紀が起源の名称である。
化学的にはリン酸塩鉱物である。自然界においてはターコイズに含まれる銅の成分によってターコイズブルーが発色する。ターコイズブルーとターコイズグリーンの2種類がある。 硬度は比較的低く(モース硬度は5 - 6)、加工が容易であるため、古来より彫刻としても広く用いられる。*産地 トルコ石の最も重要な産地はイランのネイシャプル鉱山である。高品質の石を産出する。 ネイシャプル鉱山を除き、ほとんどすべてのトルコ石は、採れた時の美しいブルーが、1年も経たないうちに白く変色する。イランのニシャプール地区で産出するトルコ石(ターコイズ)は、バナジウムや鉄がほぼ含まれないロビンエッグブルーの最高品質で、耐久性があり変色に強い。トルコ石と成分がよく似た鉱物に、擬トルコ石と言われるセルレアイトがある。 イラン・アメリカ・中国・メキシコ。
名称
主産地であるイランやシナイ半島からトルコ経由で地中海を経てフランスに持込まれたことで、“トルコ石”と名がついたが、トルコでは産出されない。
作例
- 平螺鈿背円鏡平螺鈿背八角鏡- 正倉院、トルコ石使用
- 玳瑁螺鈿八角箱 - 正倉院、トルコ石使
- 平螺鈿背円鏡 - 正倉院、トルコ石使
- アイコンアート - メキシコ(アステカ)芸術、15-16世紀、大英博物館
ヤコウガイ ― 2023年11月15日 18:27
ヤコウガイ(やこうがい, Great Green Turban)はリュウテン属サザエ科に分類される大型の巻貝である。漢字では夜光貝と書かれるが、夜に光ることはない。
概要
貝殻に厚い真珠層があるため螺鈿の材料として使われる。殻高15cm、殻径20cmほどでサザエ類の中では最大の巻貝である。貝殻の内面は美しい真珠光沢に覆われる。 正倉院の宝物の螺鈿はほとんどがヤコウガイの貝殻で作られている。浅い海の岩礁に生息する貝である。
分布
種子島、屋久島、沖縄、台湾、海南島、フィリピン諸島、パラオ諸島、北部オーストラリア沿岸熱帯海域に分布し、水深30m以浅、5m~20mの比較的浅いサンゴ礁斜面に生息する。海藻類などを食べて生息する。日本では奄美諸島以南の水深4~20mに生息する。殻径20㎝、重さ2.5㎏に達し、サザエの仲間では世界最大。岩礁、サンゴ礁など岩に付着する海藻、珪藻などを餌とする。 海外においてはインド太平洋区の熱帯海域に生息する。
利用
『枕草子』に、貴族たちが宴会でヤコウガイを杯として利用している場面がある。 ヤコウガイ製の匙は韓国の旧「伽耶」地域の池山洞古墳群44号墳から出土した。
正倉院
- 貝玦 - ヤコウガイの貝殻を切り抜いて磨き、薄く作った装飾品。
- 貝環 - ヤコウガイの殻を切り抜いて磨いた飾り具。
- 平螺鈿背八角鏡
- 平螺鈿背円鏡
- 螺鈿紫檀阮咸 - 胴部の螺鈿のヤコウガイの殻を使用する。
- 桑木木画碁局 - 内側にヤコウガイを使用する。
- 螺鈿紫檀阮咸 - 胴部背面に使用する。
紫檀 ― 2023年11月15日 18:41
紫檀(したん)はマメ科の常緑高木である。別名ローズウッドともいう。
概要
暗紫紅色を呈し、材は緻密で重厚である。耐朽性、耐磨耗性が非常に高い。唐木三大銘木と称される。仏壇、床柱の最高級品である。黒紫色のしま模様があり、辺材は白色とハッキリと色が分かれる。 非常に硬い木材で木理が交錯し、乾燥および加工性は劣るが、加工後は肌触りの良い美しい仕上がりが得られる、磨くと光沢がでる。正倉院宝物では器物の本体部に使用される。虫や菌に侵され難く、腐食しにくい為、耐朽性に優れる。 心材は赤紫褐色から紫がかった暗褐色である。肌目はやや粗、木理は交錯する。 木質は緻密で、磨くと非常に美しい光沢が出る。
用途
高級家具材、指物、唐木細工、ツキ板、箸、椀、皿、仏壇、仏具など。
産地
ビルマ、カンボジア、ラオス、タイ、マレーシア、インド・東南アジア産。 台湾や沖縄県にも産す。 原産地は東南アジアである。ブラジル産のブラジリアンローズウッドは、資源保護のため、ワシントン条約によって天然木の取引が制限される。
作例
- 螺鈿紫檀阮咸 - 正倉院 胴部の前面以外は紫檀である。
- 螺鈿紫檀五弦琵琶
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