佐紀陵山古墳 ― 2023年05月23日 21:14
佐紀陵山古墳(さきみささぎやまこふん)は奈良県奈良市山陵町にある佐紀盾列古墳群の西群に属する全長207メートルの古墳である。
概要
佐紀盾列古墳群は、奈良盆地東南部の大和古墳群、大阪平野の古市古墳群、百舌鳥古墳群と並ぶ大古墳群である。佐紀陵山古墳はそのひとつで、3段築成で葺石・埴輪を備える。全長207m、後円部径131m、高さ19m、前方部幅87m。高さ12m。 後円部は隣接する佐紀石塚山古墳(成務天皇陵)のくびれ部にくい込んでおり、 成務天皇陵の東側の濠は極端に狭くなっている。佐紀陵山古墳が先に築造された事を示す。
調査
大正時代の1916年に佐紀盾列古墳群]で盗掘事件が発生し、数人が現行犯で逮捕された。各地の古墳を荒らし回っていた盗掘団の存在が明るみとなり、大量の盗掘品が警察によって押収された。宮内省はただちに乱掘によって荒らされた古墳の復旧工事を実施した。回収された副葬品は写真や拓本などの記録をとり、寒天で型取りして石膏を流し込んだ模造品を作成し、原品は石室に戻された。復旧工事記録は大部分が関東大震災で焼失してしまったが、京都大学考古学教室の梅原末治博士の手元にその写しが保管されていた。盗掘時の報告書があり、埋葬施設の概略図、副葬品の石膏模造品や写真が残る。 2009年2月20日に日本考古学協会など考古・歴史系15学会の代表者らにより、墳丘最下段部を約2時間かけて調査(観察)された。茂木雅博日本考古学協会陵墓担当理事は「墳丘裾部分は後の時代に改変されている可能性があり、全長は200mを切るかもしれない」と再測量の必要性を指摘した。高木博志京都大学準教授は「この古墳は江戸時代まで、地元では神功皇后陵とされ、後円部墳頂に安産祈願の神社があったようで、今回、神社への参道や、妊婦の腰に当てたという白い石も確認出来た」と報告する。
規模
- 形状 前方後円墳
- 築成 前方部:3段、後円部:3段
- 墳長 207m
- 後円部 径131m 高19(墳頂平坦面では16)
- 前方部 幅87m 長85m 高12m
外表施設
- 円筒埴輪 円筒Ⅱ式(ひれ付含む)
- 形象埴輪 楯、衣蓋、家、
- 葺石 あり
- 【周濠】楯形、全周。
- 【周堤】あり(幅8~10mの外堤)-
内部構造
工事記録によると後円部墳頂には円筒埴輪列を巡らせた方形の壇があり、その内部に竪穴式石室がある。竪穴式石室は内法の長さ8.55㍍、幅1.09メートルという大規模なものであった。石室の両側壁は板石を小口積みにしているが、両小口の壁は大きな一枚の板石を立てている。板石は高さ、幅とも約2m、厚さ30cmに切りそろえ、中央やや上に四角い孔を上下に2個並べてあけている。天井石は5枚からなり、これらもきれいに切りそろえた切石である。石室の天井面となる下面には一枚ごとに深さ5センチほどの内刳りを施し、両側面には縄掛突起をつくり出している。さらに、これらの構造全体が、大きな切石の底石の上に構築されている。全体としてかなり複雑な構造となっている。
遺物
現在知られている副葬品は大正以前の盗掘による被害も考慮すると、元の品目のごく一部であろうが、それでも銅鏡5~6面、石製腕飾類7個、刀子形・斧形・高杯形・椅子形の石製模造品7個、琴柱形石製品2個、管玉、石製合子、石製臼各1個があった。変形方格規矩鏡3面はそれぞれ流雲文、唐草文、直弧文で外区を飾り、いずれも面径が30cmを超える大型仿製鏡である。復旧工事で出土した蓋形埴輪は高さ約1.5cm、差し渡し約2cmの巨大なもので、橿原考古学研究所附属博物館に模造品が展示される。
- 【鏡】ボウ製:内行八花文鏡1、方格規矩獣文鏡2、不明:四獣形鏡?1。
- 【玉類】碧玉:碧玉管玉1。
- 【装身具】石製腕飾類:車輪石3、鍬形石3、石釧1。
- 【石製模造品】琴柱形:2、農工具:刀子3、斧1、器財:高杯2、合子1、椅子1、その他:臼1、貝殻形1、不明2。
埴輪
『日本書紀』によれば、垂仁天皇は皇后の死去にあたり、殉死の風習をやめさせるため、初めて埴輪を用いたとされる。石室の直上に衣笠形埴輪、盾形埴輪、家形埴輪が出土した。いずれも高さ1.5m、幅2mの大型埴輪である。
指定
宮内庁により垂仁天皇の皇后、日葉酢媛命陵に治定される。
所在地等
- 名称: 佐紀陵山古墳
- 年代:4世紀末から5世紀前半(古墳時代前期から後期)
- 所在地:奈良県奈良市山陵町325
- 交通: 近鉄京都線平城駅下車、徒歩10分。
参考文献
- 大塚初重(2019)『巨大古墳の歩き方』宝島社
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