三角縁神獣鏡 ― 2023年05月26日 22:15
三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)は鏡の縁部の断面形状が三角形となっている銅鏡である。
概要
神仙や霊獣を鏡背の主文様とし、鏡の縁の断面を三角形にしている点が特徴である。直径は21~23㎝前後と一定しており、日本の古墳出土鏡の中では大型品である。 神像と獣像が交互に配置され、鈕は大きく丸く高い。 内区の主文様が東王父、西王母、伯牙、黄帝などの神像と、龍・虎などの獣像が配置され、車馬・楼閣などを背景に表したものがある。
分類
内区を乳により4から6区に等分して神獣門を配する例が多い。神獣の数と種類により分類されている。四神四獣鏡・四神二獣鏡・二神二獣鏡、三神三獣鏡などがある。三角縁龍虎鏡は神像がなく、獣像特に龍文、虎文のみで構成される三角縁の銅鏡をいう。
製作年
製作年号を表すものがある。景初三年、正史元年、などがある。
製作地論争
三角縁神獣鏡は中国で出土していないため、倭国で製作されたものか、中国製(舶載鏡)かという論争がある。
日本の古墳から出土したなかでも文様や銘文から明らかに中国製とみられるものがあるが、中国本土出土と確定したものはない。日本製とする説もある。 2018年に奈良県天理市の黒塚古墳から出土した33面の三角縁神獣鏡について、京都市の泉屋博古館が大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町)で蛍光(けいこう)X線分析したところ、鏡に含まれる銀などの微量元素の割合が、古代中国鏡と一致したという。 黒塚古墳の三角縁神獣鏡は中国で製作された可能性が高いとされた。
河南省洛陽市の三角縁神獣鏡
中国河南省洛陽市で同じ特徴の鏡が見つかったという論文がある。しかし正確な出土地点は不明という。偽造の可能性もあるので、鉛同位体比の分析など科学的な調査が必要であると指摘されている(西川寿勝(2016))。
出土例
- 神原神社古墳
- 島根県雲南市加茂町大字神原・神原神社古墳出土の「景初三年」鏡
- 佐味田宝塚古墳
- 内区に六つの乳を置き、その間に龍のような神獣と神仙・従者を交互に配置する典型的な神獣鏡である。古墳時代の4~5世紀、奈良国立博物館蔵。
参考文献
- 大塚初重(2019)『巨大古墳の歩き方』宝島社
- 大塚初重(1996)『古墳事典』東京堂出版
- 「SPring-8を利用した古代青銅鏡の放射光蛍光X線分析」,泉屋博古館古代青銅鏡放射光蛍光分析研究会
- 「奈良出土の三角縁神獣鏡は中国製か 蛍光X線で分析」産経新聞,2018年10月13日
- 西川寿勝(2016)「洛陽で発見された三角縁神獣鏡」
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