兵庫鎖 ― 2023年12月14日 01:05
兵庫鎖(ひょうごくさり、Loop in Loop Chain)は楕円形の金属の輪を二つ折りにして、連ねた鎖である。
概要
輪の中に輪を通して作る鎖である。大陸で発達し、日本へは金製の兵庫鎖がつく頸飾りが4世紀に持ち込まれた。 金製の兵庫鎖の耳飾りは5世紀から6世紀にもたらされた。5世紀には鉄製の兵庫鎖のつく馬具を導入し、6世紀に普及する。 平安時代の馬具では、鎖を相互に固定する。 宇野愼敏(1999)は垂飾付耳飾の兵庫鎖をA種とB種に分けた。 初期垂飾付耳飾の分布などから、畿内政権による官営的工房で生産されたものが、地方豪族や首長層に下賜されたものと指摘する。 江田船山古墳出土の金製耳飾は兵庫鎖を介して空球と宝珠形・円錐形の垂飾を連結する。
用途
作例
- 金製垂飾付耳飾 - 新沢千塚126号墳出土、奈良県橿原市川西町、古墳時代
- 漆胡瓶 - 正倉院、銀製兵庫鎖がつく
- 鉄地黒漆塗壺鐙 - 五反島遺跡、平安時代前期の壺鐙に兵庫鎖が付属し、外面に黒漆を塗布する
- 兵庫鎖付素環轡 - 飛山4号横穴、大分県大分市
- 金製耳飾 - 江田船山古墳出土、熊本県和水町、古墳時代
参考文献
- 宇野愼敏(1999)「初期垂飾付耳飾の製作技法とその系譜」『日本考古学』第7号、pp.43-57
東名遺跡 ― 2023年12月14日 10:12
東名遺跡(ひがしみょういせき)は佐賀県佐賀市にある縄文時代早期の遺跡である。 国内最古の湿地性貝塚である、
概要
佐賀市中心部から北約4キロにある縄文時代早期末の遺跡である。 縄文時代早期末葉(約7000年前)で縄文海進の影響で、当時の海岸近くで生活を始めた。 標高3メートル以下の微高地で集石炉・墓地を主体とする集落域と標高0メートル以下の谷部に形成されたドングリ貯蔵穴を伴う貝塚から構成されている。 当時の日本列島は、温暖化により海水面が上昇しており(縄文海進)約6000年前にピークに達した。その後、遺跡全体は埋没し、厚い粘土層で覆われた。遺跡全体が厚い粘土層に覆われたことなど良好な保存条件に恵まれたため、国内最古級の様々な遺構・遺物が良好に残存している。 居住域・墓地・貝塚・貯蔵穴がセットで残されており、縄文時代のムラ全体の様子が良くわかる国内事例である。当時の食生活を中心とした生活様式や文化を鮮明に知ることができる。日本の生活文化の源流を考える上で極めて重要な遺跡である。 南北500m以上と広域に及ぶ国内最大級の貝塚群であり、6ケ所の貝層の総面積は約1,700㎡を超える。貝塚としては九州最古級で、縄文貝塚の空白地帯である有明海最奥部の佐賀平野で発見された。 炭素年代測定の結果から、7950年前から7400年前までの短めのい期間にいとまなれた遺跡と判明した。
発掘調査
巨勢川調整池の標高-0.5mから-2.5mまでの約5.5mから7.5m堀り込む過程で、標高3m付近、約2m程度堀り進んだ地点で縄文時代早期の集落跡や墓地が発見され、平成5年度から平成8年度にかけて発掘調査を実施した。約5m程度堀り進んだ標高0.5m地点で、縄文時代早期の貝塚が平成15年5月に発見され、平成16年9月より本格的に調査した。貝塚は全部で6箇所発見されており、貝層の面積は、約1,700m2に及ぶと想定されている。日本の土壌は、酸性土壌であり、酸化し劣化してしまうため木製品等の有機物は残りにくい土壌環境です。このような土壌環境のため、木製品や網籠が良好な形で残っていることが、全国的にも珍しい。国内最古の木製櫛をはじめとする日本最大級の木製品は、貴重な出土品である。
日本最古の編み籠
木製の網かごは日本最古で、731個(縄文時代の網かご全部の約60%)の量、10種類以上の編み方(縄文時代の網かごの編み方のすべてを網羅)という縄文時代の質の高さがうかがえる。網代編が最も多くみつかる。国内の縄文遺跡でみつかる多くの編み方が、縄文時代早期から登場していることが分かる。
日本最古の犬
発掘された犬の骨は、DNA鑑定の結果、秋田犬や柴犬と一致しており、鑑定で確認されたものとしては今の時点では最古の日本犬である。
ドングリ貯蔵穴
直径1m強の円形穴の中に、網代編みのかごが破損し、潰れた状態で残っていた。目印の可能性がある木の棒が刺さったままであった。ドングリ類は水に漬けて生のまま貯蔵していたとみられる。
遺構
- 貝層2 国内最古の湿地性貝塚
- 埋葬人骨5
- 縄文早期の人骨出土(7体分)
- 土坑155
- 集石167 – 一次
- 集石4 – 二次
- 石器集積19
- 炉3
- 配石3
- 木杭500
遺物
- 編み籠 - 700点以上 植物遺存体
- 六ツ目編(割り裂き材)
- 木製品(櫛)- <国内最古>
- 木製皿
- 土偶 – 関東地方より3500年早い
- 土製耳飾り
- 縄文土器(塞ノ神B式土器+轟A式土器+押型文土器)
- 石器
- 礫
- 縄文土器(塞ノ神式土器+押型文土器+条痕文土器)
- 貝製品
- 骨角製品 (鹿角製装飾品)
- 獣骨 (イヌ・カモシカ・カワウソ・タヌキ)
- 木製品
- 動物遺存体(貝+骨(獣+魚)
- 骨格器(鹿角製装飾品)
指定
- 平成28年10月3日 国指定史跡
展示
アクセス等
- 名称:東名遺跡
- 所在地:佐賀県佐賀市金立町千布字東名
- 交通: 伊賀屋駅 徒歩35分 3.2km/佐賀市営バス(二俣・金立公園線)「二俣」停留所から徒歩約20分
参考文献
- 文化庁(2007)『発掘された日本列島 2007』朝日新聞社
- 佐賀市「東名遺跡解説パンフレット(H25-改訂版)佐賀市」
小玉 ― 2023年12月14日 12:01
小玉(こだま)は古代に首飾りや」腕飾りなどに使われた直径5から6ミリの小粒の丸い玉である。
概要
多くはガラス玉である。弥生時代から古墳時代前期にかけてガラスの色ははほぼ水色に限られていた。古墳時代には小玉だけ、あるいは他の玉とともに連ねて、耳、首、手、足などの飾りとした。縄文時代には石製のものもあった。 弥生時代には、貝製小玉(臼玉)が北部九州、、山陰地方、瀬戸内海の沿岸部で顕著に分布する。3546個のガラス製小玉を出土した二塚山遺跡(佐賀県)がある。ガラス小玉は濃紺色と水色のものに大別できる。形態は臼玉・丸玉・棗玉様の三種がある。
命名
1888年に坪井正五郎が「小玉」と命名し、1991年に高橋健児が「管玉を短くすれば臼玉、臼玉の角を取れば小玉、小玉を大きくして高くすると元の丸玉」として、用語が定着した。高橋は両者の中間もあり、丸玉や臼玉との区別の基準は明確ではない。
流通
ガラスを国内で原料から生産していたものではなく、製品や資材として作られたものが国内に持ち込まれ、加工・流通していたものと考えられている。一部の遺跡から勾玉の鋳型なども見つかっているため、ガラス加工技術を持っていたと考えられる。奈良時代には玉以外にも、朝廷の保護のもとで仏教関連のガラス製品などが作られた。 ガラス小玉の製作法は次の3つがある。
- 管切り法
- 巻き玉の方法で作った管玉を冷えていない状態で引き伸し、細長い管とする。完成した管を細かく輪切りにした後に、熱を加えて断面の角をとっていく方法である。
- 巻き付け法
- 溶解したガラスを棒状の金属を回転させながら巻き取って形を作る方法である。トンボ玉など大きめの玉を作る場合に使われていた。
- 鋳造法
- 鋳型として粘土板や板状の砂岩に、径3~4mmの半球状の窪みを多数配置し、窪みの中央には径1mmほどの細かな穴を穿つ。細かな穴に針金のようなものを立て、周囲の窪みに溶かしたガラスを流し込んだり、ガラスの破片をおいた後に鋳型ごと熱して鋳型に溶かしたガラスを流し込む方法をとっていた。溶解したガラスが固まった後に、先ほどの針金状のものを抜き取ることで、糸を通す穴ができあがる。
用途
古代では男女とも地位のある人物は首飾り、 髪飾り、 腕飾りなどで身体を飾っていた。社会的地位の威儀を示すものだったと考えられる。
出土例
- ガラス小玉鋳型 - 薬師堂東遺跡
- 鋳型が使用された年代は、飛鳥時代であった。鋳型に残存するガラスの成分分析により朝鮮半島産の鉛ガラスが使用されていたことが判明した。
- 権現山51号墳
- 雀居遺跡
- 中原遺跡
- 天塚古墳
- 弘法山古墳
- 牽牛子塚古墳
- 将軍山古墳
- 山王塚古墳
- 豊田狐塚古墳
- 遠見塚古墳
- 姉崎二子塚古墳
- 安満宮山古墳
- 宮山遺跡 (総社市)
- 室宮山古墳
- 王塚古墳
- 西都原古墳群
- 吉島古墳
参考文献
- 木下尚子(1985)「貝製臼玉考」梅花女学院大学地域文化研究所紀要1
- 伊藤雅文(1991)「玉類」『古墳時代の研究 第8巻』古墳2 副葬品、雄山閣出版
東名縄文館 ― 2023年12月14日 12:18
東名縄文館(ひがしみょうじょうもんかん)は佐賀市金立町にある東名遺跡の遺物のる展示館である。
概要
国史跡東名遺跡に隣接し、遺跡のガイダンス展示コーナーを開設する。平成21年8月に開館した。 貝塚の剥ぎ取り、貝製や骨角製アクセサリーを展示する。巨勢川調整池管理棟の1階にある。復元品の「東名遺跡」から出土した国内最古とみられる編みかごを展示する。佐賀市は2028年に「東名遺跡ガイダンス・埋蔵文化財センター」の開設を目指している。
展示
- 装身具
- 腕輪、ネックレス、ペンダント。骨に模様を彫って、穴をあけ首から吊るしたとみられる装身具。貝やイノシシの牙、シカの角が、腕輪やペンダント、腰飾りに用いられ、サメの骨で作ったピアスなど。
- 骨角製品 鹿の角で作ったペンダント
- 東名遺跡で作成された証拠として、角がとれたところから、製品になるまでの過程の遺物が貝塚にそろって残っていた。
- 貝輪
- 貝を素材にした貝輪である。ベンケイ貝は有明海にはなく、外海でとれる貝で唐津または糸島の貝であろう。日本列島最古のオオツタノハ性の貝輪である。 オオツタノハは鹿児島の奄美群島より南の海でとれる貝であり、東名遺跡に来た経緯は解明されていない。
- 貝玉
- ハナマルユキという宝貝で、オオツタノハと同じく鹿児島より南の海でとれる貝である。
- 編みかご
- 国内最古の編みかご。発掘された現物と復元された編みかごを展示する。
- 東名遺跡の犬の骨。
- DNA鑑定の結果、柴犬・秋田犬など日本犬のDNAと一致し、最古の日本犬であることが分かった。犬の多くは猟犬として使われ、人間の最初のペットとなった。
- 縄文時代の「貝」
- 土器
- 南九州の塞ノ神式土器、
- 石器 - 石鏃・石銛・石錐
- 木製品
- 円形皿 - 木製の皿
- 鉢状容器 - 木製容器
- 櫛 - 国内最古の木製櫛
アクセス等
- 名称:東名縄文館(東名遺跡)
- 所在地:佐賀市金立町大字千布(巨勢川調整池内)
- 開 館:火曜~日曜日・祝日 10:00~16:00
- 休館日:月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3)
- 料 金:無料
- 交通:佐賀駅から佐賀市営バス(二俣・金立公園線)「二俣」停留所⇒徒歩約20分
- 佐賀駅から佐賀市営バス(兵庫・久保泉工業団地線)「渕頭」停留所⇒徒歩約15分
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