甕 ― 2023年12月25日 18:14
甕(かめ)は古代では口が大きく底の深い土器である。
概要
考古学では、形の大小にかかわらず、深くて口の大きな深鉢形土器を甕という。昔は甕は焼き物の総称であった。八岐大蛇に酒を提供した八甕や水を汲んだ瓶(へい、神代紀)など古くから「かめ」は水や酒を入れる深く、大きな容器を指していた。本来は火にかける器ではない。縄文土器では、丈の高い広口の器を「かめ」と呼んだが、現在は深鉢と呼ぶ。北部九州では特大の甕を埋葬用の容器として用いる。
壺との違い
口が大きく容量の大きいものを甕とし、口が小さくすぼまり容量が比較的小さいものを壺という。甕は壺より口縁が広いため中身が取り出しやすい。壺は口が狭いため外気に触れにくい利点を持つ一方、出し入れをする際は少しずつしかできない点がある。
甕形土器
- 甕形土器は弥生時代、古墳時代に見られる土器の形式である。
- 甕形土器は縄文時代の深鉢形土器がもとになり成立した器種である。
- 弥生土器では基本的器形は壺形土器、甕形土器、鉢形土器、高坏形土器の四種類である。
埋甕(うめがめ、まいよう)
- 地面に穴を掘り甕を埋めることである。住居の内部(出入口部)に営まれる住居内埋甕と住居外に営まれる住居外埋甕とがある。縄文時代前期中ごろの、乳幼児の骨の入った深鉢の出土例が最も古いものである。縄文時代中期後半には乳幼児の骨が正立または伏せて埋設された底部穿孔土器中に葬られた。のちに住居入口部に胎盤、へその緒を入れた土器を埋める風習も現れた。子供の健康を願う、まじないの側面もあったとされる。成人遺体の骨だけを土器の中に納める洗骨葬は後期初頭となる。
日本書紀 巻第一 神代上
- 「汝、可以衆菓釀酒八甕、吾當爲汝殺蛇。」
- 「素戔嗚尊勅蛇曰「汝、是可畏之神、敢不饗乎。」乃以八甕酒、毎口沃入。」
出土例
- 甕 - 島根県出雲荻杼古墓出土品、
- 埋甕 - 古婦毛遺跡、縄文時代の新生児埋葬施設
- 埋甕 - 黒谷(くろや)貝塚は最古の事例である。
参考文献
- 岩永祐貴(2019)『岐阜県における埋甕の様相』奈良大学大学院研究年報
- 木下忠(1970)『戸口に胎盤を埋める呪術』日本民族学会第9回研究大会報告要旨,民族學研究
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