宝塚1号墳 ― 2026年02月05日 21:13
宝塚1号墳(たからづかいちごうふん)はは、三重県松阪市南部の丘陵上に築かれた古墳時代前期の前方後円墳であり、日本百名墳に選定されている代表的古墳である。伊勢平野を望む立地と規模の大きさから、当地における有力首長の墓域として位置づけられている。
概要
松阪市中心部から南へ約3kmの地点には宝塚古墳群が分布し、現在確認されているのは1号墳と2号墳の2基である。このうち宝塚1号墳は全長約111mを測り、伊勢地方において最大規模の前方後円墳として知られる。墳丘の主軸は前方部を東(やや南寄り)に向けて配置されており、周辺景観との関係を考慮した築造計画がうかがえる。
前方部基部には、幅約18m、奥行約16mの張り出し状施設、いわゆる造り出しが設けられている。この造り出しは古墳本体と土橋状の構造で結ばれ、祭祀や儀礼の場として機能した可能性が高い。周辺からは約140点に及ぶ埴輪が確認されており、葬送儀礼の具体像を考える上で重要な資料群となっている。なお、主体部(埋葬施設)については未調査であり、その構造や被葬者像は今後の研究課題である。
同一丘陵上に築かれた宝塚2号墳は、5世紀前半頃の築造とみられる帆立貝形前方後円墳で、朝顔形埴輪の出土によって知られる。宝塚1号墳に続く時期に営まれたと考えられ、両墳は同一首長系譜に属する墓域として理解される場合が多い。
宝塚古墳群では1999年以降、発掘調査が継続的に実施されてきた。なかでも2000年の調査において、宝塚1号墳の造り出しから、極めて特異な船形埴輪が出土したことは全国的に注目された。この埴輪は、船上に威信具を備えた立飾を伴う作例としては国内初の確認例であり、かつ規模の点でも最大級に属する。
出土した船形埴輪は、側板で補強された丸木舟系の準構造船を忠実に表現したもので、全長約140cm、円筒台を含めた高さは約94cm、最大幅は約36cmに達する。船首・船尾は垂直に立ち上がり、鰭状突起による装飾が施されているほか、心葉形隔壁板や線刻文様など、写実性の高い造形表現が認められる。
船体中央部には、蓋・威杖2本・大刀を象った立飾が据えられており、首長の権威や霊的象徴を強調する構成となっている。これらの要素から、本埴輪は被葬者の魂を導く「葬送船」を表現したものと解釈されることが多く、古墳時代前期における葬送観念や権力表象を考察する上で極めて重要な資料と評価されている。
この船形埴輪を含む「三重県宝塚一号墳出土埴輪」は、その造形的完成度と歴史的価値が高く評価され、2024年(令和6年)に国宝指定を受けた。
そのほか宝塚1号墳からは、円筒埴輪をはじめ、壷形埴輪、蓋埴輪、盾形埴輪、囲形埴輪、柵形埴輪、短甲形埴輪、家形埴輪など、多様な種類の埴輪が確認されており、当時の首長墓に付随する儀礼空間の構成を立体的に復元する手がかりを提供している。
規模(1号墳)
- 形状 前方後円墳
- 築成 後円部:3段
- 墳長 111m
- 後円部径 径75m 高11m
- 前方部 幅66m 長46m 高6.4m
- 外表施設 円筒埴輪 円筒・朝顔形
- 葺石 あり
遺構
遺物
- 底部穿孔二重口縁壺
- 埴輪棺
- 船形埴輪
- 囲形埴輪
- 家形埴輪
- 埴輪(円筒 楕円筒
- 壺形埴輪
- 蓋形埴輪
- 盾形埴輪
- 靱形埴輪
- 甲冑形埴輪
- 冠形埴輪
- 高杯形埴輪
- 家形埴輪
- 囲形埴輪
- 柱状
- 土製品(鳥笊高杯)
指定
- 2024年(令和6年)8月27日 三重県宝塚一号墳出土埴輪(278点)
- 1932年(昭和7)年 - 国史跡史跡
被葬者
築造時期
- 5世紀初頭
展示
- 松阪市文化財センター
アクセス等
- 名称:宝塚1号墳
- 所在地:三重県松阪市小黒田町ごけ山120-1
- 交通: 松阪駅 鈴の音バス 左回りバス 39分
参考文献
- 松阪市教育委員会(2000)『宝塚古墳発掘調査概要』。
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