昼飯大塚古墳 ― 2025年01月18日 00:41
昼飯大塚古墳(ひるいおおつかこふん)は古墳時代前期の前方後円墳である。 日本百名墳に選出されている。
概要
昼飯大塚古墳は金生山から舌状に南へ緩やかにのびる更新世段丘上に立地する。東海地方の中で最大級の前方後円墳で、墳丘の構造や埴輪の特徴、副葬品などは畿内の大王墓に匹敵する規模である。
調査
明治10年代に後円部の石室が盗掘され、鏡や銅鏃・巴形銅器,多数の玉類などが出土したと伝えられるが,ほとんどが所在不明となっている。 昭和55年、名古屋大学により初めての発掘調査の後,平成6から平成11年度に大垣市教育委員会が範囲確認調査を継続実施し,古墳の概要が判明した。盗掘坑から滑石製・碧玉製の石釧,坩形・刀子形・斧形・合子形の滑石製模造品,臼玉・勾玉・算盤玉・棗玉など2000点を超える滑石製玉類,鉄器残欠などが採集されている。北棺の石室内は未調査である。盗掘坑埋土および石室内流土から、盗掘時に攪乱された遺物の一部が出土した。3段目斜面基底石付近で土層が変化している。2段目平坦面までを成形して後円部全体を水平にならしたのちに3段目斜面を成形したと考えられる。土の違いから想定される木棺の大きさは長さ5.2m以上、幅55~60 ㎝と推定される。埴輪は1500本が並べられていた。
同一古墳に3つの埋葬形態
後円部の頂上に竪穴式石室、粘土槨、木棺直葬という3つの埋葬形態が存在する。異なる埋葬方法が同じ墓壙内に混在している特徴的な埋葬施設が確認された。同一墓壙内に三棺を埋葬する事例は、三重県石山古墳、兵庫県行者塚古墳、大阪府心合寺山古墳、滋賀県熊野本19 号墳の4例がこれまでに確認されている。昼飯大塚古墳は5例目である。
規模
- 形状 前方後円墳
- 築成 前方部:3段、後円部:3段
- 墳長 150m
- 後円部 径径96m 高13m
- 前方部 幅82m 長54m 高8m
- 円筒埴輪 円筒Ⅱ~Ⅲ式・朝顔形
- 葺石 あり
埴輪
後円部頂
- 円筒埴輪
- 朝顔形埴輪
- 楕円筒埴輪
- 鰭付円筒埴輪73
- 形象埴輪:家形埴輪7以上
- 蓋形埴輪6以上
- 盾形埴輪5以上
- 靫形埴輪片15 甲冑形埴輪片1
- 不明形象埴輪片9
後円部
- 円筒埴輪3(原位置を保つもの)
- 円筒埴輪片4個体以上
- 朝顔形埴輪片1
- 家形埴輪片9以上
- 蓋形埴輪片2
- 不明形象埴輪片1
遺構
室・槨
- 竪穴式石室、粘土槨、木棺直葬
遺物
- 土器(土師器)
- 二重口縁壺片3
- 小型丸底壺片78(うち円筒埴輪内部から3個体分)
- 直口壺片1
- 柳ヶ坪型壺片1
- 壺片1
- 高坏片670(うち円筒埴輪内部から3個体分)
- 〔土 製 品〕
- 食物形土製品16以上
- 笊形土器片約80(10個体分以上)
- 〔玉 類〕
- 管玉12
- ガラス玉14
- 算盤玉6
- 勾玉47
- 棗玉2
- 臼玉101
- 丸玉1
- 〔石 製 品〕
- 刀子形石製品片2
- 〔鉄 製 品〕
- 刀子片3
- 不明鉄製品片1
副葬品
- 玉 類:
- 管玉43
- ガラス玉324
- 勾玉187
- 算盤玉70 水晶製
- 棗玉153
- 臼玉3453
- 石製品:
- 緑色凝灰岩製石釧片1
- 滑石製石釧片3
- 刀子形石製品片11
- 斧形石製品片5以上
- 坩形石製品片1
- 不明石製品片3以上
- 鉄製品
- 鉄柄付刀子片1
- 鉇片2
- 針状鉄製品片37
- 剣片1
- 不明鉄製品片4
- 〔西棺〕「墓壙内西部出土鉄製品群」とされていた遺物群は、第8次調査の際に西棺にともなう副葬品と判明した。
- 石製品
- 鎌形石製品1
- 鉄製品:
- 刀15
- 剣5
- 柄付横斧1
- 柄付縦斧1
- 有袋斧4
- 刀子12
- 蕨手刀子5
- 鎌1
- 【農工具等】
- ①針
- ④直刃鎌・刀子・蕨手刀子・有袋鉄斧・鉄柄付手斧
- 【その他】
- ③笊形土器・土製品
築造時期
- 古墳時代前期末頃 4世紀末
被葬者
展示
- 大垣市歴史民俗資料館
指定
- 2000年9月6日 国史跡指定
- 2014年3月18日 追加指定
アクセス等
- 名称:昼飯大塚古墳
- 所在地:〒503-2216 岐阜県大垣市昼飯町
- 交通:美濃赤坂駅 徒歩 10分
参考文献
- 岐阜県大垣市教育委員会(2005)「史跡 昼飯大塚古墳 第9次調査 現地説明会資料」
- 岐阜県大垣市教育委員会(2004)「史跡 昼飯大塚古墳 第8次調査 現地説明会資料」
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