上御殿遺跡 ― 2026年08月02日 00:05
上御殿遺跡(かみごてんいせき)は、滋賀県高島市に所在する弥生時代から平安時代にかけての複合遺跡である。弥生時代中期~後期の双環柄頭短剣に似た鋳型が国内で初めて出土したことで知られ、古墳時代前期の石釧、大規模な集落跡、2026年に確認された鍛冶工房とみられる円形竪穴建物など、多様な遺構・遺物が確認されている。丹後・若狭など日本海側地域の特徴をもつ土器も出土しており、琵琶湖西岸と日本海側を結ぶ地域間交流を考えるうえでも重要な遺跡である。
概要
上御殿遺跡は、滋賀県高島市南部、琵琶湖の西岸に広がる高島平野の南部を流れる鴨川の左岸に所在する。JR湖西線安曇川駅から南西方向に約800mの距離である。オルドス式銅剣や古墳時代の石釧、古墳時代前期の鍛冶工房跡などが出土したことで知られる。
調査
2013年調査(短剣鋳型)
古代中国北部に分布したオルドス式銅剣に特徴が似た双環柄頭短剣の石製鋳型(金属を流し込んで形を作る型)が国内で初めて出土した。鋳型は2枚ある。2点一対で、長さ約30cm、幅約8.8cmである。弥生時代中期から後期のものとされる。オルドス式銅剣は、中国北方から内モンゴル地域などを中心に分布する青銅製短剣である。柄の先が2つのリング(双環)になっているのが特徴である。復元される短剣は、双環柄頭をもつ点で中国北方の短剣と共通する一方、鍔をもたず、刃部に幾何学的な文様が施されるなど、既知のオルドス式銅剣とは異なる特徴もみられる。
鋳型の石材は泥が固まったシルト岩で産地は不明である。鋳型の彫り込みが浅く、復元すると刃部が約3mmと薄いことから、実用品ではなく、特殊な目的のために製作された可能性が指摘されている。 短剣鋳型の出土は、上御殿遺跡周辺で青銅器生産に関わる技術活動が行われていた可能性を示す。一方、2026年には古墳時代前期の鍛冶関連遺構とみられる建物も確認され、金属加工技術の実態を考えるうえで重要な遺跡となっている。滋賀県指定有形文化財となっている。朝鮮半島に同型の出土例がそれまで知られていなかったことから、その伝来経路について、日本海側を含めた複数の可能性を検討する必要がある資料となった。
2013年調査(石釧)
古墳時代の川跡から腕輪形石製品の「石釧」が出土したと発表した。直径8 ㎝(外側:内側は直径6.6 ㎝)・高さ2.4 ㎝を測り、破片の大きさは全体の約1/4 程度である。石材は緑色凝灰岩とみられ、淡い緑色腕輪形である。石釧は東北南部~九州北部に広く分布しており、有力者の墓に副葬されることが多い。古墳時代前期の後葉(4世紀後半)ごろのものと見られている。土器の他、紡錘車や鉄鎌が出土している。湖西地域では初めて確認された石釧であり、琵琶湖を挟んだ湖南地域との交流や、腕輪形石製品の流通を考えるうえでも重要である。
2014年調査(古墳)
2014年2月27日、古墳1基が発見された。直径約12.8mの円墳で、主体部は木棺直葬であった。周溝から出土した須恵器などから、古墳時代後期の古墳と考えられている。底の土に赤い顔料が見られた。
2024年度~2025年調査(集落)
2024年度からの調査では、弥生時代後期から古墳時代前期の竪穴建物が多数確認され、2026年までに方形建物32棟などが確認されている。丹後・若狭地域の影響を受けた北近畿系の土器や湖南地域の特徴を持つ土器が含まれており、他地域との交流が推測される。弥生時代後期から古墳時代前期にかけて約200年間続いた地域の拠点集落と見られる。
2026年調査(鍛冶工房跡)
古墳時代前期の鍛冶工房とみられる2棟の円形竪穴建物跡がみつかった。建物内部で6基の炉の跡を発見している。炉周辺の被熱状況から、700~1000度弱の高温になったと推定されている。出土状況は、直径約7.2メートルの建物跡から4基、直径約6.0メートルの建物跡から2基の炉が確認されている。炉は床面から数センチ高く粘土等でかさ上げされており、湿気対策が施されていたと考えられる。炉周辺の被熱状況から、ふいごによって送風していた可能性も指摘されている。北方からもたらされた鉄製品などを再加工していた可能性が考えられている。丹後・若狭など日本海側地域の特徴をもつ土器がされ、遠隔地との交流を示すものと評価されている。
遺構
- 鍛冶工房跡
- 古墳
遺物
- 紡錘車
- 鉄鎌
- 石釧
- 双環柄頭短剣の石製鋳型
指定
時期
アクセス
- 名称:上御殿遺跡
- 所在地:滋賀県高島市鴨2742-3
- 交 通:JR湖西線 安曇川駅 徒歩18分(1.3km)
参考文献
- 「滋賀・高島の遺跡で邪馬台国時代の鍛冶工房跡」産経新聞、2026年7月17日
- 「弥生―古墳期の鍛冶工房か」共同通信、2026年07月16日
- 滋賀県文化財保護協会(2013a)「平成24年度 高島市上御殿遺跡出土の石釧について」
- 滋賀県文化財保護協会(2013b)「御殿遺跡発掘調査現地説明会資料」
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