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海獣葡萄鏡2026年08月04日 00:10

海獣葡萄鏡/明治大学博物館/筆者撮影

海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)は鏡背に海獣と呼ばれる霊獣や葡萄唐草文を高肉彫風に表した中国・唐代を代表する銅鏡である。

概要

海獣は海に生息する動物ではなく、中国で西域文化の影響を受けて成立した獅子や麒麟などの霊獣を総称したものである。葡萄唐草は葡萄の房、葉、蔓を組み合わせて連続模様にした文様である。中国では葡萄文が吉祥文として好まれた。黄名時(2014)は「唐の高宗・則天武后時代に瑞獣を主文とする海獣葡萄鏡が流行した」「シルクロードを通じて伝来したペルシアなど西アジア・中央アジアのデザインや図案をとりいれた鏡や,東西の文化がミックスし融合した文様の鏡が流行した」と指摘する。中国の唐代の盛唐期前期に流行した代表的な装飾鏡である。 葡萄は多くの実をつけることから「子孫繁栄」や「豊穣」を表し、どこまでも伸びる蔓から「生命力」や「長寿」を象徴する。海獣葡萄鏡は唐代(7~8世紀)に最も盛んに製作された。日本では飛鳥時代から奈良時代にかけて遣唐使などを通じて伝来した。西域文化の影響を受けた国際色豊かな意匠をもっている。日本では正倉院宝物や古代寺院・神社に多く伝来し、美術史・考古学の双方で重要な資料である。

海獣葡萄鏡の事例

香取神宮(茨城県)蔵の海獣葡萄鏡

  • 1953年に国宝指定された。鏡径29.5cm、白銅質の大型の円鏡である。唐代鏡の最高傑作の一つといわれている。正倉院御物及び大山祇神社の神鏡とを合わせて『日本三銘鏡』とされている。葡萄唐草を地紋とし、獅子形の鈕(ちゅう)を中心として獅子・馬・鹿・麒麟などの獣類や孔雀・鴛鴦・鳳凰・鶏などの鳥類、さらには昆虫を配置する。

大山祇神社蔵の海獣葡萄鏡(禽獣葡萄鏡)

  • 国宝指定。鏡径26.5cm、重さは3キロ以上。愛媛県の大山祇神社に伝わる鏡である。中国・唐時代の白銅製の鏡とされる。斉明天皇が朝鮮出兵の際に戦勝を祈って奉納したと伝えられる(歴史的事実かは定かでない)。中央のつまみ(鈕)を中心に内区と外区に分かれる。中央には獅子が彫られ、その周りを葡萄ツタ、孔雀や鳳凰、小鳥が囲む。

東京国立博物館蔵の鳥獣葡萄鏡

  • 「鳥獣葡萄鏡」や「禽獣葡萄鏡」も獣葡萄鏡と同系統・同種の文様を持つ鏡の別称や類例として扱われる。
  • 法隆寺に伝来した銅鏡である。1957年(昭和32年)6月18日、重要文化財に指定。中央の獅子のつまみの周囲に、葡萄のツル、葉、小鳥、動物が立体的に描かれる。

正倉院蔵の鳥獣花背方鏡

  • 鳥獣花背方鏡は中国・唐代に作られた海獣葡萄鏡の1種で、中央には獅子が鈕となり、その周囲の六頭の霊獣を配置し、外区に鳥、蝶、蜂、葡萄唐草文様をを鋳出す。白銅で作られた四角い鏡である。
  • 方形の海獣葡萄鏡はめずらしい。辺長17.1cm。重さ1934.1g。正倉院に伝わる白銅鏡の中でも最高傑作の一つとされる。

参考文献

  1. 黄名時(2014)「隋唐時代の鏡文化(1)」名古屋学院大学論集 言語・文化篇 第25 巻第2号 pp.1―15