東名遺跡 ― 2023年12月14日 10:12
東名遺跡(ひがしみょういせき)は佐賀県佐賀市にある縄文時代早期の遺跡である。 国内最古の湿地性貝塚である、
概要
佐賀市中心部から北約4キロにある縄文時代早期末の遺跡である。 縄文時代早期末葉(約7000年前)で縄文海進の影響で、当時の海岸近くで生活を始めた。 標高3メートル以下の微高地で集石炉・墓地を主体とする集落域と標高0メートル以下の谷部に形成されたドングリ貯蔵穴を伴う貝塚から構成されている。 当時の日本列島は、温暖化により海水面が上昇しており(縄文海進)約6000年前にピークに達した。その後、遺跡全体は埋没し、厚い粘土層で覆われた。遺跡全体が厚い粘土層に覆われたことなど良好な保存条件に恵まれたため、国内最古級の様々な遺構・遺物が良好に残存している。 居住域・墓地・貝塚・貯蔵穴がセットで残されており、縄文時代のムラ全体の様子が良くわかる国内事例である。当時の食生活を中心とした生活様式や文化を鮮明に知ることができる。日本の生活文化の源流を考える上で極めて重要な遺跡である。 南北500m以上と広域に及ぶ国内最大級の貝塚群であり、6ケ所の貝層の総面積は約1,700㎡を超える。貝塚としては九州最古級で、縄文貝塚の空白地帯である有明海最奥部の佐賀平野で発見された。 炭素年代測定の結果から、7950年前から7400年前までの短めのい期間にいとまなれた遺跡と判明した。
発掘調査
巨勢川調整池の標高-0.5mから-2.5mまでの約5.5mから7.5m堀り込む過程で、標高3m付近、約2m程度堀り進んだ地点で縄文時代早期の集落跡や墓地が発見され、平成5年度から平成8年度にかけて発掘調査を実施した。約5m程度堀り進んだ標高0.5m地点で、縄文時代早期の貝塚が平成15年5月に発見され、平成16年9月より本格的に調査した。貝塚は全部で6箇所発見されており、貝層の面積は、約1,700m2に及ぶと想定されている。日本の土壌は、酸性土壌であり、酸化し劣化してしまうため木製品等の有機物は残りにくい土壌環境です。このような土壌環境のため、木製品や網籠が良好な形で残っていることが、全国的にも珍しい。国内最古の木製櫛をはじめとする日本最大級の木製品は、貴重な出土品である。
日本最古の編み籠
木製の網かごは日本最古で、731個(縄文時代の網かご全部の約60%)の量、10種類以上の編み方(縄文時代の網かごの編み方のすべてを網羅)という縄文時代の質の高さがうかがえる。網代編が最も多くみつかる。国内の縄文遺跡でみつかる多くの編み方が、縄文時代早期から登場していることが分かる。
日本最古の犬
発掘された犬の骨は、DNA鑑定の結果、秋田犬や柴犬と一致しており、鑑定で確認されたものとしては今の時点では最古の日本犬である。
ドングリ貯蔵穴
直径1m強の円形穴の中に、網代編みのかごが破損し、潰れた状態で残っていた。目印の可能性がある木の棒が刺さったままであった。ドングリ類は水に漬けて生のまま貯蔵していたとみられる。
遺構
- 貝層2 国内最古の湿地性貝塚
- 埋葬人骨5
- 縄文早期の人骨出土(7体分)
- 土坑155
- 集石167 – 一次
- 集石4 – 二次
- 石器集積19
- 炉3
- 配石3
- 木杭500
遺物
- 編み籠 - 700点以上 植物遺存体
- 六ツ目編(割り裂き材)
- 木製品(櫛)- <国内最古>
- 木製皿
- 土偶 – 関東地方より3500年早い
- 土製耳飾り
- 縄文土器(塞ノ神B式土器+轟A式土器+押型文土器)
- 石器
- 礫
- 縄文土器(塞ノ神式土器+押型文土器+条痕文土器)
- 貝製品
- 骨角製品 (鹿角製装飾品)
- 獣骨 (イヌ・カモシカ・カワウソ・タヌキ)
- 木製品
- 動物遺存体(貝+骨(獣+魚)
- 骨格器(鹿角製装飾品)
指定
- 平成28年10月3日 国指定史跡
展示
アクセス等
- 名称:東名遺跡
- 所在地:佐賀県佐賀市金立町千布字東名
- 交通: 伊賀屋駅 徒歩35分 3.2km/佐賀市営バス(二俣・金立公園線)「二俣」停留所から徒歩約20分
参考文献
- 文化庁(2007)『発掘された日本列島 2007』朝日新聞社
- 佐賀市「東名遺跡解説パンフレット(H25-改訂版)佐賀市」
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