土師器 ― 2026年05月02日 00:57
土師器(はじき)は古墳時代から平安時代にかけて広く用いられた、弥生土器の系譜を引く素焼きの土器である。日常生活用の煮炊き・食器を中心に、祭祀や副葬品にも用いられ、日本古代社会の基礎的な土器群を構成する。
概要
土師器は、粘土紐を積み上げて成形する紐積み(輪積み)法を基本とし、ろくろや登窯を用いず、野焼きに近い方法で焼成される。焼成温度はおよそ700~900℃程度で、全体に赤褐色・黄褐色を呈するのが特徴である。
弥生土器の技術的伝統を継承しつつ成立し、古墳時代を通じて形態や製作技法に変化がみられる。
時期ごとの特徴
古墳時代前期:弥生土器の系統を色濃く残し、壺・器台・小型丸底土器などが中心となる。 中期:壺や高坏などの器形が変化し、甑(こしき)など調理具の発達がみられる。調整技法にも多様化が生じる。 後期:灰色硬質土器である須恵器が登場し、両者の併用が一般化する。 奈良・平安時代:須恵器や施釉陶器の普及により相対的に地位は低下するが、日常用土器として継続して使用される。
器種と用途
主な器種には、壺・甕・坏・高坏・器台・盤・甑・椀などがあり、用途に応じて使い分けられた。
- 煮炊き・調理:甕・甑
- 飲食・供膳:坏・椀・高坏
- 貯蔵:壺
また、祭祀用土器には手で成形する手づくね法が用いられる例もある。
製作技法
成形後の整形・調整には、叩き、刷毛目、ナデ、削り、磨き、押圧など多様な技法が用いられ、地域差も顕著である。文様は基本的に施されず、機能性を重視した簡素な外観をもつ。
須恵器との違い
土師器と須恵器は、日本古代の代表的な土器であり、以下の点で区別される。
- 焼成方法:
- 土師器=野焼き(低温焼成)
- 須恵器=窯焼成(高温焼成・約1000~1200℃)
- 色調:
- 土師器=赤褐色系
- 須恵器=灰色系
- 性質:
- 土師器=軟質で吸水性が高い
- 須恵器=硬質で緻密
用途面でも、土師器が煮炊きや日常食器に用いられるのに対し、須恵器は貯蔵・供膳・儀礼的用途に多く用いられる傾向がある。
文献史料と名称
平安時代の法制書『延喜式』や辞書『和名類聚抄』には「波爾(はじ)」の表記がみえ、古代における呼称を知る手がかりとなる。名称は、土器生産に関与したとされる土師氏との関係が指摘されている。
出土例
- 壺 石田川遺跡、群馬県太田市、古墳時代
- 皿 郡山遺跡、宮城県仙台市、奈良時代
- 高坏 奈良県天理市柳本町、東京国立博物館蔵、8世紀、重要文化財
- 土師器甕 小治田安万侶墓出土、奈良市都祁甲岡町、神亀6年(729) 東京国立博物館
参考文献
- 大塚初重(1982)『古墳辞典』東京堂出版
- 江坂輝彌、芹沢長介(1985)『考古学ハンドブック』ニューサイエンス社
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