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庚寅銘大刀2023年08月23日 21:25

庚寅銘大刀(こういんめいたち)は福岡県福岡市にある元岡古墳から出土した金象嵌の庚寅の干支銘文を持つ6世紀の鉄刀である。

概要

庚寅銘大刀は、2011年(平成23年)に福岡県福岡市西区の元岡古墳群(元岡・桑原遺跡群)にある元岡G-6号墳の石室から出土したものである。 6号墳は谷の奥に作られた古墳で、墳丘の直径が18mの横穴式石室墳である。墳丘は果樹園の造成により完全になくなっていたが、発掘の結果、墳丘の周りを囲む溝と南側に入口を開けた石室が見つかった。石室の中からは大刀(たち)1振のほか、大型青銅鈴、鉄製の武器・工具・馬具、土器、玉類や耳環等の装身具が出土した。古墳に副葬されている大刀は直刀である。2011年9月7日、G―6号墳から大刀を取り上げ、センターに持ち帰り透過X線撮影すると19文字を確認できた。9月21日に記者発表を行った。12月12日、象嵌は金と判明した。2015年(平成27年)1月7日、銘文19文字の表出が完了した。銘文発見までの時間の2時間はこれまでの最短であった。

金錯銘大刀(庚寅銘大刀)

7世紀に築造されたG―6号墳から西暦570年とみられる「庚寅」の干支と「正月六日」の日付が刻まれた鉄刀が見つかった。刀身の棟(むね・背中の部分)に金色の文字が象嵌されている。象嵌には純度の高い金(91~93%)が使われている。 大刀は、九州大学の移転地である福岡市西区の元岡古墳群から出土した。全長74.5 cm、刀身長は65.0 cm、身幅は3.0 cm。元嘉暦に照らすと、正月六日が庚寅になるのは、西暦570年である。日本における暦資料として学術的に貴重なものとなる。「具体的な年月日を記した初めての国産刀剣の出土」であるとともに、「暦を使用した最古の事例」であり、「日本列島で元嘉暦を使いこなしていた証拠」となる、

銘文のある鉄剣・鉄刀

これまで日本で銘文のある鉄剣・鉄刀は以下の7点がある。(*は干支の記載があるもの)

  1. 稲荷台一号墳「王賜」銘鉄剣(千葉県市原市)
  2. 江田船山古墳「獲□□□鹵大王」銀象嵌銘大刀、熊本県玉名郡和水町)
  3. 稲荷山古墳「獲加多支鹵大王」金錯銘鉄剣(埼玉県行田市)*
  4. 岡田山一号墳「各田部臣」銀象嵌銘鉄刀(島根県松江市)
  5. 箕谷二号墳「戊申年」銅象嵌銘鉄刀(兵庫県養父市)*
  6. 東大寺山古墳出土鉄刀、金象嵌「中平年」(184年-189年)*
  7. 勝福寺古墳の刀の柄の模様、金象嵌、6世紀前葉
  8. 石上神宮伝世の七支刀

原文

  • 大歳庚寅正月六日庚寅日時作刀凡十二果□
  • (大意)570年1月6日(西暦では1月27日)に刀を作った。およそ十二回の鍛錬を施した。□=錬と推定

時期

古墳は7世紀前半。6世紀後半

指定

  • 2019年(令和元年)7月23日に重要文化財に指定された。指定名称は金錯銘大刀。

参考文献

  1. 福岡市教育委員会(2013)『福岡市埋蔵文化財センター年報 第31号』
  2. 福岡市教育委員会(2018)『元岡・桑原遺跡群30-元岡古墳群G-6号墳庚寅銘大刀の考察』福岡市埋蔵文化財報告書第1355集
  3. 福岡市教育委員会(2013)『元岡・桑原遺跡群22』福岡市埋蔵文化財報告書第1210集

元岡古墳群2023年08月23日 22:00

元岡古墳群(もとおかこふんぐん)は福岡県福岡市にある4世紀末から7世紀にかけての古墳群である。

概要

古墳群は前方後円墳7基のほかA群からO群までの古墳群から構成される。その中でG群と名付けられた古墳群は丘陵の南端にあり、当時は南に入江を望む場所に6基の小型の古墳が作られている。周囲の標高は21mから23mである。

発掘調査

墳丘がほとんど残っておらず、調査開始時には古墳の存在は想定されていなかった。地表に露出していた石材を調べるためトレンチ調査を行ったところ、石材が石室の天井石や壁石であることが判明して古墳が発見された。 6号墳は谷の奥に作られた古墳で、墳丘の直径が18mの横穴式石室墳である。墳丘は果樹園の造成により完全になくなっていたが、発掘の結果、墳丘の周りを囲む溝と南側に入口を開けた石室が見つかった。 玄室床面付近から大刀(たち)1振が見つかった。玄室内から大型青銅鈴、鉄製の武器・工具・馬具、土器、玉類・耳環等の装身具が出土した。須恵器は胴部が丸みを帯び、底部は丸底と推測された。

遺構

石室は両袖単室の横穴式石室で、北壁幅1.68 m、南壁幅2.39 m、東壁幅2.50 m、西壁幅2.41 mの台形状である。

遺物

  • 大型青銅鈴
  • 工具
  • 馬具
  • 土器
  • ガラス玉
  • 耳環 – 金銅
  • 切子玉 – 水晶玉
  • 算盤玉 – 瑪瑙製
  • 管玉
  • 庚寅銘大刀

時期

石室内から出土した須恵器から、築造は7世紀初頭であり、7世紀第1四半期後半から第2四半期前半まで追葬が行われたと推測されている。

指定

アクセス等

  • 名称:元岡古墳群
  • 所在地:
  • 交通:

参考文献

  1. 福岡市教育委員会(2013)『元岡・桑原遺跡群22号』