土坑墓 ― 2024年05月08日 15:31
土坑墓(どこうぼ)は土を掘り棺を使用せず遺体を埋めた墓である。土壙墓ともいう。
概要
地面に穴を掘り、石室などの設備は何もない墓である。古代では世界で最も一般的な墓である。「壙」は「墓穴」の意で一般には「土坑(土壙)」という。 木棺など腐朽しやすい有機質の棺が坑内に置かれるため、のちに棺の痕跡を残していないものも「土坑墓」(土壙墓)と呼ばれる。形状は細長い長方形、楕円形で竪穴状が多く、床面は平坦なものが多い。床面は船底形のものもある。壁はほぼ垂直である。深さは土地の状態によるが、50cmから60cmが普通である。
字義
以前は「土坑」を「土壙」と書いていた。「土壙」の「壙」の字は穴という意味だけではなく、墓の意味がある。しかし掘り出された「土坑」のすべてが墓とは限らなないため、この字を使用するのは問題があるとされ、「坑」の字をあてるようになった。「坑」の字は、穴や土をまっすぐに掘った大きな穴を意味する語句のため、お墓以外の性格を持つ掘り込みに使用しても問題はない。
使用時期
縄文時代、弥生時代などにみられる。弥生時代に発達し、周囲に溝を掘った方形周溝土壙墓と呼ばれるものもある。伸展して埋葬するのが普通である。
出土例
- 土壙墓 小牧野遺跡、青森市野沢字沢部、縄文時代後期前半
- 円形、楕円形のもの、石を立てたもの、フラスコ状の貯蔵穴を再利用したものなどさまざまである。
- 日本の土壌は酸性度が高いことから骨は分解され残っていない
- 土壙墓 赤柴遺跡、福島県相馬郡新地町、縄文時代早期後葉
- 土坑墓 - 鏡西谷遺跡、広島県東広島市鏡、弥生時代
- 長さ約2m、幅 1.5mの規模
参考文献
- 小田富士雄(1990)「西日本の弥生時代土壙墓」『古文化談叢』23
- 今治市教育委員会編(2016)『矢田蛇池土壙墓・馬越宮之下遺跡・佐方霜の下遺跡』今治市埋蔵文化財調査報告書;第134集
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