動物埴輪 ― 2023年07月20日 21:39
動物埴輪(どうぶつはにわ)は動物姿を表した埴輪である。形象埴輪のひとつである。
概要
埴輪に表された動物には馬、牛、犬、鶏などの家畜のほか猪、鹿、水鳥、魚などの獲物などがあり、古代の人々の暮らしにつながる動物を表している。動物埴輪は主に古墳時代の中期から後期にかけて全国的に作られたが、とりわけ関東地方は種類が多い。 動物により埴輪の意味は異なる。馬は5世紀では高貴な人物の乗り物として威信財であった。儀式用に飾られた馬形埴輪は、馬を所有することは、財力と権力のあることを示していた。ところが6世紀には農工馬や駄馬として普及した。 動物埴輪のなかで最初につくられたのは鶏や水鳥であった。特に鶏は古代の人々にとって光をもたらす神聖な鳥とされている。水鳥や鶏の埴輪は特に首長霊に関連する儀式で使われた。鶏や水鳥は死者の魂を運ぶと考えられていた。埴輪の屋根に鳥が表される例がある。 犬、猪、鹿、鵜飼い、魚、鷹飼いなどの埴輪は狩猟そして獲物を主要なテーマとし、あるいは猟犬を使った場面を表しているという説があるた水鳥、馬、ムササビ、猿などは威信財としてそれを所有していることを示すとされる。なお『牛形』の埴輪は少なく、全国で数例だけという。
出土例
- 馬 大阪府堺市の大山古墳出土(古墳時代・5世紀)で馬の埴輪の出土例がある(宮内庁蔵)。「飾り馬」は広島県緑岩古墳(6世紀) 馬の埴輪の出土例がある(奈良県立橿原考古学研究所蔵)。
- 猪 奈良県荒蒔遺跡(6世紀中頃)で猪の埴輪の出土例がある。群馬県伊勢崎市境上武士で猪の埴輪の出土例がある(重要文化財、東京国立博物館蔵)。伝千葉県我孫子市出(古墳時代・6世紀)で「矢負いの猪」の埴輪の出土例がある(東京国立博物館蔵)。
- 牛 1897年(明治30年)に羽子田遺跡(羽子田1号墳、現在の田原本幼稚園の東隣接地)から出土した牛の埴輪の出土例がある(唐古・鍵考古学ミュージアム所蔵)。1958年(昭和33年)、国の重要文化財に指定された。牛の形状の全体像が分かる資料である。
- 犬 大阪府堺市大山古墳(古墳時代・5世紀)から犬の埴輪が出土している(宮内庁蔵)。さらに大阪府忍ケ丘駅前遺跡(5世紀中頃)から犬の埴輪が出土している(四条畷市立歴史民俗資料館蔵)。
- 鶏 群馬県伊勢崎市赤堀茶臼山古墳( 古墳時代・5世紀)から鶏の埴輪が出土している(東京国立博物館蔵)。栃木県鶏塚古墳(6世紀後半)から鶏の埴輪が出土している。鶏は台の上に乗っている(東京国立博物館蔵)。大阪府茨木市 太田茶臼山古墳出土(古墳時代・5世紀)から鶏の埴輪が出土している(宮内庁蔵)。 猿を象った埴輪は他に例をみない大阪府羽曳野市の伝応神陵(古墳古墳時代・5世紀)から水鳥の埴輪が出土している(東京国立博物館蔵)。また大阪府津堂城山古墳(4世紀末)から水鳥の埴輪が出土している(大阪府立近つ飛鳥博物館蔵)。
- 鹿 茨城県つくば市下横場字塚原出土品(古墳時代・6世紀)に鹿の埴輪が出土している(東京国立博物館蔵)。
- 魚 魚形の埴輪の出土は全国でも珍しい。1964年(昭和39年)に大里・白桝地区から出土した。鮭をかたどった埴輪と考えられ、付近を流れる高谷川にかつて鮭が遡上していた。魚形埴輪は昭和51年当時で千葉県と茨城県の2例のみが知られていた。高さ29.3センチメートル、長さ25.7センチメートル。千葉県流山市の東深井古墳群第7号墳から魚形埴輪が出土した(野田市郷土博物館蔵)。魚の全長18cm。高さ23cm。
- 猿 伝茨城県行方市 大日塚古墳で出土した猿の埴輪は両手と下半身が欠損しており全体形状は分からない(重要文化財、東京国立博物館蔵「埴輪 猿」)。長21.9cm、高27.3cm。背中の子猿のほうに少し顔をむけていたと考えられている。 猿の埴輪は他に類例がない。
- 熊 群馬県藤岡市 伝十二天塚古墳出土から熊の埴輪が出土している(藤岡歴史館蔵)。
参考文献
- 高橋克壽(1996)『埴輪の世紀 歴史発掘9』講談社
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